展覧会遠征 東京編18
まだGWの疲れが抜けきっていないところだが、週の半ばにいきなり仕事の関係で東京まで出張することになってしまった。朝一番に出発しての東京日帰り出張なんてしんどくて出来たもんじゃない。それなら自腹で前泊してやろうと思って諸々を調べていたら、その晩にチョン・ミョンフン指揮の東フィルのフィデリオがあるということが判明。それなら火曜日は半日休暇を取って昼から東京に直行してこれを聴きに行こうと考えた次第。こんなオプションでもないと、東京出張なんてしんどくてやってられない。
火曜日の仕事を半ドンで終えると直ちに新幹線で東京に移動する。この日の昼食は車内で弁当を。それにしても新幹線での移動はしんどい。東京に着いた頃には結構疲れている。
東京に到着すると直ちに宿泊ホテルであるホテルNEO東京に荷物を置きに行く。ホテルに荷物を置いて身軽になると直ちにサントリーホールへ移動。
夕食は杵屋でうどんのつもりだったのだが、なぜか杵屋は「準備中」の札が出ている。仕方ないので「和幸」でヘレカツを夕食に摂るが、今の体調ではいささか重い。
久しぶりのサントリーホール。今日の座席は二階の奥である。東フィルはチョン・ミョンフン指揮の回はチケットが高いのと、チケットを調達したのが直前だったからあまり良い席は取れなかったという次第。
東京フィルハーモニー交響楽団第907回定期演奏会
指揮:チョン・ミョンフン
フロレスタン:ペーター・ザイフェルト
レオノーレ:マヌエラ・ウール
ドン・フェルナンド:小森輝彦
ドン・ピツァロ:ルカ・ピサローニ
ロッコ:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ
マルツェリーネ:シルヴィア・シュヴァルツ
ヤキーノ:大槻孝志
お話:篠井英介
東京オペラシンガーズ
東京フィルハーモニー交響楽団、他
ベートーヴェン:オペラ『フィデリオ』(演奏会形式)
チョン・ミョンフンがタクトを取ると、東京フィルの演奏はピシッと引き締まる。特に最初のレオノーレ序曲に端的に現れていたが、ピアニッシモの緊張感はかなりのものがある。かなり輪郭のシャープな演奏である。
今回はオペラの演奏会形式と言うことだが、尺の関係もあるのか台詞部分はかなりカットしてあったので、事前にストーリーを知らなかったら話がつながらないような部分もあった。ただその分、音楽に集中することが出来るというか、ベートーベンがかなり劇的な音楽構成を持ってきているのがよく感じられた。いかにもベートーベン節というようなフレーズも随所にあり、ラストの合唱などは第九を連想させるような盛り上がりである。
オケの演奏も引き締まっていたが、独唱陣も堂々とした安定性でかなり密度の濃い演奏会となった。
ストーリーをつかみにくい場合があることを考えてか事前に解説が入ったのだが、それがやや冗長に感じられたせいか「早くしろ」というヤジが座席から飛ぶ一幕も。私も同じことを感じないでもなかったが、この行為はあまりに下品。プロ野球の試合じゃないんだから。どうも昨今は観客のレベルが低下している。これは偏に日本人自身のレベル低下を示しているように思われて仕方ない。
切り詰めたと言っても終了時には午後9時半を過ぎており、ホテルに戻ったのはかなり夜遅くになって。入浴をすると明日に備えてさっさと就寝するのであった。
☆☆☆☆☆
翌朝は8時に起床、ただし一晩中隣の部屋からの爆音いびきにさらされたせいでいささか睡眠不足感がある。こういうのは安ホテルのリスク。まあカプセルホテルよりはマシだが。
さて今日の予定だが、仕事は午後からである。だから午前中の内に上野の美術館を回っておきたい。朝食に買い込んでいたおにぎりを腹に入れると、9時にはホテルを出る。
平日だというのに上野は人で一杯。相変わらずのパンダ騒動は続いているようである。週末よりは修学旅行風の学生の団体が多いのは平日の特徴か。その人混みをかき分けて国立博物館へと急ぐ。
「名作誕生−つながる日本美術」東京国立博物館で5/27まで
世に「名作」と呼ばれる作品はいくつかあるが、それらは作者が突発的に作り出したというものではなく、先人の作品を参考にしたり触発されながらいろいろな創意工夫の元に生まれたものである。それらの背景も含めて名作を鑑賞するということらしい。
要は近しいテイストを持つ作品を概観したというような印象のある展覧会。最初は仏像から始まり、次は雪舟から始まる日本絵画。ここでは雪舟の作品を初めてとして伊藤若冲に至るまで名作がゾロゾロ。さらに工芸品を挟んで、山水風俗画といった構成になっている。
ラストで北斎から岸田劉生につなげていた辺りなどは観点が面白かったが、それ以外には特にどうこうというのはあまりなかったのが本音。単純に名作を堪能するだけで良いようである。
国立博物館を出た時にはやや微妙な時間。次に行くかどうか迷ったが、とりあえず行くことにする。
「プーシキン美術館展−旅するフランス風景画」東京都美術館で7/8まで
プーシキン美術館所蔵の17〜20世紀の風景画を展示。ジャン=フランソワ・ミレー辺りから始まって、モネら印象派を経てゴーガン、ルソー、ドニといった辺りまで。
結構一般受けしやすいタイプの絵画が多かったので、見ていて楽しめる展覧会である。作品のインパクトで言えば一番印象に残ったのはルソーの色彩鮮やかなジャングルの絵画か。
やはりこのルソーの作品はインパクト大
やや駆け足の見学となってしまった。この展覧会は関西への巡回もあるようなので、場合によっては関西でまたもう一回行くか。
これでプライベートでの予定は終了。後は仕事モードに切り替える必要があるが、その前に昼食である。遠くまで行く時間はないので「文化亭」でランチメニューを摂る。
さあこれから仕事である。ネクタイを締めると気持ちを仕事モードに切り替えて出張先へと移動するのである。ここまでの私はただの遊び人であるが、ここからの私は必殺仕事人である。
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