展覧会遠征 東京・関西編
ビジネスマンたるものは上司の意向で突然に出張を命じられるわけだが、エリート街道には完全に背を向けている私でもその手の出張はある。この木曜日にも突然に東京出張を命じられた次第。正直に言うとこの一二週間はかなりバタバタするので、東京日帰り出張なんてしんどいものはしたくないのが本音。とは言っても逆らう余地がないのが上司命令。となったら転んでもただでは起きないではないが、諸々をこれに絡めてしまおうといういつもの遊び人発想に切り替えることにする。
東京に向かうのは前日の夕。やはり当日早朝からの移動ではしんどすぎるというもの。大事な仕事の最中にうつらうつらするわけにもいかない。自腹で東京前泊してから、睡眠十分の状態で翌日の仕事に挑みたいという考えである。水曜の仕事を定時に終えると新幹線で東京に向かう。
それにしても東京は遠い。新幹線の席は狭いし不快極まりない。しかも風邪が流行っているのか周りの席ではゴホゴホとむせているものが多く、うつされでもしたらたまらない。
ようやく東京に到着したのは9時過ぎ。とりあえずいつもの定宿・ホテルNEO東京にチェックインすると大浴場で疲れを癒やしてから明日に備えて就寝するのだが、ここで新アイテムを取り出す。それはホワイトノイズ発生器。ここのような安宿ではどうしてもつきまとうのは騒音問題。隣の部屋の物音から表の車の音まで、外から突発的に飛び込んでくる騒音を、ホワイトノイズで覆い隠そうという代物。スイッチを入れると結構大きな音が出るので、この騒音で眠れなくなるのではと思うが、ホワイトノイズというのは脳のフィルタで自動的にカットされるので、不思議とあるところから聞こえなくなる。実際に今まで自宅で何度か試したが、翌朝起床した時には音が出ていることに気がつかなかったこともあったぐらいである。さすがに表で交通事故とか、夜中にドアをバタバタ開け閉めする馬鹿といったレベルの騒音にまでは対処不能だが、少々の騒音はこれでごまかせる。
☆☆☆☆☆
翌朝は8時に目覚ましで起床。ホワイトノイズ発生器の効果があったかどうかは不明だが、かなりグッスリと眠れて気分は爽快。早速ビジネスマンの戦闘服に着替えると、最小限の荷物を持って9時過ぎ頃にホテルを出る。今日の仕事は13時から品川だが、その前に上野に寄り道。国立西洋美術館で開催中のミケランジェロ展に立ち寄ろうとの考え。
上野駅ナカで朝食を摂ると、チケットも上野駅で調達して美術館へ。ここの美術館は駅からのアクセスが良いのがメリットの一つ。
朝食は駅ナカで鶏天
「ミケランジェロと理想の体」国立西洋美術館で9/24まで
ギリシア・ローマ時代には芸術の世界においては肉体表現が重視され、理想化された肉体が彫刻などの世界で展開した。そのような肉体表現はキリスト教支配下の中世ではタブー視されることになるが、人間重視のルネサンスで再び復活する。
本展ではギリシア・ローマ時代の彫刻から始まり、ミケランジェロに至るまで作品を各種展示。ミケランジェロの作品については二点展示。未完成のためにダヴィデなのかアポロなのかが分からないという「ダヴィデ=アポロ」と戦争のせいで破壊されてしまったものを近年に修復した「若き洗礼者ヨハネ」。「ダヴィデ=アポロ」については未完成のために細かい表現はまだ行われていないにも関わらず、体全体に漲る力強さはさすがにミケランジェロという作品。ヨハネの方は戦火に焼けてしまった顔の上部が痛々しいが、残された緻密な表現はこれまたさすがである。
ラオコーン像の復元
