展覧会遠征 関西オペラ編2

 

 この週末はオペラ三昧である。ただその前夜祭(笑)として、金曜の夜は読響の大阪定期。金曜日はちょうど大阪に出張があったので、そのまま出張先からホールへ駆けつけることにする。

 

 夕食はまだ腹が十分に減っていなかったこともあり、阪急地下の「兎麦」「なめことおろしのぶっかけうどん(710円)」を頂く。うどんは腰があってなかなかだが、やや出汁に物足りなさを感じる。それとなめこはぶっかけうどんでは食べにくい。最終的には丼鉢からすするような形に。

  

 うどんを茹でるのに時間がかかったので、食べ終わった時にはもう開場時刻を過ぎている。今日のプログラムはマーラーの復活の一曲なので休憩がない。もし開演時間に遅れるようなことがあれば入場できなくなる。西梅田駅まで慌てて移動すると、そこから地下鉄でフェスティバルホールへ急ぐ。

 

 ホールにはなんとか開演時刻の20分前ぐらいに到着する。場内はほぼ満席である。かなり大盛況だ。


読売日本交響楽団 第20回大阪定期演奏会

 

指揮=コルネリウス・マイスター

ソプラノ=ニコール・カベル

メゾ・ソプラノ=アン・ハレンベリ

合唱=新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平 恭平)

 

マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」

 

 さすがに読響はうまいし、合唱団はそれに輪をかけてさらにうまい。ただいささか物足りなさを感じさせるのはマイスターの指揮。ややスロー目のテンポで美しく鳴らすのだが、マーラーらしい情念のうねりようなものが感じられない。美しいだけでサラッと流れてしまい、全体的に軽すぎるという印象。クライマックスでの盛り上がりも、音響的には大スペクタクルなのだが、単なる空騒ぎに聞こえてしまって心の底をガツンと動かされるというものがない。最終的に「浅い」という印象を受けてしまった。


 場内は大盛り上がりだったが、残念ながら私はそれには同意する気になれず、やや距離を置いたような感じになってしまった。どうも私はマイスターとは相性が悪いようだ。

 

 コンサートを終えると今日の宿泊先の新今宮へ移動。やはりうどんだけでは軽すぎたのでホテルに入る前に改めて軽く夕食を摂りたい。ジャンジャン横丁に立ち寄ると、終演がいつもよりも早かったこともあって「だるま」がまだ営業中。コーラを飲みながら串カツを10本ほど頂いて1668円。

 夕食を終えるとホテルに入る。ホテルは例によっての定宿・ホテル中央オアシス。部屋に入るとまずはエアコンを全開にして蒸しかえった部屋を冷ますことから。確かに今日も暑かった・・・。ようやく部屋が冷えたところで風呂に湯を張ると入浴。この日はさっさと就寝するのである。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は8時に起床する。かなり寝たはずだがそれでも体がだるいのは昨今の常。とりあえずコンビニで買い込んだ朝食を摂ると、朝風呂で目を覚ます。この辺りはルーティンのようなもの。

 

 この日はびわ湖ホールで3時に開演のイタリアバーリのオペラ以外に予定はない。そこでチェックアウト時刻の10時まで室内でウダウダと過ごす。

 

 ホテルをチェックアウトしたもののすることがない。仕方ないのでとりあえず京都に移動することにする。京都に到着すると11時頃になっているのでさっさと昼食を摂ることにする。

 

 立ち寄ったのは「東洋亭」「フィレカツのランチ」を頂く。ミディアムの牛肉が抜群のうまさ。また相変わらずトマトのサラダが異常にうまい。そして私好みのプリン。

 昼食の満足度は高かったが、何やら厨房が人手不足気味でてんやわんやしていた。おかげで料理が出てくるまで30分以上を要し。最終的に店を出た時には入店してから1時間以上を経過していた。サービス業などで人手不足が深刻化しているというが、その辺りがここにも及んでいるのだろうか。

 

 昼食でかなり時間をつぶしたものの、それでもまだ開演まで3時間近くある。今は京都の美術館もこれといった出し物はないし、仕方ないので駅前のネットカフェでゴロゴロしながらしばし過ごすことに。

 

 ネカフェで1時間半ほどつぶすとJRと京阪を乗り継いでホールへ移動する。びわ湖ホール大ホールは大入り。私の席は4階の貧民席(と言っても16000円する)。ステージからは遠いが見通しは悪くない。

   


イタリア・バーリ歌劇場『イル・トロヴァトーレ』

 

レオノーラ:スヴェトラ・ヴァシレヴァ

マンリーコ:フランチェスコ・メーリ

ルーナ伯爵:アルベルト・ガザーレ

アズチェーナ:ミリヤーナ・ニコリッチ

指揮:ジャンパオロ・ビサンティ

管弦楽:イタリア・バーリ歌劇場管弦楽団

合唱:イタリア・バーリ歌劇場管合唱団

 

