展覧会遠征 西宮・広島編
2019年度初のコンサートは、西ノ宮へジャパン・ヴィルトーゾ・シンフォニー・オーケストラのコンサートを聴きに行くことにした。またさらに広島へと移動して、広響のニューイヤーコンサート及びひろしま美術館での展覧会を見に行く予定でプランニング。
4日の昼頃に家を出るが、頭にはまだ正月ぼけが残っている上に新年早々腰の具合が悪く、右足にしびれが出ている状態。杖をついての移動になってしまう。どうも前途多難である。ようやくたどり着いたホールは大入り。見渡す限り座席はほぼ埋まっている。
ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ 第7回兵庫公演
指揮:大友直人
ギター:村治佳織
何ともご大層な名前のオケだが、要は関東オケからコンマスや首席クラスの奏者をかき集めた選抜オケということのようだ。名簿を見るとN響、読響、都響、東フィル、東響、日フィル、新日フィル、神奈川フィルなどのメンバーが名を連ね、さらに群響、仙台響のコンマスなども加わっている。さすがに一定レベル以上の奏者を集めただけあり、各パート共に音色も音量もかなりのものがある。
その特性が遺憾なく発揮されたのが一曲目の軽騎兵と二曲目の運命の力。日本のオケとは思えないような華々しく力強い金管にしっとりと安定した弦でかなり華やかかつ豪快な演奏となった。
アランフェスは村治のギターにつきるだろう。なかなかに叙情あるロマンチックな演奏であり、オケもその演奏を支えた。
さてメインの幻想交響曲だが、元々かなり陽性であるこのオケの音色と結構あっさりした大友の指揮の相乗効果で、華々しくはあるがこの曲特有のドロドロした情念が欠けた演奏になってしまったきらいがある。うまさは感じるのだが今ひとつ感動にはつながらなかった印象。
むしろ良かったのは、アンコールで演奏されたファランドール。やはりこういう祝祭的な派手派手な曲の方がこのオケには合うようである。力強い金管を中心に安定した抜群のアンサンブルで曲を大いに盛り上げた。
コンサート終了後には新幹線で広島に移動。移動には交通費節約のため、おとなびWEB早得切符を使用することにしている。50歳以上限定のこの切符は交通費の節約には有効な手段だが、問題は事前に乗車列車を指定で購入して変更不可であること。そうなるとコンサートが何時に終わるかを読んで切符を購入する必要がある。
通常ならコンサートの時間には2時間を想定するのが普通。となれば終演は18時半で新神戸駅を19時台に出る便となるのだが、私は今回は新年コンサートという状況を考慮に入れて公演時間がやや長くなるのではないかと推測していた。実際のコンサート終了は19時頃で公演時間は2時間半。私の読みが当たったというところか。
新幹線は20時台のさくらを予約している。のぞみの狭いシートに乗るよりもさくらの広いシートで移動したいと思ってあえて選んだ次第。今からの移動で時間的には十分に間に合うが、かといって時間に余裕があると言うほどではない。またこの時期に恐れるのは、駅の券売機の前に大行列が出来ている可能性。チケット受け取りで何十分も待たされることになれば一大事である。そのようなあらゆるリスクを考慮した結果、新神戸駅に直行することにする。
新神戸駅には乗客は結構いるが、幸いにして券売機に行列が出来ている状態ではない。問題なく切符を受け取ると乗車までの40分強の時間で夕食を摂っておくことにする。
入店したのは新神戸駅内の「洋食屋自由亭」。今時全面喫煙可という正気と思えないような経営方針を掲げているが、幸いにして私が入店した時には店内にはニコチン中毒患者は一人もいなかった。やはり今は社会的に喫煙者がマイノリティーになっているようだ。注文したのはA定食。
ステーキ(と言っても厚さは焼き肉レベルだが)とエビフライと魚フライを組み合わせた定食。味は悪くはない。ただ味付けに若干繊細さが欠けるように感じられるのは、全面喫煙可というこの店の方針と無関係ではないように思われる。
夕食を終えるとさくらに乗車する。さくらの指定席シートは2+2でのぞみのグリーン車からフットレストを除いたというような構造なので非常に快適である。これに乗ったらクソ狭いのぞみの指定席なんて乗りたくなくなる。
広島へは1時間で到着する。今日の宿泊ホテルはアークホテル広島。ルートイン系列のホテルで建物はやや古いが安価な宿泊費に大浴場付きという私向けのホテル。