なお会場には1506年に発掘され、その生々しい苦悶の表現などからミケランジェロを始めとして多くの芸術家に衝撃を与えたという古代彫刻の傑作・ラオコーン像の復刻も展示されている。ただ本作については映像で見たオリジナルよりはやや表現が抑えめに感じられた。また破損していた右腕については、復刻者の解釈によって高々と掲げられる表現をとったようだが、いささかこれについては私は疑問。というのも、どことなく苦悶の様子と言うよりは「イェィー!」という雰囲気に見えてしまったからである。
美術館を出た時には11時半頃。そろそろ昼食を摂ってから仕事先に向かう必要がある。昼食を上野で摂るか、品川で摂るかだが、品川は全く土地勘がないことから上野で昼食を摂っていくことにする。立ち寄ったのはいつもの「黒船亭」。いきなり満席で待たされるが、ほどなく席が空く。注文したのは「オムライスセット(2500円)」。
コースになっていて最初のにんじんのスープはかなり美味い。ただメインのオムライス自体は意外に平凡。エビが入っていたのには驚いたが、それならチキンが入っている方が私好み。デザートも美味かったが、トータルで見るとCPはやや低め。
エビの入ったオムライス
昼食に予定外に時間を取ったので仕事先まで急ぐ。
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仕事の方は上々だった。タップリ寝たせいで眠気もなく、頭の冴えた状態で仕事に臨むことが出来、なかなかの収穫があった。
さて仕事が終わったら自由時間。これからはコンサートに出向くことにする。目指すはサントリーホールで開催されるロシア国立交響楽団(スヴェトラーノフオケ)の公演。懸念は指揮者が私があまり高く評価していない西本智美であること。だからリスク回避の意味で12000円のS席ではなく、6000円のC席を購入している。ベルリンシンフォニカーの時などと同じパターンである。
品川から地下鉄を乗り継いで六本木一丁目へ。18時前には到着するのでここで夕食を摂ることにする。「杵屋」に入店して「きつねうどんのセット」を。うどんはまずまずなのだが、店内がやけにたばこ臭いのが気になる。どうやらこの店は禁煙も分煙もしていない模様。今時こういう店には喫煙者が集中するので、通常の店よりもさらに臭いということになり、非喫煙者にとってはとても立ち入れない店になってしまう。この様子だと、次の時には私もここに来るのは考え物。
うどんはまあまあなのだが・・・
開場時刻頃にホールへ。ホールには大勢の客が押しかけているが、オバサン層が多いのは西本コンサートの常か。ただそういう層だけでなく、ロシアからの外来オケを聴きに来たというタイプの観客もかなり見受けられる。
ロシア国立交響楽団〈スヴェトラーノフ・オーケストラ〉
指揮:西本智実
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 Op.74?「悲愴」
西本の指揮は相変わらず身振りは派手なのだが、表現自体はおとなしい感じで特別な印象が薄い。またスヴェトラーノフオケは悪いオケではないが、アンサンブルがやや乱れることがあり、またロシアオケによくあるような暴力的な破壊力を持っているタイプではないようで全体的に中庸なオケ。なお序盤は指揮者とオケの意思疎通にややギクシャクした印象があった。西本がオケに対して「もっとメリハリをつけて」「もっと謳って」というメッセージを投げているのにオケの方はサラッと流してしまったり、オケが指揮者の意図したものと異なる速度で走りかけたりといった場面が見受けられた。また未整理のまま音をぶちまけたように聞こえる場面もあり、雑然とした演奏という印象も受けた。このちぐはぐさは中盤以降からはやや解消したが、それでもこの曲に漲るチャイコの情念のようなものが全く感じられず、全体的に緊張感に欠けたやや眠目の演奏になってしまった感は否定できない。
