展覧会遠征 大阪編22

 

 この週末は大阪のコンサートに繰り出した。まずは金曜日の大阪での仕事を終えてザ・シンフォニーホールへ駆けつける。先にホテルに立ち寄って荷物を置いていたせいで、福島駅に到着した頃には時間ギリギリ。夕食を摂っている暇がないのでローソンで買い込んだおにぎりを歩きがてら腹に入れるという状況。

 

 今回の公演はザ・シンフォニーホールの企画のようだ。大植英次と大フィルの組み合わせを聴くのはかなり久しぶりのような気がする。ホールは8割方は入っており、そこそこの入りである。


大植英次指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団「シェエラザード」×「春の祭典」

 

[指揮]大植英次

[管弦楽]大阪フィルハーモニー交響楽団

 

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 op.35

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

 

 大植英次の指揮は動作の大きいかなりクセのあるもの。ハッキリ言ってオーバーで大時代的である。表現の方もその指揮の通り、テンポの変化の激しいメリハリのかなり強いもの。かなり煽る指揮であるので、シェエラザードについては大フィルが完全にはついて行けていない場面もいくつかあった。またかなりテンポを落としての演奏については、いささか流れが悪いように感じた場面もいくらか。

 後半の春の祭典については、曲自体がかなりはっちゃけた曲だけに、大植の過剰気味の表現が意外にピッタリとはまっていた。また大フィルのやや雑な金管も、この曲の咆哮にはあっており、なかなかに冴えのある演奏となっていた。


 知らない間にほとんどが女性になってしまった大フィルの弦楽陣に少々の線の細さを感じないわけでもなかったが、それでもそれなりにまとまった演奏にはなっていたような印象を受けた。場内も盛り上がっていたし、面白いコンサートではあった。

 

 コンサートを終えると新今宮へ。ホテルに戻る前に夕食を摂っておきたい。今回は串カツ「だるま」の新世界店に閉店直前に飛び込む。とりあえず串カツを十数本注文。これが今日の夕食。

   

 夕食を終えるとホテルに入る。今回の宿泊ホテルはサンプラザ2ANNEX。本当は入浴したいところだが、残念ながらもう風呂は終わっているので部屋に入るとそのまま寝てしまう。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は目が覚めると8時過ぎだった。ホテルの周りは結構うるさかったのだが(夜中にパトカーが走り回ったり、今時時代遅れの珍走団らしき音が聞こえたりなど賑やかな地域である)、それにも関わらず結構爆睡していたようである。半分寝ぼけたまま昨日買ったサンドイッチを朝食に摂る。

 

 今日の予定だが、14時からザ・シンフォニーホールで開催されるブルノフィルのコンサートがメイン。後はその時の状況と体調次第である。ただ14時までホテルでボンヤリしているのも性に合わないので、その前に出かけるとする。

 

 向かったのは六甲アイランド。ここのファッション美術館で開催中の「切り絵アート展」を見学しようという考え。六甲アイランドは久しぶりだが、寂れっぷりはポートアイランドよりはまだマシというところか。しかしそれでも活気があるとは言い難い。


「息を呑む繊細美 切り絵アート展」神戸ファッション美術館で3/24まで

  

 切り絵は絵画と違って、立体的な表現を用いたりできるし、また色のコントラストを明快に出したり出来るなどの特徴がある。そのような切り絵の特性を活かして十数人の作家が競演である。驚くほどの超精細な作品もあれば、木版画風味のザックリと長閑な作品もあったりなど、作家ごとの個性が光っている。

 しかしやはり目を惹かれるのは超絶技巧系の作品。異常に細かい細工には思わず絶句。ここまでやると確かに芸術としての一ジャンルではある。

   


 昼食をこの辺りで摂っていこうかと考えていたが、飲食店は日曜が休みのところや既にご臨終してしまっているところが多く、結局は適当な店を見つけることが出来なかったので大阪に移動してしまうことにする。

 

 大阪に戻るとMETのムビチケを買うためにステーションシティシネマに立ち寄る。ついでに駅ビルをウロウロして飲食店を物色するが、こちらは六甲アイランドと対照的にどこもここも大行列で入店意欲を削がれる。それにどこもここも軒並みCPの悪そうな店ばかり。結局は大阪駅は諦めてザ・シンフォニーホール近くのそば屋「やまがそば」「そば定食」を頂くことに。結局は普段使いするならこういうタイプの店が一番手堅いということである。

   


チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団

 

[指揮]レオシュ・スワロフスキー

[ピアノ]アリョーシャ・ユリニッチ

[管弦楽]チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団

 

【オール・チャイコフスキー・プログラム】

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ”

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番

チャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」

 

