展覧会遠征 京阪編14
この週末は大阪方面コンサートのはしごである。金曜日の仕事を終えるとホールに移動だが、その前に重たいキャリーはホテルに預けておきたい。今日の宿泊は新今宮のホテル中央オアシス。この界隈では比較的高級ホテルである。
ホテルにチェックインして荷物を置くと直ちに外出。しかし寄り道していたせいで時間に余裕がない。ゆったりと夕食を摂っている時間はないので、フェスティバルゲート地下のうどん屋で軽くきつねうどんをかき込んでからホールに向かう。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第524回定期演奏会
指揮/尾高忠明
ヴァイオリン/神尾真由子
武満 徹:トゥイル・バイ・トワイライト
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
エルガー:交響曲 第1番 変イ長調 作品55
一曲目の武満は彼の作品にしては比較的聞きやすいもの。また大フィルの演奏にもなかなかに冴えがあった。
二曲目のブルッフは神尾のヴァイオリンはさすがに余裕の弾きっぷり。ただヴァイオリンの音色自体に今ひとつ艶が感じられないのが気になった。ヴァイオリンの技術的なことは素人の私にはよく分からないが、コンディションが良くないのかと感じてしまうような音色であった。演奏自体は過度の情緒には流れない淡々としたところのある演奏。そのためにやや盛り上がりには欠けた感も。
最後のエルガーはメリハリをつけた聴きやすい演奏である。尾高自身がこの曲をよく把握しているのだろうということが感じられた。ただそれでいても元々の曲調がやや冗長であるところがあるのというのは否定できず、私のように日頃からこの曲に親しんでいない者にはしんどい部分がいくつもあったというのが最大の難点。
コンサートを終えるとホテルに戻るが、その前に夕食を摂っておきたい。もうすぐ22時になるので、その前に急いで「だるま」に駆け込むと、串カツを10本ほど注文。
やっぱりここのカツは油が良いようだ。さっぱりと食べられるのが良い。これだけの串カツにコーラを付けて1555円。相変わらずCPも良い。
夕食を終えるとコンビニで明日の朝食を買い込んでからホテルに戻る。この日は部屋風呂で入浴すると、持参したBDプレイヤーを部屋のテレビにつないでサイエンスZEROを見て一服。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時に起床するが、とにかく体が重くてつらい。昨日の仕事からコンサートへの立て続けの移動等が地味に体に響いたか。私も体力がなくなったものだ。とりあえず朝食を摂ってから入浴するが、どうしても体がシャッキリせずにベッドの上でグッタリ。この日は午前中の予定は中止して、チェックアウト時刻の10時までベッドの上で半分ウトウト。
10時前にようやく起き上がると、慌てて荷物をまとめてホテルをチェックアウト。そのまま京都に直行する。京都に着くと今日の宿泊ホテルであるチェックイン四条烏丸に直接移動。もしチェックインできるならそのまま部屋でひっくり返るつもりだったが、残念ながらまだ部屋の準備が出来ていないそうなので昼食を摂るために「一風堂」へ。まだ開店から間がないためか今回は行列はなし。白玉チャーシューと餃子を注文。体調は良くないが食欲はあるようで、ラーメンがなかかなに美味い。
さてこれからどうするかだが、今日はびわ湖ホールで開催されるオペラ「森は生きている」を聴きに行く予定。開演が14時からなのでまだ時間がある。そこでとりあえず京都駅に戻って、まずは美術館に立ち寄る。
「京都市美術館所蔵品展 花鳥風月」「えき」KYOTOで1/20まで
京都市美術館所蔵の花鳥風月画を展示。竹内栖鳳などといった大物から,比較的最近の画家まで含めて展示。また一部は絵画だけでなく立体作品も含まれていた。
とは言うものの、竹内栖鳳の烏の絵などはなかなかに面白く感じたのであるが、それ以外についてはあまり印象に残るものがなかったのが本音。
ここでいくらか時間をつぶせるかと思ったのだが、結局は一回りしたらそれで終わりの内容だったので今ひとつ時間つぶしにならず。仕方ないのでこのビルにある「都路里」に立ち寄って「特製都路里パフェ」を頂くことに。ここもタイミングが悪ければ大行列のことが多いのだが、今日は全く行列がない。やっぱり寒さもピークになりつつあるこの時期はさすがに京都も若干は人出が減っているんだろうか。そう言えば今日は京都駅の中を普通に歩けたように思う(ひどい時は朝のラッシュの地下鉄並みになることがある)。
店構え 窓から見えるローソクタワー 特製都路里パフェ 抹茶のパフェが美味い。窓際の席で景色を眺めつつ抹茶パフェでマッタリとしばし時間をつぶすことにする。