後半の「悲愴」は前半の5番よりはずっとまとまった演奏となった。西本の指揮も熱が入っており、その熱がいくらかオケに伝わった感があった。ただオケのアンサンブルの甘さのせいもあってやはり緊張感は不足。美しさはあるのだが、それがこの曲特有の切ないほどの情念と言ったところまではやや及ばない。特に一楽章にその傾向が強かった。二楽章以降はそれなりにまとめて美しさのあるマズマズの演奏にはなったが、今ひとつ不足を感じる部分はいくらかある。
雰囲気が少し変わったのはアンコール曲。アンコールは一曲だったが、これはオケが指揮者関係なしに突っ走ったのか、パワー爆発でアンサンブル無茶苦茶という豪快な演奏になった。このオケはこんな音も出したのかと驚いた次第。このパワーを魅力として引き出しつつ、全体をまとめきれる指揮者(それこそスヴェトラーノフとか)にかかればこのオケももっと違った演奏をしそうである。スヴェトラーノフを黄泉から呼び戻すことは叶わないから、現役指揮者ならフェドセーエフかポリャンスキー辺りか。
西本もいわゆるオスカル様の色物指揮者から本格的な実力派指揮者に転身を図るとすれば、そろそろ正念場のように思われる。どことなくまだ自分のスタイルの確立を模索しているように感じられた。今回の演奏でも「無難」もしくは「平凡」の一言であり、これが西本のスタイル、魅力だと言えるようなものはまだ見えてこない。さすがに指揮スタイルの美しさだけでは音楽ファンに対するアピールにはならない。なお以前には明らかにパフォーマンスとしか思えないような無駄な動きも多かったが、今回見た印象ではそのような無駄な動きは随分と減ったようである。女性指揮者にもシモーネ・ヤングのような先人もいるので、彼女にも頑張ってもらいたいところ。かつては「大勢を統率する必要のある指揮者には女性は向かない」なんてことが大っぴらに言われていた時代もあったぐらいなのだから、時代も変わったものである。
なお客層もやや変化したのか、悲愴の第三楽章終了後に拍手が起こったり、宝塚さながらの場違いな黄色い歓声が飛ぶということも今回はなかったようである(熱心な追っかけの類いと見られる者はいくらか見受けられたが)。やはりいろいろな意味で西本も転機にさしかかっているか。もっとも会場で配られたチラシはことごとく西本指揮の公演のもののみと、興行側は未だに西本を色物扱いしているのは何となく覗えてしまったのであるが。
感想としては12000円を払っていたとしたらハズレ、6000円だったらこんなものかと言ったところ。結果として私の選択は正しかったということになる。なお西本の現況が分かったのは一つの収穫。以前に聴いた時には、所詮はいずれ消える色物指揮者という印象しかなかったが、今回の印象ではもし10年後に生き残っていれば存外良い指揮者になっているのではという気がした。
コンサートを終えるとホテルに戻り、大浴場で体を温めてから就寝する。今日も疲れた。
☆☆☆☆☆
翌朝は目覚ましは8時にセットしていたのだが、6時に目が覚めてしまう。やや疲労はあるが体調は概ね悪くない。ただ今日は朝から雨が降っているのが鬱陶しい。