 先週に東京で聴いたのはご当地もののドボルザークプログラムだったが、今回はご当地でないチャイコフスキープログラム。こうなるとご当地補正がない分、ブルノフィルのやや雑さのようなものがどうしても出てくる。ただそれでもこのオケ特有の元気の良さのようなものは魅力ではある。一曲目のエフゲニー・オネーギンはその元気の良さで押し切った感じ。

 ピアノ協奏曲については、ソリストと指揮者が必ずしもしっくりといっていない感もあったが(スワロフスキーがややマイペースである)、それでも全体としてはノリの良いまずまずの演奏であった。なおユリニッチについてはアンコールのドビュッシーの演奏がなかなかに魅力的。どちらかと言えばガツンガツンと鳴らすよりもこういう演奏の方がむくようである。

 「悲愴」については、このオケの弱点である弦の弱さ(下手というのではなく人数の少なさから物理的に音圧が弱い)が出てしまって、一楽章などは今ひとつ切実な緊迫感が盛り上がらない。ただ演奏自体は曲が進むにつれて良くなってきて、三楽章なんかはノリの良さもあってなかなかの演奏、最終楽章も弱点はあるもののそれでも感情のこもったまずまずの演奏であった。


 相変わらずスワロフスキーは爆演型でガンガンと突っ走るという印象。ブルノフィルのカラーとも相まって元気に満ちた演奏である。このカラーを考えると、悲愴よりは5番の方が良かったのではという気もする。

 

 大阪でのコンサートを終えると、ホテルに戻る前になんばに立ち寄ることにする。目指すは大阪高島屋。ここのグランドホールで開催されている浮世絵展に立ち寄るのが目的。ちなみに私は高島屋のカードを持っているので入場料が半額である(実はこのために以前に高島屋のカードを作った)。


「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝〜江戸の名品勢ぞろい〜」大坂高島屋で3/11まで

   

 アメリカのサンタフェのリー・ダークス氏の個人的な浮世絵版画コレクションらしい。彼はアメリカ空軍服務後に新聞記者を経て、そこから経営に携わったとのことで、空軍士官として日本に駐留した時に日本美術に関心を持ち、本格的に蒐集を開始したのは2000年ぐらいからとのこと。それでよくもこれだけのコレクションを蒐集したものだと、その熱意と財力に感心する次第。

 コレクションはいわゆる欧米の浮世絵オタクのコレクションの例に漏れず、非常にコンディションの良好なものが多い。その内容は浮世絵初期の作品から末期まで幅広く、本展では北斎、広重などは特別コーナーを設けてまとめて展示してある。

 必ずしも有名どころの作品ばかりでなく、一般的には無名な絵師による作品も多いが、ズラリと並べると浮世絵版画が時代と共に進化を遂げてきた歴史が分かるという秀逸な構成となっている。北斎の「神奈川沖浪裏」などという定番中のド定番から、私も全く名前を聞いたことのない絵師の良品までバリエーションが広いので、ザッと見ていくだけでもなかなかに楽しめる


 それにしても日本国内では使い捨て感覚で消費されていた浮世絵版画が、海外のオタクによって大事に保存されて高く評価されることになったというのは、何とも皮肉な話である。そもそもこの国は文化というものに対する感覚が非常に鈍く、それは今でも続いている。やはりこの辺りはまだまだ貧しい国なのだと思う。

 

 高島屋にはもう用がないので(私は残念ながら高島屋でショッピングを楽しめるような富裕層ではない)、南海で新今宮に戻るとそのまま夕食のために新世界に繰り出す。腹も減っているし、気分としては洋食。と言うわけで久しぶりに「グリル梵」を訪問。例によって「ビフカツ」を注文する。ミディアムのビフカツが最高。やはりこれこそが正しい関西のビフカツ。

 夕食を堪能するとホテルに戻ってきて入浴。昨日は風呂には入れなかったのでようやくサッパリしたという感覚である。後は部屋でBDでガッテンなどを見ながらマッタリと過ごす。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半まで爆睡、起床後は買い込んでいたおにぎりを朝食に摂ってから、しばしベッドの上でグッタリ。年のせいかどうしても朝からスッキリとエンジン全開とはいかない。それに昨晩からかなり目がかゆい。それに何とはなく顔がかゆい。どうやら花粉症が出ているようだ。今は鼻の方は薬で止めているのだが、どうしても目の方には症状が出る。もしかしたらこの異常な体のしんどさは、花粉症の全身症状かもしれない。

 

 さて今日の予定だが、今日は大阪ステーションシティシネマにMETライブビューイングを見に行く予定。その後は長駆して奈良に飛ぼうと思っている。

 