しばしマッタリした後は、JRと京阪を乗り継いでびわ湖ホールへ。今日は中ホールでの公演だが、子供向けでもあるオペラなのでやはり子供連れが多い。もっともさすがにオペラ公演だけあって来ている子供もかなり躾けられているような子供ばかりで、走り回ってギャーギャーなどいうことはない。この辺りはやはり休日のスーパーとは違う。
林光「森は生きている」
びわ湖ホール声楽アンサンブル
有名なロシアの児童文学作品を林光がオペラ化したもの。
音楽的には合唱曲などに美しいものも多く、内容的には確かにオペラではあった。ただやはり子供向けであるのは間違いなく、どことなく子供の頃に見た児童劇のような空気も所々あり、年配のオッサンとしては背中がむずがゆくなるような部分もなきにしもあらず(さすがに舞台の上から客席に呼びかけるのは、「おかあさんといっしょ」みたいでいささかキツかった)。しかしそういう点を除くと、公演としてはなかなかに楽しいものであったと言える。
昨年度の「ヘンデルとグレーテル」に続いての児童向けオペラを童心に戻って楽しんだ後は、大津駅行きバスに乗り込んでJRで京都に戻る。夕食をどうするかだが、京都駅周辺には今ひとつ思いつく店がなかったので、とりあえずは四条に戻ることにする。しかし四条でもあてがあるわけでなく、結局は安直に「かつくら」に入店。「ヘレカツと牡蠣フライ膳」を注文する。
トンカツいう料理柄、特別に可もなく不可もなくである。ただ牡蠣フライについては大きめの滋味のあるカキを使用しておりこれはなかなか。また久しぶりに食べたかつくら漬けが意外に美味い。実はこの店、一番独自性もあって美味いのはこのかつくら漬けかも。トンカツなんてよほどでないと、どこでも大差ないから(だからこそチェーン店が多いのだが)。
夕食を終えてホテルにチェックインすると、大浴場で疲れを抜くことにする。今日は朝からへばり気味だったのでかなり疲労がある。今日の大浴場はやけに湯温が高めだったが、ジジイになった私にはちょうど良いぐらいか。元々は熱湯が苦手だった私だが、ジジイになって感覚が鈍ったきたのか昔に比べると入浴温度が高くなってきた。ジジイが熱湯が好きだというのは確かに本当のようだ。
風呂から上がると部屋のテレビにBDプレイヤーをつないで「ガッテン」でマッタリ。今日のキーワードは「えごま油」。なんか油の販促番組みたいになっていた。だんだんとこの番組も作りが昔の「あるある」にそっくりになってきているのが気になるところ。そのうちに何かしでかさなければ良いが・・・。
就寝前に明日の映画館の予約を忘れていたことを思い出して、ネットで急遽予約。やるべき作業を終えると就寝する。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時に起床するが、前日ほどではないにしてもやはりやや体には怠さがある。とりあえずレストランで朝食バイキングを頂いてから、シャワーで体を温める。今日は午後から京都市響の定期演奏会がメインのスケジュールだが、その前に10時からの映画(METライブビューイング)があるので、9時過ぎにはチェックアウトの必要がある。とりあえず何とかそれまでに体を目覚めさせる。
ホテルをチェックアウトすると、とりあえず重たいキャリーは四条駅のコインロッカーに放り込み、京都での上映館MOVIX京都に向かう。映画館は京都市役所南の繁華街の中にある。METライブビューイングの上映は地下の劇場だが、オタクな風貌の若者がゾロゾロと地下に向かっていると思ったら、隣の劇場で「ラブライブサンシャイン」を上映中とのこと。私はこの作品のことは全く知らないが、ポスターを見ただけでどういう類いの作品かは想像が付く、どうも私が最も苦手にするタイプの作品のようだ。実際のところ、昨今のアニメ界がこの手の作品ばかり量産するようになったのが私がこの世界から距離を置くようになった最大の理由。
METの方はこちらの作品の入場を締め切った後に入場が始まる。大分客層も違うが、客の人数の方もかなり違う。入場者は20人ちょっとと言ったところか。やはり新作オペラとなると従来のオペラファンにもやや敷居が高いか(私自身も昨年度「皆殺しの天使」だけは行ってないし)。やや寂しい感があるが、入場客にとっては他の客に煩わされない好条件ではある。
METライブビューイング ニコ・ミューリー「マーニー」
ヒッチコックの映画にもなった作品を、METの依頼でニコ・ミューリーがオペラ化した新作である。
作品の印象としてはやはりオペラと言うよりも映画。ニコ・ミューリーの舞台と一体となった音楽は、不協和音が多くてメロディラインのハッキリしないいかにも現代的な内容、さらには舞台のシーンを想定しての場面とのシンクロ性の高さ故に完全に劇伴になってしまっている。このことが余計に映画感を強くすることになる。しかしその一方で歌自身はかなり節回しの複雑なメロディが多いので、これは歌手には負担が大きい。