 ガザーレの堂々たる悪党ぶりと、それに挑むメーリの力強いテノールが圧巻の盛り上がりを示す。男声陣の迫力に比較すると、急遽の代演のヴァシレヴァは悪くはないものの若干の弱さを感じさせられたのが残念。

 シナリオにはあちこちと無理が見えるのはこの手のオペラの常だが、そういう作品の粗はほったらかして圧倒的な歌唱で押しまくるのがイタリアオペラである。そのイタリアオペラの神髄を堪能させてくれるなかなかの名演であった。


 二幕終了後の休憩の時にロビーに出ると、外はとんでもない豪雨になって稲妻が光っていたので帰りがこの状況だとたまらないなと思っていたが、終演時には幸いにしてもう雨は上がってきた。しかしホッとしたところで場内放送が。京都と草津の間でJRが大雨のために運休とのこと。これは困った。JR大津までのバスが出るというが、電車が動いていないJRの駅に行っても仕方ない。私の今日の宿泊予定ホテルは瀬田なのだが、京阪で石山まで行けたとしても、そこから瀬田までのたどり着けるかどうか。とりあえず仕方ないので事態が改善することに期待しつつ石山まで移動する。

 

 しかし石山に到着した時には事態は改善どころか悪化しているようだった。京阪石山駅のホームは人であふれかえって危険な状態で、列車から降りるのさえ困難なぐらい。そしてJR石山駅周辺には列車に乗れない人間が溢れている。ネットで情報を調べると、さっきまで「20時に運転再開予定」だったのが、知らない間に「早くとも20時30分に運転再開」に変わっている。これはJRは全くあてにならないと判断するしかない。

 

 バスを調べたが、瀬田駅に行くバスは夕方の最終便が遙か前に出た後、それ以外の路線は見当違いの方向のものばかり。タクシー料金を調べると1400円ぐらいとのことなので諦めてタクシーを利用しようかと思ったが、既にタクシー乗り場は長蛇の列で、しかもタクシーがやってきている気配がない(実はこの時、国道1号線が大渋滞でノロノロ運転になっていたことは後で知った)。仕方ないので最終手段。Google先生によると瀬田駅までは3キロで徒歩で38分とのこと。「歩こう」と決意する。日頃のウォーキングの距離を考えると、3キロは歩ける距離である。

 

 それにしてもこんなことで瀬田川を渡ることになるとは思わなかった・・・。私と同じ状況に追い込まれたのか、意外と歩いている人が多いのが驚いた。多分京都方面に移動するのに石山を目指しているのだろう。橋上などで多くの人とすれ違うことになったのである。

 

 歩くと決めたは良いが体力的には結構キツいし、かなり蒸しているので頭から汗だくになる。雨がやんでいることだけが幸い(もし雨が降っていたらさすがにキャリーを引っ張って歩くという選択肢は選びようがなかった)。しかし一つだけ計算違いは、今回の遠征は出張のついでだったせいで、いつものスニーカーではなくて革靴を履いていたこと。おかげで足への負担が大きい。30分以上を費やしてようやく瀬田駅にたどり着いた時には、頭から汗でずぶ濡れの上に足はパンパンという悲惨な状態。

 

 瀬田駅で数分待つとホテルからの送迎バスがやって来るのでそれに乗車。ようやくホテルに到着である。今回の宿泊ホテルは今までにも何度か利用したニューびわ湖ホテル。温泉でゆっくりしたいと思って選んだホテルだったのだが、そのためにこんな目に遭うとは・・・。京都のホテルを選んでいた方が正解だったか。しかも今回に限って夕食付きプランを選んでいたためどうやっても夕食時間までにホテルに着く必要があり、京都駅辺りで夕食を摂りながらJRの再開を待つという選択肢もとれなかった。まあ石山から瀬田までの電車140円を節約できた上に日頃の運動不足の解消もさせてもらったと前向きに考えることにするか。

 

 シャワーで軽く汗を流してから浴衣に着替えると、隣の入浴施設に入浴と夕食を摂りに行く。風呂に飛び込みたいところだが、腹が減っているのでまずは夕食から。夕食は御膳がついている。味はまずまず。刺身がないのに刺身醤油がついているのが奇妙だなと感じていたら重の下の段に刺身が隠れており、危うく見逃すところだった。

 腹がふくれたところでラドン泉の温泉に入浴。足にダメージが来ているからそれをゆったりと癒やす。ラドン泉なのでこれという特徴がある湯ではないが、それでも大浴場は快適至極である。とにかくできる限り足をほぐしておく。

 

 風呂上がりには食堂で冷やし飴を頂く。まさに関西の夏の風物詩。さらに小腹が空いていたのでシーザーサラダを頂く。このサラダ、意外とボリュームがある。

   