 9時過ぎぐらいにホテルを出ると大阪駅に向かう。それにしてもここの劇場は駅近のくせにアクセスが悪い。とにかくエレベーターが混雑しすぎる。3階にエレベーターが到着した時には既に満員で見送りになるということが数回。ルクアの飲食店がまだ開いていない時間なのにこのざまである。最初からかなり時間に余裕を持って劇場に向かっていないと大変なことになる。

 

 劇場内は1〜2割の入りというところか。前回の「椿姫」などに比べるとガラガラと言って良い状態。やはりマイナー作品ということだろう。


METライブビューイング チレア「アドリアーナ・ルクヴルール」

 

 18世紀のパリで実在した女優を主人公にした作品。彼女は恋敵であるブイヨン公妃に毒殺されることになるのだが、このヒロインを演じるのがアンナ・ネトレプコで、公妃はアニータ・ラチヴェリシュヴィリ。この二人の実力者が女の感情剥き出しで火花を散らすシーンはまさに迫力そのもの。

 この女性二人を翻弄することになる色男・マウリツィオのピョートル・ベチャワは、いかにもモテ男という風情の綺麗なテノールを聞かせ、ヒロインを近くでずっと見守ってきたミショネのアンブロージョ・マエストリは落ち着いたバリトンでストーリーを締めている。ストーリー自体はかなり単純なものなのだが、中心人物がすべて実力者揃いなので見応えのあるドラマとなった。


 ガラガラのマイナー作であるが内容は非常に面白かった。ストーリーや音楽面にはあまり特筆すべきものはないが、やはりネトレプコとラチヴェリシュヴィリの壮絶な女の対決が非常に魅せた。この作品は主役級が実力不足だとどうにもならない作品だろう。

 

 劇場を後にするとJRで奈良に直行することにする。大阪で昼食を摂ってからと思ったのだが、ルクアの飲食店街はどこの店も大行列で馬鹿らしくなるし、大丸レストラン街にはこれといって思いつく店もないし、エキマルシェに行くという気にもならなかったしで、もう直接奈良に移動してしまうことにした。

 

 で、結局この日の昼食は奈良駅の「天極堂」JR奈良店で「椿の膳(2052円)」を頂くことに。葛うどんや葛掛けご飯などにデザートのくず餅まで付く葛フルコースである。ボリュームはそれほどでもないが、今の私にはちょうどぐらいか。

   

 昼食を終えるとバスで県庁前まで。わざわざ奈良まで出張ってきたのはここの美術館のため。チケットを買おうかと思うと、今日は天皇陛下在位30年記念とかで無料。これはついている。


「姿の美、衣装の美… 肉筆浮世絵」奈良県立美術館で3/17まで

    

 浮世絵版画ではなく、肉筆浮世絵の美人画を集めた展覧会。作品自体は無款のものや知名度の低い絵師のものも多いが、絵画を通してその時代の風俗や流行のようなものを知ることが出来る趣向になっている。

 ザクッと見ていると、時代ごとに浮世絵表現の流行の変遷のようなものが見えると共に、そこに描かれている着物の流行や髪型の流行のようなものも垣間見えてくるのが面白いところ。一概に江戸時代と言ってもやはりその中では流行は徐々に変化しているようである。着物などは徐々に色彩や柄などが派手になっていった印象。


 展覧会を一回りすると、もうこれ以外に奈良での予定はないので近鉄奈良までプラリと歩いて移動すると、さっさと新今宮に戻ってしまう。やはり夕食は新今宮で摂ろうという考え。どうも最近は私の金銭感覚が新世界基準になってしまっているので、他の地域の飲食店を見るとCPの悪さが際立ってしまって入店する気にならない場合が多くなっている。これはこれで困った状況。

 

 さて今日の夕食だが、昨日はビフカツで一昨日は串カツ。となったら今日思いつくのは寿司ぐらい。と言うわけで「大興寿司」に直行する。幸いにもカウンターには空きがあり。飲み物にコーラを頂きながら適当に注文。「カンパチ」「シマアジ」「鯛」「鉄火」「トリガイ」「ハマチ」と頼んでから締めに「いくら」。以上で2300円。相変わらずCPが高い。難点は店が分煙になっていないこと。途中で隣の隣の席でたばこを吹かし始める輩がいて、最後のいくらがヤニ臭くなってしまった。いつも思うが、やっぱりたばこを吸う奴って、まともに味を感じてないだろう。味覚がとんでもなく鈍感になっているのは間違いない。何を食っても同じなんじゃないか? 

 夕食を終えるとホテルに戻り、入浴してからBDを見てマッタリというお約束のパターンになったのである。やはり昨日辺りからかなり疲れているので無理に出歩かない方が正解。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時過ぎまで爆睡した。体がグッタリと重いのは相変わらずだが、それを無理矢理鼓舞して仕事へと繰り出すのである。企業戦士の日常は厳しい・・・。

 

 

 

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