サントリーミュージアム

 

シアターもあるので巨大な建物。ちなみに後ろには海遊館がある。

公式HP

美術館規模 小

専用駐車場 有(有料)

アクセス方法

 地下鉄中央線「大阪港駅」から徒歩5分

お勧めアクセス法

 やはり電車で行くのが安いが、駐車場代を厭わないというのなら車も可。

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展覧会レポート

 

「光の魔術師 インゴ・マウラー展」 2006.10/7〜11/5

 会場を訪れて第一印象は「ナショナルのショールームか?」というもの。あちこちに照明が展示されていることから受ける感覚である。しかしよく見ると、個別の作品に実用性がほとんどないことから、単なるショールームではないことが判明する次第。

 インゴ・マウラーは照明デザイナーであるが、ポップアートの影響を受けて独自の照明デザインを展開した人物である。志向がアート寄りになっているため、単なる工業デザインとは異なり、かなり突飛な作品が多い。もっともその分、電気器具としての実用性は皆無となってしまうのだが・・・。

 会場が光のパビリオンといった趣であり、面白くはある。しかし所詮はそこまで。最初のインパクト以上の奥行きがないというのは、いわゆるポップアート系に共通する性質でもある。

 

「愛の旅人 シャガール展」 2006.4/29〜6/25

 19世紀末にロシアで生まれたユダヤ人のシャガールは、20世紀初頭にパリで才能を認められたものの、第一次大戦、ロシア革命、そしてナチスによるユダヤ人迫害に振り回されて、転々とする生涯を送った画家である。しかしその数奇な運命にかかわらず、彼の作品には一貫して愛が溢れており、それが今日でも人の心をつかんで離さない。

 本展では高知県立美術館が所蔵する大量のシャガールの版画作品を中心に、各地の美術館が所蔵する油彩作品を併せて一堂に展示している。一応、これらの作品は5つのテーマに分類して整理されているのであるが、全体を強烈すぎるシャガールカラーが貫いているので、テーマ分けにどの程度意味があるかは疑問なところもないではない。

 シャガールと言えばグロテスクになりかねない寸前まで対象を歪めて描いているにも関わらず、なぜか不思議なほどに嫌みは感じられないという珍しい画家である。そして私も、なぜかこの画家の作品には好印象を抱かされるのである。高知県立美術館のコレクションもさることながら、日本全国からこれだけシャガールの作品が集まるのもそうそうないだろうから、出かけてみるだけの価値はあるだろう。少なくとも私は楽しめた。

 なお本展で、三重県立美術館の2枚看板の1つである「枝」に再会することとなった。なんとも奇妙な縁というものである。

 

「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」 2006.3/11〜4/16

 アンリ・カルティエ=ブレッソンは、愛用の小型カメラ・ライカで世界各地の風俗を撮り続けてきた写真家である。本展では生前に彼が厳選したという作品411点を展示している。

 ライカなどの小型カメラを愛用する写真家の目的は、大抵は被写体となる人物に「写真を撮られている」というプレッシャーを与えないことである。彼の作品についても、被写体の表情や存在感などが実に自然に描かれており、奇妙なほどにそこにカメラの存在を感じさせないものがある。

 その一方で、作品自体は非常に構成などがしっかりしており、一体どの程度の計算を行って写真を撮っているのだろうかと感心させられることが多々である。私のようなヘボカメラマンだと、たとえ何枚撮っても偶然ではこれだけの写真は撮れないだろうとは感じずにいられない。実際に、キュビズム絵画などを意識していると言われている写真などもあり、それらは明らかに意図的な構成を用いて撮影されているようである。

 作品全体に、作為と自然さが渾然一体となっているのには感心させられた次第。これは特に写真好きという者でなくてもなかなか楽しめる。

 

「ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展」 2005.11/19〜1/29

 私はこの展覧会には、GW明けの東方遠征の際に名古屋で行っているので、実は2回目になる。

 先の名古屋の時と内容は全く同じなので詳細は割愛するが、本展はミュシャの最初期の作品から、アール・ヌーヴォーの時代のポスター、そして晩年の油絵に至るまでのミュシャの生涯の作品を追える実に大規模なものである。ミュシャ好きの者なら行かなければ嘘だし、ミュシャをよく知らない者も是非一度出かけてみて欲しいと思う。

 なお今回私は「ミュシャマジック」を体感してしまった。美術館出口には定番の物販コーナーがあるが、常に図録以外は完全にスルーする私が、今回は見事にはまってしまい、ポスターやストラップ、しおりなどの類に散財する羽目になってしまった。恐るべし、ミュシャ。