チェックインを済ませると大浴場で入浴。風呂上がりにマッタリしてテレビをつけると「ナウシカ」を放送中。思わず見入ってしまう。何度見ても本気で泣ける映画。「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」のシーンになると反射的にがん泣きしてしまう。
ナウシカが終わった頃には眠気がやって来るので就寝する。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時半に目覚ましで起こされるが、体にかなりの怠さがある。正月ぼけが著しい。これは仕事始めまでに何とかしておかないと・・・。
朝食はレストランでバイキング。朝食は和洋両対応のしっかりしたものなのでこれで燃料補給。一休みしてから9時過ぎにはホテルをチェックアウトする。
今日の最初の予定は久しぶりの「日本の地方振興と交通について考える市民の会」の行動である。それは可部線の視察。可部線はかつては三段峡までの長大路線であったが、一連のローカル線廃止の中で、可部以北の非電化部分が廃線となった。しかし地元の強い要望によって可部以北の二駅が電化した上で復活となったという路線である。
重たいキャリーを広島駅のコインロッカーに放り込むと、終点のあき亀山行きの普通列車に乗り込む。車両は都市近郊型の227系で乗客も結構乗っている。20分に1本のパターンダイヤで広島近郊の通勤通学路線というイメージである。
広島を出た列車はしばし山陽線と併走。横川で数分の停車の後に山陽線と分かれて北上する。しばし太田川の西岸を北上した後に内陸へと入るが、沿線は常に住宅がある状況であり、アストラムラインとの接続駅である大町や、次の緑井の周辺は大型ショッピングセンターがあったりなどかなり賑わっている。なお単線なので所々で対向車とのすれ違いがある。なおこの辺りからは山がかなり住宅地に迫ってきており、斜面には工事中の箇所もある。多分先の豪雨災害の現場なのだろう。運行している車両にも「がんばろう広島」の表示もある。
左 崩れた山肌が生々しい 右 がんぼろう広島の表示 かつての終点の可部で数分の停車の後に新規路線に入る。次の河戸帆待川駅は住宅地の中に無理矢理作った印象で、いかにも手狭。次が終点のあき亀山だが、この辺りが可児から続くの住宅街の最西端の印象。ここから先は山岳部に突入するようである。あき亀山周辺は住宅もあるが結構閑散としている。どうやらここにターミナルとしての引き込み線や駅前駐車場を整備するスペースがあったから終点をここにしたのではと思われる。
停車中に周辺を視察すると、そのまま折り返す。最初の乗客は数人だが、可部から大量の乗車があり、そこからは進む度に乗客が増える。私が降りる大町に到着した時には車内は立ち客が多数いる状態。やはり時間的に広島行きの方が混雑するようだ。
大町で降りると、目の前にあるアストラムラインに乗り換える。アストラムラインはいわゆる新交通システムだが、輸送力的には神戸のポートライナーのような中途半端なものではなく、普通の鉄道に近い。
この路線も進むにつれて車内が混雑し、満員のまま終点の一つ手前の県庁前で大量下車。私もここで降りて次の目的地へと向かう。そもそも今回、わざわざ広島まで出向いたのはこの展覧会が目的。
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」ひろしま美術館で3/24まで
ドービニーは最初はアカデミズム派の画家としてサロンでの成功を目指していた。しかしローマ賞の受賞を逃がしたことでバルビゾン派などと共に自然を描く方向に転身することになる。彼は購入したアトリエ船で移動しながら自然の風景を描いていった。素早く自然をありのままに捉えたその絵画は、批評家などからは「未完成」などと酷評されることもあったが、当時の新興市民などに受け入れられて徐々に画家としての名声を確立したという。また彼の作品はモネなどの印象派の画家にも大きな影響を与えており、ゴッホなども彼の作品から感銘を受けており、最晩年にはわざわざ彼の邸宅に未亡人を訪れて「ドービニーの庭」の作品を残している。
彼の作品は「未完成」と批判されたと言うが、これは彼の作品が大胆に筆跡などを残していることによると考えられる。筆跡を残すことを良しとしなかったアカデミズム派の視点で見ると「未完成」の絵であろう。しかしこの批判は同時に印象派に対しても言われたことであり、この点でドービニーが印象派に影響を与えたということは納得できる。実際に彼の絵はややほの暗い色彩こそアカデミズム派の流れを汲んでいるが、そのタッチは明らかに印象派のものである。彼の絵に輝く光を加えるとそれは印象派になる。
