神戸市立博物館
美術館規模 中
専用駐車場 無(付近に有料駐車場有)
アクセス方法
JR三ノ宮駅(阪神三宮・阪急三宮)から徒歩10分
お勧めアクセス法
三宮周辺は車で動きにくいので、電車がお勧め。三宮の街中をブラブラ歩いているとすぐに到着できる。
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展覧会レポート
「19世紀芸術家たちの楽園 オルセー美術館展」 2006.9/29〜1/8
パリのオルセー美術館は印象派を中心とする19世紀後半の美術品を収蔵した美術館である。収蔵品については絵画を始め、彫刻、工芸品、写真など多様なジャンルに渡っている。本展ではそのオルセーのコレクションの一部を展示したものである。
展示される絵画は、マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャンなど有名どころがズラリと並ぶ、またテーマにあわせて、画家たちが互いの肖像画などを描きあった作品が展示されているのが興味深かった。なお広いジャンルに渡るオルセーのコレクションを反映して、本展では絵画以外にも彫刻に写真、陶器などの工芸品なども展示されている。
どうしても絵画に一番の興味がある私としては、全体的に絵画の比率が少な目に思えたのがやや不満。個人的には写真作品の展示が多すぎたように感じずにはいられない。また有名どころの作品は一渡りは揃っているものの、展示数は決して多いとは言えず(一人一作品程度)、また目玉と言えるほどの印象の強い作品はなかったように感じられた。あえて最も印象に残ったと言える作品をあげるなら、ルノワールがベルト・モリゾの娘のジュリーを描いた作品だろうか。少女の表情の固さが逆に自然に見える逸品である。
「ボストン美術館所蔵肉筆浮世絵展 江戸の誘惑」 2006.4/15〜5/28
浮世絵と言えば一般的には浮世絵版画を連想すると思うが、当然のことではあるが浮世絵氏達による直筆画も存在している。しかし実際は売れっ子の浮世絵師の直筆画を手に出来るのはかなり限られた人物になるので、それらは非常に貴重なものである。本展はボストン美術館が所蔵する貴重な直筆浮世絵を展示した展覧会である。
出展作は菱川師宣、鈴木春信、歌川豊春などそうそうたる画家達の直筆画である。版画と違い、線のタッチなどが分かる肉筆画は、より精密に画家達の画風が分かるので興味深い。しかしやはり圧倒的だったのは葛飾北斎である。いきなり真っ赤で描かれた鍾馗図には度肝を抜かれたが、圧巻は晩年の彼の手になる獅子の図。凄みや迫力がけた違いであり、とんでもない描写力を感じさせられる。これだけでも一見の価値があると言わずにはいられない。
「ナポレオンとヴェルサイユ展」 2005.12/3〜3/19
ナポレオンの皇帝戴冠200年を記念して、ヴェルサイユ宮殿美術館に収蔵されているナポレオンゆかりの絵画、調度品、工芸品などを集めて展示しているのが本展である。絵画においてはダヴィッドによる有名なナポレオンの山越えの絵画(明らかに宣伝目的で描かれており、数バージョンの複製品があるという)や、ナポレオンゆかりの人々の肖像画などが展示されており、調度品についてはナポレオンや彼の后が愛用した家具類など、工芸品としては当時の宝飾品などが展示されている。
絵画については記録的価値以上には特別に見るべきものがない。興味深いのは調度品や工芸品の方である。調度品については軍人上がりであるナポレオンらしく、華美な装飾よりも機能的でシンプルな家具を好んだのがうかがえて面白い。また大陸封鎖令によってイギリス産のマホガニーを入手できなかったことから、国産の材を用いてより明るくて軽妙な家具などを作っていたのが興味深い。宝飾品についてはいかにも権力者らしく絢爛豪華でギラギラしたところがある。同様のいかにも豪華な宝飾品はエルミタージュ展などでも見られたが、辺境国であるロシアとの違いは、華美で豪華に走ってもそれでもどこか上品なところが残るというところであろうか。ロシアの宝飾品が豪華ではあってもどこか野暮ったさも感じたのとは対照的である。