さて今日の予定だが、東劇で開催中のMETライブビューイングを見に行ってから横浜の美術館に行き、とんぼ返りでトリフォニーホールでの新日フィルのコンサートを聴こうというややドタバタしたスケジュール。そもそもは今日東京に滞在することにしたのは横浜美術館のモネ展のせい。昨日の出張が決まった際、それなら横浜で開催中のモネ展に立ち寄ろうと思ったのだが、よりよりによって13日は横浜美術館は休館日ということで、やむなく今日は休暇を取って東京に滞在することにした次第。実のところ昨日のコンサートと今日の新日フィルは時間が空いたための辻褄合わせである(笑)。
東劇での今日の上映はロッシーニの「オリー伯爵」「セルビアの理髪師」モーツァルトの「魔笛」の3本。そのうちの「魔笛」は今年見に行ったものだからパス。「セルビアの理髪師」も興味はあるのだが、横浜まで行く必要があるから「オリー伯爵」に絞ることにした。
東劇に到着したのは9時半頃。上映は11時からなので時間に余裕がありすぎ。窓口にはチケット販売は10時半頃からとの表示が出ている。仕方ないので朝食兼昼食を摂ろうと近くの築地市場の方面へプラプラと歩く。
築地市場は大混雑
築地市場は卸売市場のはずだが、周辺には一般客も対象にした商店が多数あり、外国人を中心とした大勢の観光客で賑わっている。雰囲気的には関西で言うと黒門市場辺りか。朝食のための店を探すが、歩き回るのもしんどいので目についた「すしざんまい」に入店する。
朝から店内は大勢で賑わっている。カウンター席に通された私は「海鮮丼(1500円+税)」を注文する。魚の鮮度も良く斜里の味も良い。江戸前なので関西の甘みのある斜里と違ってサッパリしたタイプ。基本的には関西の寿司が好きな私だが、江戸前寿司でもうまい店ならありだ。ただカウンター内の職人の機敏な動きを見ていた私は、根本的に注文するものを間違えていたことに気づく。このような店では職人の握りの技を確認するために握りを注文するのが筋であった。なんとも野暮な注文をしてしまったことだ。とりあえず追加でカンパチ、シマアジ、ヒラメ辺りも注文する。握りは箸で持ってもばらけないが、口に入れるとばらけるというちょうど良いタイプ。やはりこの辺りは回転寿司のアルバイトや機械握りとは違うようである。支払いは2000円台後半。朝食としては贅沢すぎだが、昼食との合わせ技ということにしておく。
海鮮丼と追加で頼んだカンパチとシマアジ 昼食兼の朝食を終えると東劇へ。まだ10時半には数分あるがもうチケット窓口は開いている。全席指定だが館内はガラガラ模様で場所は選び放題。中央のやや前方の席を確保。さすがに平日の午前ということでまともな社会人は通常来れない。来ているのは私のような遊び人かリタイヤしたオッサンか有閑マダムといったところ。
東劇はいわゆる今時のシネコンプレックスではなく、古き良き時代の大劇場。設備は更新した跡があるが、施設全体的にやや古びたところも感じさせられる。しかし今の時代、これだけの大劇場を満杯に出来るコンテンツなんてあるんだろうか。今回に限って言えば、入場率1割以下というところか。
METライブビューイングアンコール ロッシーニ「オリー伯爵」
夫や家族を十字軍に送り出したご婦人方に迫る好色オリー伯爵の手練手管といった喜劇。ロッシーニ的な軽妙な音楽に乗せた愉快な喜劇である。
オリー伯爵を演じたファン・ディエゴの快演・怪演がかなり光る。大胆不敵で神出鬼没で厚かましいことこの上ないオリー伯爵を、会場の笑いも誘いながら演じきっていた。
ところで結局はオリーの騎士達はまんまと女共に手玉に取られたわけで、実は男共の留守を守っている女共のしたたかさを描いた作品のようにも感じられたのだが、それで解釈は合ってるんだろうか?