そういう点で彼の絵画には過渡期的なものも感じずにはいられない。率直に自然を捉えたその絵画には独自の魅力もあるのではあるが、後の印象派の燦めきを目にしている今日の我々の目から見ると、残念ながらインパクトの弱さもある。どちらかと言えば、アトリエ船での生活を面白おかしく描いた銅版画の方が、むしろ彼の真骨頂であったようにも感じられた。
展覧会の見学を終えると美術館内のカフェで一服する。コーヒーとドービニー展用の特別デザートを注文。ドービニーのアトリエ船をイメージしたフルーツタルト。なかなか美味。
美術館を出ると今日の後の予定は広島交響楽団のニューイヤーコンサート。開催されるHBGホールへは本通からバスでアクセスできる模様。ただその前に昼食は摂っておきたい。本通周辺をウロウロして飲食店を探すが、飲み屋は多いものの昼食向きの店が意外とない。そんな中で「大衆蕎麦荒井屋」を見つけたので入店する。
ここは元々焼き鳥などの飲み屋のようだが、昼食メニューもあるようだ。「そばと漬け海鮮丼のセット(930円)」を注文する。店内にはカープ関係のアイテムがいろいろ展示してあるが、店名が「荒井屋」のせいか、新井選手にまつわるグッズが多い。
そばも海鮮丼もまずまず。CPを考えたらなかなか悪くないところ。カープファンなら訪問すべしなんだろう。私は特にカープファンではないが(と言うよりも野球自体に興味がない)。
昼食を終えるとバスでホールまで移動する。ホールに到着した時には既に多くの観客が開場を待っているところ。まもなく開場する。
ところでこのホール、かなり音響が悪いという噂を聞いていた。特に言われているのは残響が皆無とのこと。しかし入場して奏者が練習している音を聞いていたらキチンと残響はある。おかしいなと思っていたら、やがて理由は判明。会場内に人が増えると共に残響は著しく減少し、ほぼ満員になった時点では残響皆無。つまりはホールが空の状態での音響は計算してあるが、人を入れての音響を計算していない模様。しかもこのホールはクロークがないという驚きの構造なので、全員がダウンなどを座席に持ち込んでいる。これがさらにデッドさに拍車をかけると始末。
YMFGもみじニューイヤーコンサート
指揮:角田鋼亮
ヴァイオリン:南紫音
広島交響楽団
モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲 K.620
ベートーヴェン:ロマンス第2番 ヘ長調 Op.50
クライスラー:愛の喜び
マスネ:タイスの瞑想曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」ハ短調 Op.67
アンサンブルの精度が今ひとつであることを感じる。斉奏がダーンと来ずにバシャーンという雰囲気になる。またやたらにデリカシーなしにブカブカと音を出す管楽器も全体のバランスを崩している一因。角田の指揮は熱が入っており、同様にオケの方も結構力はこもっていたのだが、ややそれが空滑りする部分も無きにしも非ず。
南のヴァイオリンは技術はあるがやや繊細に過ぎるところがある印象。響かないこのホールの音響特性でかなり損をした部分もある。なおアンコール中に弦が緩んで音程が狂ったのか、演奏が止まってしまって場内から「がんばって」の声がかかる場面も。
ニューイヤーコンサートという内容を考えると、祝祭的な雰囲気でまずまずのコンサートであったというところ。ただ広響には是非とももう一段高いレベルを目指して欲しい。
コンサートを終えると路面で広島駅に戻る。まだ帰りの新幹線までに時間があるので夕食を摂ることにする。どこかに食べに行く時間も体力もないことから、安直にASSEの飲食店街の「かなわ」で「牡蠣フライ定食」。味は悪くはないが、ここのカキは小ぶりであるので牡蠣フライには少々寂しい。
夕食を終えると帰ることにする。帰りもおとなび切符だが行きよりもさらに節約するためにこだまを使用。帰宅までに2時間以上かかる計算になるが別に急いでいないのでそれでも可。
ホームに到着した列車は昔のレールスター車両。これも2+2シートだ。さくらほどはゆったりしていないが、それでものぞみよりはマシ。さてこれから各駅でのぞみにぶち抜かれながらの長い旅となる。
結局は走っているよりも駅で止まっている時間の方が長いような行程であったが、無事に家に到着したのである。ただ腰の具合は今ひとつ。これは明日から徐々に療養していくしかなさそうだ。
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