なお当時の肖像絵画などからうかがえる特徴として、女性の服装の変化が見られる。当時はナポレオンの后であったジョゼフィーヌの服装などから新モードが作られたというが、それまでのコルセットに縛られた窮屈な服装から、ハイウェストにしてゆったりとしたシュミーズへと一変している。このあたりは社会情勢の変化とも相まっているようである。当時の社会の激動ぶりを反映しているようで面白い。本展はこのような歴史的背景も考え併せることによって、初めていろいろと面白味が出てくる部分があるので、どちらかといえば西洋史に興味のある者向きか。
「世界遺産・博物館島 ベルリンの至宝展」 2005.7/9〜10/10
ベルリンの博物館島とはプロイセン王室のコレクションを公開した旧博物館を初めとする5つの博物館群が存在するシュプレー川中州のことである。ドイツ帝国の威信をかけて多くの貴重な美術品が収蔵されたこれらの博物館も、第二次世界大戦やその後のドイツの東西分断により、多くの被害を受けて苦難の歴史を歩んできた。しかしドイツ統一後急速に整備が進み、1999年には世界遺産にも登録された。本展はドイツ年を記念して、この博物館島の収蔵品の中から数点を日本で公開した展覧会である。
博物館島の収蔵品が実に多彩であることを反映して、本展の展示物は古代エジプト美術から始まり、オリエント文明の遺物、さらにはヨーロッパ近代美術に至るまで実に幅広く、また彫刻あり、絵画あり、果てはコインまでと実に多彩な内容である。イメージとしては博物館島のカタログといった趣で、博物館島の各博物館はどのような収蔵品を収めているのかを紹介するには最適の内容であろう。一回りするだけで、世界のあらゆる地域のあらゆる時代の美術品を一覧できるという楽しさはある。
ただ内容が多彩すぎるだけに、全体としての印象はどうしても散漫であり、さらに個々のテーマについては、突っ込みが不十分で未消化といった印象が残る。エジプト文明の展示についてはエジプト展には劣るし、ヨーロッパ近代絵画については、やはりそれをメインにした展覧会よりは見劣りするといったことになりがちなのである。つまりはカタログと専門書の違いというようなものであり、そこをどう考えるかが難しいところである。なお個人的には、エジプト文明関係の展示はこれでも十分であるが、やはり絵画についてはかなり食い足りないと感じさせられた。これは私がやはり絵画を最も好むということが理由であるのは間違いないが。
「栄光のオランダ・フランドル絵画展」 2004.7/17〜10/11
本展はウィーン美術史美術館の収蔵作品の中から、16〜17世紀のオランダ・フランドルの絵画を集めた展覧会である。古典的な宗教的絵画から、精密絵画へといったオランダ絵画の流れが一望できる構成になっており、中心となるのはルーベンス、レンブラント、ファン・ダイクなどである。
中世オランダ絵画といえば、その特徴はやけに寓意を含んだ絵画が多いことである。この展覧会でも第1部に当たる16世紀の絵画の部分には、やたらに宗教的・道徳的寓意を含んだ絵画が含まれる。それが時代の流れと共にもっと人間的な肖像画や風景画へと流れていき、この頃から遠近法などの技法も取り入れられていく。そのような神から人へといったような歴史の流れが絵画の上からも感じられている。本展は展示数としては決して多いとは思わないが、時代の代表的な絵画が選ばれているので、各時代の特徴がつかみやすく、初心者にも分かりやすい親切な構成と言えるだろう。
なお本展の最大の目玉と言って良いのはフェルメールの「画家のアトリエ」だろう。この作品だけは別格扱いで別室に飾られていたのだが、確かに思わず息をのんでしまうような美しさと迫力がある。描かれている人物に信じがたいほどの生々しさがあり、今にも動き出すのではないかとの錯覚に思わずとらわれてしまった。光の表現といい、奥行きの表現といい、技術的に絶妙であることは間違いないが、何かそれを越えたさらなる深みのようなものを感じる。奇跡という言葉を使うなら、それはこの絵画に対してではないのか。この絵画を見るためだけでも入場料を払うだけの価値はある。
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