映画の鑑賞を終えると横浜まで移動。東銀座から京急に直接乗り入れて一気に横浜である。快速急行だと品川から蒲田、川崎、横浜で意外とアクセスが良いようだ。気がつけば横浜に到着していた。ここからみなとみらい線に乗り換えて二駅目。それにしてもこの駅は深いところにある。エスカレータで地上まで出るのが大変。地下四階に当たるらしい。
横浜美術館はかなり久しぶりだが、入場した途端に館内が大混雑しているのに驚く。チケット売り場にも数十人の行列が出来ている。平日の昼間でこれだと、週末はかなりすさまじいのでは。会期末が近づいているということもありそうだが、それにしてもこれだけの混雑は久しぶりに見る。やはり「モネ」というのは今でも日本ではかなりのキラーコンテンツになるようだ。
「モネ それからの100年」横浜美術館で9/24まで
モネの作品は当時の時代を画するのみでなく、後の現代アートなどにも大きな影響を与えたという。そのようなモネの作品と現代アートを併せて展示。
しかし実態としては「モネとオマケ展」というところ。展示されているモネの作品は圧倒されるようなものばかりで、特にその光の煌びやかで奥深い表現には唸らされる。ちなみに一点だけ極端に完成度の低い作品があって「?」だったんだが、その作品は壁画のための習作の一部との説明を見て納得。
これらのモネの作品と比べると、対比で展示されている現代アート作品が、何の工夫もなくに単に色をぶちまけただけとか、何の工夫もなしにぼやかした絵の具を並べただけとかの代物ばかりで作品としての力が格段に劣る。これでは企画者の意図に反して一種の「公開処刑」状態になってしまっている。観客も正直なもので、モネの作品の前には黒山の人だかりなのだが、現代アート作品の前はガラガラで、通りがかっても一瞥しただけでさっさと過ぎていく観客も少なくない状態であった。
現代アートの方はともかくとして、モネの作品はそれなりの点数展示されているので、単にモネ展として訪問しても十分に楽しめる内容であった。観客が多すぎることを除けば。
なおモネは晩年は特に現代アート的な世界に突入していたとの説もあるのだが、これについては私は大いに疑問。確かに最晩年のモネの作品はグチャグチャした最早何を書いているのかが不明な正に現代アート的な作品があるのだが、これはモネが芸術の最終到達点として至ったというよりも、この頃のモネは既に眼病の影響で視力をほとんど失っており、もうまともな作品を制作できなかったという方が正解だと考えている。巨匠や天才などと呼ばれると、失敗作などにまでその失敗に深い意味をこじつけるような研究者が現れるから大変である。当の本人にすれば「頼むからそれには触れないでくれ」と言いたい局面もありそう。
展覧会の見学を終えたがまだホールに向かうには少し早い。向かいのショッピング施設の地下の上島珈琲できんたろう牛乳ソフトを購入。「きんたろう牛乳」というのがあるのか? それともきんたろうは「牛乳ソフト」全般にかかるのか? そもそもきんたろうと牛乳ソフトにどんな関係が? などとくだらないことを考えつつしばしマッタリするが、この辺りには特に時間をつぶす場所もない。仕方ないのでとりあえず横浜に移動する。
横浜で時間をつぶそうかと思ったが、横浜にもやはり立ち寄るような場所はない。そう言えば私はいつも横浜に行くと時間をつぶすのに困るんだった・・・なぜかこの町とはあまり相性が良くないんだよな・・・。仕方ないのでとりあえず錦糸町まで行ってしまうかとJRの改札をくぐって横須賀線を待つ・・・のだが、列車到着1分前で異常発生。横浜と保土ケ谷の間で列車にトラブルが出たとかで列車が停止、入ってくるはずの列車が入ってこなくなってしまった。安全確認のためとかで10分以上待たされて列車がようやく到着するが、また次の列車が異常発生とかで再び停止。乗った列車がいつまで経っても駅を出ない。結局何だかんだでダイヤは滅茶苦茶で、予定よりも錦糸町への到着が大幅に遅れ、結局は夕食を摂ってからホールに直行すればちょうどぐらいの時刻に。まさかこんなところで時間をつぶされる羽目になるとは思いもしなかった。