 

「アール・デコ展」 2005.9/15〜11/6

 19世紀末、フランスではアール・ヌーヴォーの流行により、装飾芸術が脚光を浴びるようになるが、1920年代ぐらいにはその流れはより工業生産を重視したアール・デコへとつながっていく。本展はそのアール・デコ様式を代表する絵画や装飾品、家具類などを始めとして、このアール・デコがエジプトやアフリカなどの文化の影響を示していることを示す展示、さらにはアール・デコが中国や日本に影響を与えていったことを示す展示など、多面的な展示によってアール・デコの精神を伝えようとしている。

 内容は多彩だが、カルティエの宝石装飾などは女性ならよだれが出そうになるところだろう。個人的にはラリックによる香水瓶をそのまま大きくしただけにしか見えないランプカバーが爆笑を誘った。興味深いのはエジプト文化などの影響で、国際交流が盛んになりつつあった時代が、新たなる装飾形式を生み出したということがよく理解できる。また生物的な曲線を主体にしたアール・ヌーヴォーに対して、工業生産を意識した直線中心のシンプルな構成のアール・デコという対比も非常に分かりやすかった。

 難しいことを考えなくても、ぶらっと一回りしただけで、古き良き時代のレトロな雰囲気を堪能できるのが本展のメリットでもある。休日の気分転換に出かけてみても損はないと考える。

 

「GUNDAM 来るべき未来のために」 2005.7/15〜8/31

 ガンダムとは言うまでもなく社会現象さえ巻き起こしたアニメ「機動戦士ガンダム」のことである。本展はそのガンダム世代に当たる若手の気鋭のクリエイター達に、ガンダムから触発されたアート作品を制作依頼し、彼らの作品を展示したという一風変わった展覧会である。

 ただその割には、ガンダムとは直接的関係性の極めて薄いごくありふれた現代アート作品ばかりが並んでいたように思われるのが本展の最大の難点。しかも各作品自体はかなり平凡なものが多く、新進気鋭のアーティスト達と銘打っている割にはさして驚かさせる感性が存在しないのは、この国のアートの今後を考えるとやや暗い気持ちにさせられる。来館していたガンダム世代と思われる観客の大半には退屈げな表情や失笑などが浮かんでいたのが、本展の内容をもっとも雄弁に物語っていた。せめて作者達のガンダムに対する思い入れのようなものだけでも伝わってくれば良かったのだが、それもなかったようだ。

 なおアニメ作品の商業主義との強力な癒着は、ヤマトに始まりガンダムで完成したと言われている。その意味では、作品は大したことないのにやけに物販コーナーだけ充実していた本展は、ガンダム=商業主義の権化のまさに象徴のような印象も受け、展覧会自体がもっとも強烈にガンダムのパロディになっていたようにも感じられたのはなんと言うべきか。

 

「レイモン・サヴィニャック展」 2005.4/29〜7/3

 サヴィニャックとは1907年生まれのフランスのポスター作家である。長らく鳴かず飛ばずの状態が続いたが、41歳の時にモンサヴォン石鹸のポスターで一躍脚光を浴び、その独特のユーモアに富む画風によって一世を風靡する。

 フランスではロートレックやミュシャなどポスター芸術がきっかけで世に出た芸術家が多いが、この国のポスターは芸術性に富むものが多いのが特徴である。サヴィニャックの画風は、シンプルな線で対象をユーモラスに表現しているのが個性であるが、ポスターの構成として必ず何らかの驚かす仕掛けを用意してある。例えば頭痛薬のポスターでは、頭の中をトンネルになっていて、そこを渋滞した車が駆け抜けていく絵になっていたり、冷蔵庫のポスターでは身体半分が凍った少年が登場したりといった具合で、常に思わずにやりとさせるような趣向を凝らしてある。一時は広告会社の浸透で苦境に陥ったとのことだが、それまで扱わなかった社会的テーマのポスターを出かけたりして、復活したという。地球を大事に式のメッセージが彼のユーモラスなデザインにかかると、嫌みったらしくはならないというメリットがある。

 なかなか気軽に楽しめる展覧会。気分転換にはたまにはこういうのもあり。

 

「ヴィクトル・ユゴーとロマン派展」 2005.3/5〜で4/17

 19世紀フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーはナポレオン3世による独裁に対して民衆側に立って敢然と戦い続けた人物である。その彼の直筆のメモが残る著作などのフランス国宝を中心とした展示が行われているのが、本展である。構成は大きく二部構成となっており、第一部はユゴーの著作などの書物やそれを飾った挿絵など、ユゴーの世界に直接関わるものが中心である。第二部はユゴーが生きた19世紀フランスを語る芸術作品、ドラクロワなどの絵画や当時のファッションなどが展示されている。