 部屋に戻ると夕食を済ませて風呂に入った後の疲れが一気に押し寄せる。この日はやや早めに床につく。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半まで爆睡。今日は昨日と違って天気は良さそうだ。レストランで朝食を頂く。体の各所に痛みはあるが食は進む。

   

 今日は昨日と一転して晴天の模様。JRも通常通り運航している。とりあえず今日の予定は大阪で開催のバーリ歌劇場のトゥーランドットに行くだけなので、しばし時間をつぶしてから大阪に移動することにする。ホテルのチェックアウト時刻は10時だが、同時刻に隣の入浴施設がオープンし宿泊客は当日の無料券がもらえる。と言うわけで10時を過ぎると隣の入浴施設に移動、ゆったりと朝風呂に使ってから休憩室でウツラウツラ。12時頃までウダウダと過ごしてから送迎バスで瀬田駅まで送ってもらい、そのまま大阪に直行する。

 

 昼食は大阪駅前ビル地下辺りでとろうと思っていたのだが、頭にあった店はことごとく長蛇の列。最近はネットの口コミなどで踊らされる客が多く、行列が出来る店とそうでない店が極端になる傾向がある。しかしこの手の口コミは百害あって一利程度しかないというのが現実。良かった店がこの手に踊らされた一見の客であふれかえり、キャパを越えた結果として料理や客あしらいが破綻して駄目になるというパターンを嫌と言うほど見てきたし、また本当に良い店が口コミの仕込みだけ上手い店(実際に金を取って口コミを書き込む業者の存在なども知られている)に駆逐されてしまう例もあった。こんなことになるのは、とにかく食べ物まで自分の舌で判断できない輩が増えたこと。自分の頭で考えることをしない輩も増えているし、今の日本はいろいろな意味で末期症状を示している。今の私が望むことは、とりあえず私の生きているうちに日本に滅んでもらいたくはないということ。私が死んだ後は、バカ共がそのバカさのせいで自滅しようともうそれは自業自得だから後は知らない。幸か不幸か私には先行きを心配しないといけない子供はいないし。

 

 大阪周辺は駄目なので肥後橋まで移動してしまうことにする。結局この日の昼食はフェスティバルホール地下の「キッチンジロー」「ランチ(980円)」を頂く。ここのランチは二品選ぶ形式なのでハンバーグとホタテクリームコロッケを頂く。

 箸で食べる洋食という典型的な町の洋食屋パターン。神田神保町との記載があることから、元々はその辺りの洋食店が全国展開したのだろう。スープ、ライス付きとあったが、出てきたのがスープというよりも明らかに豚汁であったというところは笑える。まあその豚汁が結構美味かったが。ハンバーグとコロッケについては特別なものではないが、普通に美味しいというところか。場所柄を考えるとCPはまあまあこんなものだろう。

 

 昼食を終えるとローソンでペットボトルのお茶を買い込んでからホールへ向こう。今日もとにかく暑い。ホールは昨日に続いて大入りである。私の座席は今度は3階の貧民席(と言っても14000円している)。ステージがやや遠いがそれでも見切りではないのは救い。


イタリア・バーリ歌劇場『トゥーランドット』

 

トゥーランドット:マリア・グレギーナ

カラフ:マルコ・ベルティ

リュー:ヴェレリア・セペ

指揮:ジャンパオロ・ビサンティ

管弦楽:イタリア・バーリ歌劇場管弦楽団

合唱:イタリア・バーリ歌劇場管合唱団

 

 圧倒的な歌唱に圧倒的な演奏。プッチーニのスケールの大きな音楽も相まってなかなかの内容であった。

 ただ賛否が分かれるのは最後の部分をカットした演出だろう。あの後はカラフが半ば強引にトゥーランドットを口説いて、彼女もカラフを愛するという少々強引な展開なので、ドラマとしてはカットもありなんだろう。ただ問題は音楽の方もここで切れてしまっていること。プッチーニが作曲したのはここまでだからとのことだが、そもそもプッチーニがここで作品を終わらせることを意図していたのならともかく、実際は彼がここで急死したので中途になってしまったと言うだけ。この後のスケッチも残っていたのだから、やはりここで終わらせるのは音楽的に尻切れトンボになっている感が否定できない。


 音楽が派手なのでその演奏に圧倒される感じだった。それだけに最後の尻切れトンボ感がなんとも残念。どうもオペラの「新演出」とやらは、斬新さを狙って失敗する場合が多いような気がする。現在は明らかにあらゆる芸術分野においてクリエイターのレベルが低下してきているのだから、過去の名作に関しては変に突っ張った斬新系演出は狙わないのが正解ではないか。

 

 創作分野の低迷に、トランプや安倍に代表されるような政界の人材の低レベル化、さらに大衆の愚民化。これは人類という種全体が滅びに向かいつつあるのではないかという暗い想いに取り憑かれそうになる今日この頃である。

 

 

 

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