ようやく錦糸町に到着すると、夕食は「青葉」で「大盛り中華そば(860円)」を頂くことに。魚介系の出汁が特徴の濃厚系ラーメン。味はまずまずだが、今は体の方が少しついてこない感じでややくどめに感じてしまう。
夕食を終えてホールに向かうと既に入口の前には数十人が集まっている。まもなく開場時刻となり、ゾロゾロと入場。ロビーコンサートがあったり、新日フィルも集客に腐心しているようだ。会場の入りは7〜8割というところか。
新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会トパーズ<トリフォニー・シリーズ> 第593回
上岡敏之[指揮]
古部賢一[新日本フィル・首席オーボエ奏者]*
R. シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」作品20, TrV 156
R. シュトラウス/オーボエ協奏曲 ニ長調 TrV 292*
R. シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28, TrV 171
R. シュトラウス/交響詩「死と変容」作品24, TrV 158
R.シュトラウスの作品は音の洪水なのであるが、それを上岡は細かい点にまで気を配りつつ、絶妙のバランスで演奏させた。そのために空虚な空騒ぎにならず、それでいて煌びやかで派手なサウンドが炸裂のなかなかの好演。また古部のオーボエもなかなかに味わい深いものであった。
コンサートを終えるとホテルに戻るが、途中で乗り換えの上野駅の駅ナカで閉店間際のバーゲンを物色、夜食に3割引のマグロ握りを、明日の朝食に2割引のカツサンドを購入して帰る。ホテルに戻ると入浴を済ませてからすぐに就寝。明日は早めの行動になる。
☆☆☆☆☆
翌朝は目覚ましで7時に叩き起こされる。体には怠さだけでなくあちこちに痛みがある。昨日がいささかハードだったか。とりあえず昨日買い込んでいたカツサンドが朝食、今日は9時頃の新幹線で大阪に戻る予定。今日からはそもそも東京出張に無関係に最初から予定していた私の週末プランの実行になる。今日はザ・シンフォニーホールで14時開演の関西フィルの定期公演を聴きに行く予定。
新幹線の時刻を考えるとやや早めにホテルを出る。この調子だと予定よりもかなり早めに東京駅に着くだろうから、エクスプレス予約の時刻を早めてやろうと考えてスマホを操作した時に事態の異常さに気づく。新幹線の予約に全く空きがなくて振り替え不能。よくよく考えてみると今日は三連休の初日だった。私は休みに全く無関係に行動していたのでそのことに思い至っていなかった次第。
到着した東京駅もとんでもないことになっていた。大きな荷物を持った大勢の乗客が押し合いへし合い、切符売り場の前も改札も大行列で、中国人団体客らしき姿も多い。切符の引き取りから改札を通るだけでも通常には考えられないような時間を浪費し、これは切符の振り替えどころではなかったことに気づく次第。例によってつくづく東京という大都市の異常さを思い知らされるのであった。やっぱりこの非常識都市はオリンピックなんかの前になんとかすべきことがごまんとある。
結局何だかんだで時間をつぶされて、時間つぶしなど考える必要もなく新幹線に乗り込むこととなった。昨日からこんな展開ばかりだ。それにしても新幹線の狭すぎるシートは不快だな・・・。混雑のせいか新幹線は予定よりも5分ほど遅れて出発する。
この原稿を入力したり、ネット検索をしたり、ウツラウツラしたしている内に新大阪駅に到着する。到着した新大阪駅も大混雑、ここから大混雑の在来線でこれまた大混雑の大阪駅に移動。ロッカーにキャリーを放り込みたかったが、案の定コインロッカーには全く空きが見つからない。そこでまだ開演時刻まで若干の時間があることから、新今宮の宿泊ホテルまで荷物を持って行ってしまおうと考える。今日の宿泊ホテルはホテルサンプラザ2。モニタープランとかで楽天トラベルに安価な料金プランがあったのが選択の決め手。