 テーマとして仕方ないのであるが、書物の展示が中心となる第一部はあまりにマニアックで地味。正直なところ、私のような一般人にはなかなか興味の持ちにくいところである。文学者をテーマにした展覧会の難しさが感じられる。第二部の方はより一般的なのであるが、絵画には今一つ目玉がなく、ここでも展示が苦しんでいるのがうかがえた。しかもまだ絵画は展示のしようがあるのだが、当時を物語る音楽というのはさらに苦しかった。いくら作曲家の肖像やショパンが愛用したピアノを展示しても、これもマニアックにすぎるというもの。内容をもう少し検討する必要があったのでは。

 なお不思議だったのは、やけに会場に子どもの姿が多かったこと。しかしこの展覧会、子どもにはしんどすぎるのではないか。

 

「ロートレック賛歌」 2004.11/20〜2/13

 アール・ヌーヴォーの時代の作品が中心であるこの美術館だが、今回はロートレックのポスターを展示している。ロートレックは30点ほどの商用ポスターを残しているとのことであるが、これらも彼の独自の感性を示すものであり、今日のポスターなどに対しても大きな影響を残しているという。

 本展ではそのロートレックの商用ポスターのほとんどと、同時代の作家のポスターが見られる。商用ポスターである以上、商品の宣伝が目的であるわけだが、いかにしてそれを印象づけるかというところに、各作家の個性が出ていて面白い。またロートレックの実に伸びやかな腺と大胆な構図は単なる商用ポスターとするにはあまりに芸術的という感じは受ける。

 例によって気軽に暇つぶしに出かけるには最適の展覧会である。ちなみにこの美術館、会場係の女性の美しさも関西の美術館ではピカイチであるので、そちらの方の興味のある向きも中にはいられるかも・・(笑)。

 

「エミール・ガレ展」 2004.9/11〜11/7

 アール・ヌーヴォーの旗手としてガラス工芸などの分野で名を残したガレであるが、本展ではそのガレによるガラス工芸・家具などを中心に、ミュシャのポスターやガレの同時代作家によるガラス工芸品を展示している。

 会場中アール・ヌーヴォーの時代ものが展示されているので、これらが好きな人にはたまらない展覧会であろう。また当時のガラス加工技術の技法についての説明も会場にあるので、私のようにガラス工芸について全く無知である人間にとってはよい勉強になる。

 アール・ヌーヴォーがいわゆるジャポネズムの影響を受けているのは有名であるが、ガレのガラス工芸品のいくつかからもそのことが明確にうかがえる。その辺りの日本との関わりや、晩年に向かうにつれてより芸術性を帯びてくるガレの作品の変遷などに注目するとかなり面白い。

 とにかく美しい作品が多いので、難しいことをとやかく言わずにただ眺めているだけでも楽しめるのが本展の最大のメリットか。もっともデートコースに最適のせいか、やたらにカップル率が高かったのが、私のような独身男には一番の難であったと付け加えておく。

 

「パリ1900年 ベル・エポックの輝き」 2004.7/3〜8/31

 パリがもっとも輝いた時代と言われる1900年前後、ベル・エポック(美しき時代)と呼ばれた時代の絵画・彫刻・工芸品などを集めた展覧会である。

 時代的にはこの頃はアール・ヌーヴォ全盛であり、それについてはガレやラリックの工芸品の独特の曲線から感じ取ることが出来る。絵画については、フランスのこの時代の絵画と言えば印象派を連想するが、そのような「前衛的」なものではなく、もっと普通の古典的肖像画が大半であり、「美術を語る」というよりはこの時代のパリの風物を知るための資料と言った趣の方が強かったように思われる。

 入り口を入るや否やパリ万博に関する資料がメインになっていたことなどから感じられるように、どちらかと言えばあまり肩肘張らず、気軽な気持で当時のパリの風物を楽しもうといった主旨の展覧会のようである。

 展示品全体から漂ってくるのは、まさに「古き良き時代」といった文化爛熟期のパリの空気である。魅力的ではあるが、その裏腹の危うさのようなものも感じられる。やがて時代はヨーロッパに未曾有の惨事となる第一次大戦へとつながっていくのだが、その直前の退廃的ムードは危険であるが美しいものであったのかもしれない。

 

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