しかも映画的である故に通常のオペラと違う重要事項としては、ヒロインに歌唱力だけでなくビジュアル面も求められるということがある。本作のヒロインのイザベル・レナードが銀幕女優並みの美女であるから作品自体が絵になるが、これがいくら歌唱力があってもガタイのごついおばさんではどうしても絵にならないという問題がある。彼女は歌唱力面、ルックス面で本作には申し分なく、それだけで本作の成功要因になったとも言える。そういうかなり特殊な作品である。
心理劇の絡んだストーリーはかなり観客を引きつけるものがある。複雑なヒロインの内面心理をいかに描ききるかも主演に求められるところ。難しい歌唱に心理劇の演技力、さらには劇中で数十回に及ぶ衣装の早替えなどまで含めてとにかく主演に求められるものが非常に多いが、それを難なくこなしてしまったイザベル・レナードには驚かされた。
なかなかに面白かったが、ただ本作がオペラとして未来に残る作品かと言えば疑問はかなりある。そもそも彼女以外に本作を演じられる歌手がいるのか? ニコ・ミューリー自身が彼女が演じることを想定して作ったという主旨のことを語っていたが、確かにあまりにそこに特化しすぎていて汎用性がないことを感じる。私自身の感想もオペラを堪能したという感覚でなく、面白い映画を堪能したという感覚になっている。
上映終了は13時、この後の京都市響のコンサートは北山で14時半からだから時間はあまりない。とりあえず近くの大起水産で寿司を5皿ほどつまんでからホールへ移動する。
京都市交響楽団 第630回定期演奏会
[指揮]マルク・アンドレーエ
[Pf]ゲルハルト・オピッツ
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
ブラームスのピアノ協奏曲は、いかにもブラームスらしいスケールが大きくて落ち着いた演奏である。オピッツのピアノは流麗で変な誇張はないオーソドックスなものであるが、十分に情感のある巧みなもの。バックのアンドレーエも非常に手堅い伴奏をする。
展覧会の絵の方はそのアンドレーエの手堅さがかなり正面に出た印象である。変なハッタリや誇張などの下品さが全くない演奏なのであるが、この曲の場合はそれがいささか寂しさにもつながる。ラヴェルの派手派手なオーケストレーションを考えると、もう少し演奏に外連味があっても良いように考えるのだが、妙に生真面目な演奏に聞こえた。おかげで取り立てての難は全くないのだが、今ひとつ面白味も感じられなかったのが本音。
趣味が下品な私からすると、いささか上品に過ぎる演奏だったきらいはある。
さてこれでこの週末の予定は終了である。明日はまた大阪で仕事があるので、それに備えて今日は大阪で宿泊することにしている。ホテルはいつものように新今宮のサンプラザ2ANNEX。この界隈ではミドルクラスのホテル。
ホテルに移動してチェックインすると、すぐに夕食を摂りに新世界へ繰り出す。今日は串カツを食べるという気分でもないので、入店したのは「つけ鴨うどん 鴨錦」。つけ鴨うどんの二玉(750円)を購入。うどんは普通、細うどん、きしめんを選べる模様。また温冷があるようだ。私は普通のうどんの冷を注文。
冷うどんと言っても冷やしうどんとは違って、付け出汁は温かいものである。これに冷やして締めたうどんがついてくる。温うどんよりもこの方が麺がしっかりするので私向き。出汁は見た感じは何も入っていないように見えるが、実は底に鴨の薄切り肉が多く沈んでおり、これが見事な出汁を出している。出汁の味付けとしては一緒に入っているレモンが意外と効いていて、濃厚だがサッパリしたもの。うどんの麺自体は特筆すべきほどのものではないが、鴨の味の良く出たつけ汁が見事でこれがすべて。なかなかに美味い。やはり鴨は偉大だ。
夕食を終えるとホテルに戻り、この日も持参したBDでガッテンを見ながら暮れていくことに。
☆☆☆☆☆
翌朝は8時前にホテルをチェックアウトするとそのまま仕事先に向かう。さあこれから仕事モードである。
結局は仕事のスケジュールに絡ませて京阪地区でコンサートに明け暮れることとなった。京都市響と大フィルのハシゴにオペラを絡ませたのだが、いずれも強烈に印象に残ったと言うほどのものはなかったが、それなりに楽しめる内容であった。ただ情けないのは、特別にハードとも言えないこの程度の移動でも体には結構疲労が残ってしまったこと。老化の進行というか、とにかく体力が昔に比べて可なり落ちていることを痛感させられる。これはいささか寂しくはある。
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