ホテルにチェックインすると、冷房で少し体を冷やしてから再び町に繰り出す。福島からホールに向かう途中で昼食を摂る店を探すがピンとこない。ラーメンは昨日食べたし、洋食は少し重い。結局はカレーにでもしようかと上等カレーを覗いたが、なんと店の前に行列が出来ている。時間もあまりないし、実のところ食欲もあまりな意思と言うことで、結局はコンビニでおにぎりと肉まんを購入してこれが昼食代わり。
関西フィル第295回定期演奏会
指揮:フェリックス・ミルデンベルガー
チェロ:アンリ・ドマルケット
ムソルグスキー/R=コルサコフ編曲:交響詩「はげ山の一夜」
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33
ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲「展覧会の絵」
デュメイが足の具合が悪いとかで、指揮者は急遽代演の27歳の新鋭フェリックス・ミルデンベルガー。ただラロの「イスの王様」は彼のレパートリーになかったのか、一曲目は急遽「はげ山の一夜」に振り替えられた。
しかしこれが正直なところ一夜漬け感が満載の演奏になってしまった。指揮者がオケをリードすると言うよりも、指揮者がオケに乗せられているという印象で、ミルデンベルガーが自分の味を出すなどと言う次元ではなく、どうにかついていっているというのが正直なところ。
チェロ協奏曲はドマルケットの演奏がさすがの深い音色で非常に聴かせる。これは見事の一言であった。
「展覧会の絵」は関西フィルの非常に安定した演奏が冴えた。金管陣などが安定感抜群で良い音を出しており、華々しくも華麗な演奏になった。ただミルデンベルガーに関してはオケの演奏に助けられた印象で、そこに彼自身の解釈やら演出を付け加えている様子は見られなかった。終始無難な演奏に徹しており、残念ながら若さを感じさせられない演奏であった。今日の関西フィルの安定感なら、少々の冒険をしても破綻はなかっただろうになかなか勿体ないところである。
金管陣を中心にいつになく安定した演奏を聴かせていたが、編成がいわゆるデュメイスペシャルだったのではないかというように思われる。残念ながらミルデンベルガーはそれを十分にドライブしきれる器ではまだなかったようだ。つくづくデュメイの指揮で聞きたかったなというのが本音。ところでどうも去年辺りからデュメイの体調不良による休演が増えており気になるところ。デュメイが手を抜いてサボっているのではないかとの噂まであるが、デュメイの体調が本当に優れないにしても、デュメイと関西フィルの関係が上手くいかなくなってきているにしても、どらちにしても非常に心配である。
コンサートを終えると新今宮に戻り、ホテルに帰る前に夕食を先に摂ることにする。立ち寄ったのは久しぶりに「グリル梵」。「ビーフカツ」にライスをつけて2160円。やはり牛肉の火の通り具合が絶妙で、また肉と衣の一体感も抜群。まさにこれこそ関西の正しいビフカツ。久しぶりに満足度の高い夕食を摂った。それにしてこれでこの価格は、CPとしてはかなり高いと断言できる。
夕食を終えるとメガドンキに立ち寄って入浴用のバスタオルを購入。このホテルにはバスタオルがアメニティに入ってないことを忘れていた。ホテルに戻るとこのバスタオルを持って入浴。ここのホテルには定員3名ぐらいの小浴場(笑)がついているので、ここで入浴。私が行った時にはちょうど先客2名が風呂からあがる準備をしていた頃。とりあえず風呂でゆったりと手足を伸ばして今日の疲れを癒やす。何だかんだで今日は東京〜大移動しているので疲労は結構ある。
風呂からあがると部屋でマッタリだが、とにかく疲れがかなりひどい。結局この日はいつもよりもかなり早めに就寝した。
☆☆☆☆☆
翌朝は目覚ましを8時にセットしていたが、就寝が早かったこともあってさすがにその時刻まで寝通す睡眠力がなく、7時頃には目が覚めてしまう(一旦夜中の3時に目が覚めたが、意地でその時刻まで引っ張ったのが実態)。
ただ目は覚めたものの体は鉛のように重くて体調はかなり悪い。体のどこかが悪いと言うよりも単純に疲労が蓄積してしまったいるようだ。しかし今日はびわ湖ホールまで「ドン・ジョバンニ」を見に行く予定。とりあえずチェックアウト時刻の10時までゴロゴロとして体を労ってからホテルを後にする。
ここからJRで一気に京都まで移動することにするが、それにして人が多い。大阪駅から乗り込んだ新快速は寿司詰めだし、ようやく降り立った京都駅も相変わらずの異常な人出。しかも今日はその上にやけに蒸し暑い。
京都に到着したのは12時前。これからどうするかだが、びわ湖ホールでの開演は14時からなので、今からホール直行では時間が余るし昼食を摂るにもあの辺りには店がほとんどない。ザッと調べたところ、今京都では近代美術館で東山魁夷展を開催中とのこと。東山からだとびわ湖ホールへは地下鉄から京阪直行で行ける。東山魁夷展に立ち寄ってついでに東山で昼食を摂るというところで考えをまとめる。
地下鉄で東山に到着すると、まず先に昼食を摂ることにする。目当てのそば屋は満席だったので近くの「京とみ」に入店。「エビと穴子の天丼(1296円)」を注文する。
しかしこの選択は結果としては失敗だった。別に料理が不味かったとかでなく、ここの店は時々京都にある「異様に雅な時間が流れている店」だったのである。京都と大阪の飲食店で大きく異なる点は、まず価格が一つであるが、もう一つは料理が出てくる時間。大阪ではあまり客を待たせると客がぶち切れてしまうが、京都はもっと雅な方々が多いのか非常にゆったりとした店が多いのである。この店がその類い。たかだか天丼だったら大阪だったら10分以内に出てくるのが常識だが、この店は店内の客数が10人ちょっとにも関わらず、天丼が出てくるまで優に30分以上待たされた次第。ゆったりと出てきた天丼は、天ぷらの揚がり具合もサクッとしており、添えられただし巻きの味も文句なしと料理には難がなかっただけに残念。まあ時間に余裕がある時に利用するには良い店か。
昼食に想定を遥かに超える時間を要してしまった。そのせいで美術館にかけられる時間は20分から最大で30分ぐらい。ただ東山魁夷展については再訪の予定もあるし、恐らく展示作の中のかなりの部分は一度は見たことのある作品だろうから、鑑賞対象を絞ればこの時間でも回ることは何とか可能。このようなことを頭で練りながら美術館へ向かう。しかし美術館前に到着した時点で、私がここまで練り上げた戦略は根底からガラガラと音を立てて崩れてしまう。何と美術館のチケット売り場の前に数十人以上の大行列。これでは美術館に入館する前に時間切れである。東山魁夷の人気を侮っていた。東山魁夷は特に日本人なら万人に受ける画家として不動の人気があり、人気の点では他の日本画家とは桁違いなのを忘れていた(単純な人気だけなら横山大観をも凌ぐだろう)。
チケット売り場の絶望的な光景
この時点で「東山魁夷展」は後日に再訪することにして東山駅にUターンすることにする。地下鉄から京阪に乗り入れてホールに到着したのは、開場時刻の10分ほど前だった。
びわ湖ホール オペラへの招待 モーツァルト作曲 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」
指揮:園田隆一郎
演出・お話:伊香修吾
出演:びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽:大阪交響楽団
びわ湖ホール主催の初心者向けオペラ公演。今回は女たらしの主人公が自業自得で地獄に落ちるという「ドン・ジョバンニ」。遊び人モーツァルトの自虐作品とも言われている。
歌唱陣は圧倒的とまでは言わないまでも、ほぼ過不足のない歌唱でなかなかに聴かせる内容であった。個人的には騎士団長にはもう少し凄みの欲しいところではあったが、堂々としたゲス男のドン・ジョバンニの存在感は見事。おかげで全編がなかなかに引き締まっていた。
これで今回の予定は公私共に完全終了。満員の新快速で帰宅することに相成ったのである。それにしても蒸し暑かったり人が多すぎたりでなかなかに疲れてしまった。あまり無理のある予定は組むもんではないな。
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