展覧会遠征 京阪編12
この週末は関西の3オケ回りである。まず第一弾は京都市響。仕事が終わると京都へ直行だが、途中で夕食を摂る時間がなかったため、ホール内でサンドイッチを買って急場をしのぐ。
京都市交響楽団第620回定期演奏会
オリ・ムストネン(指揮&ピアノ)
オリ・ムストネン:弦楽オーケストラのためのトリプティーク
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調op.37
シベリウス:交響曲第2番ニ長調op.43
オリ・ムストネンは作曲も指揮もするピアニストというところか。一曲目は自作曲だが、いかにも北欧的な響きのする曲。比較的分かりやすい曲である。
二曲目はムストネンの弾き振りだが、ベートーベンの古典色もあるこの曲を思いっきりロマン派寄りの演奏をしてきた。ムストネンのピアノがまたテンポの揺らしやアクセントの多用などが見られるかなり変則的なもの。濃い表情のある演奏だが、いささか表情過多のきらいが見られる。下品になる一歩手前というところ。
シベリウスになるとこのムストネンの表情付けがプラスに働く。無機質な演奏をすると子守歌になりかねないシベリウスの曲を、ムストネンはロマンチックかつダイナミックに演奏する。またところどころで明らかな溜をつくるのが特徴的。ただ最終楽章についてはやや急ぎすぎたようにも感じられた。
かなり表情のある演奏という印象だった。そう言えば以前にフィンランド・タンペレで聴いたロウヴァリの指揮もかなり表情が豊か(明らかに表情過多だったが)な演奏だったことを思い出した。もしかしてフィンランドの若手ではこういう表現がスタンダードなのか?
コンサートを終えるとホテルに移動だが、その前に夕食を摂りたい。気分は・・・ラーメン。そこで四条まで移動すると「一風堂」に入店する。もう10時頃だというのに店内は一杯である。私は白丸ラーメンにご飯と餃子をつける。
オーソドックスな豚骨ラーメンがうまい。そしてここの店は前から餃子がうまいのである。とにかく夕食としては気分にも合致していて満足の内容。
夕食を終えるとホテルにチェックインする。今日の宿泊ホテルはチェックイン四条烏丸。いつもの狭い和室である。とりあえず部屋に荷物を置いて着替えると、最上階の大浴場へ。露天風呂(と言っても空が見えるというだけだが)でゆったりとくつろぐ。最近は体が不調であちこちにガタが来ているのでこういう風呂がありがたい。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時半に起床したが、昨晩の就寝がやや遅かったこともあってやたらに眠い。とりあえずシャワーで目を覚ますがどうもシャッキリしない。結局は朝食を摂ってからホテルのチェックアウト時刻の11時手前まで部屋でグダグダと過ごすことになる。どうも最近は年齢のせいか体力の衰えが著しく、それが行動力の低下につながっている。昔のように朝からバリバリと行動すると言うことが出来ない。寂しい限りである。
ホテルをチェックアウトすると隣の烏丸御池まで歩く。今日の最初の予定はここで開催される展覧会。
「ターナー 風景の詩」京都文化博物館で4/15まで
イギリスを代表する風景画家であるターナーの作品を展示。
初期の作品から晩期の作品まで網羅されているが、初期の作品は特に精緻な水彩画が多い。これらはターナーのスケッチと記憶力によって作成されていると言うが、その緻密さには驚かされる。数点、実際の風景と併せて展示されている作品があるが、それらを見比べるとターナーはかなり正確に報道写真のように絵を描いているが、ただ強調したい力点はしっかりと加えてあることも分かる。職業画家としての側面と芸術家としての側面が同居しているようだ。
晩年になるとその芸術家としての側面が段々と前に出てくるようになる。精緻で緻密な絵画よりも、空気感や光を表現しようとしているかのような描写が増えてくる。手法としては異なるが、彼も印象派のような表現を目指していたのではと感じさせる作品がいくつか見られるようになってくる。この辺りが興味深いところ。
展覧会の見学を終えると京都を後にする。今日の予定はフェスティバルホールでの大フィルの演奏会。大阪に到着すると今日宿泊する予定のジーアールホテル江坂に立ち寄る。荷物を預けるつもりだったが、もう部屋に入れるとのことなので部屋に入って一休みする。やはり体力がかなり落ちている。
ホテルを出たのは2時頃になってしまった。慌てて途中の「ミンガス」でカツカレーを昼食にかき込むが食欲がイマイチ。体力どころか胃腸も衰えてきたか。
今日のフェスティバルホールはかなり客が多い。バッティストーニ人気だろうか。
大阪フィル第515回定期演奏会
指揮:アンドレア・バッティストーニ
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
最初から大フィルの音色がいつになく華々しくて派手なことに気づく。これがバッティストーニのカラーだろう。実際にバッティストーニの指揮は身振りも大きくかなり派手なもの。その指揮はイタリアものには見事に合致をする。大フィルも緻密で緊張感のある演奏は苦手であるが、こういう派手にバリバリやる演奏はカラーに合っているのか、いささか雑さも見受けられるものの、特に破綻もなくかなり快調な演奏であった。
コンサートを終えると近くの国立国際美術館の夜間開館に立ち寄る。
「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」国立国際美術館で5/6まで
現代アート勢揃いなのだが、昨今の傾向としては映像を駆使したものが非常に多い。しかしこの手の作品は延々と変化のない退屈な映像を見せられるだけで至って苦痛。
スマホの位置情報とダミーヘッド録音による音響効果を組み合わせた作品は、アトラクションとしては面白かったが、これは芸術的感慨とは全く無縁のもの。
結局は現代アートが完全にネタ切れで行き詰まっているという空気だけを感じさせられた。
マルセル・デュシャン様、あなたは怠惰な自称芸術家に格好の言い訳を与えてしまいましたね・・・というところか。正直なところ感心する作品は皆無。ハッキリ言ってあの程度の感性であの程度のレベルなら私でも芸術家になれるというのが率直な感想。今時の芸術家はユーチューバーよりも楽な仕事か。どうやってああいう仕事で食べていけるのかそのノウハウの方が作品よりも興味がわく。
夕食のために大阪第一・第二ビルの地下をうろつくが、心にあった店はことごとく予約で一杯。仕方ないので前にも立ち寄ったことのある「祭太鼓」でカツ丼を注文、これが今日の夕食となる。その後には「京都つる家茶房」にも立ち寄ってデザートにわらび餅を。
夕食を終えると江坂に移動、イオンに立ち寄って明日の朝食を購入してからホテルに戻る。部屋に入ってしまうと完全にダウンする。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時半に起床すると、先日買い込んでいた朝食を済ませる。このホテルにもレストランがあって朝食もあるのだが、残念ながらイマイチ美味くないのである。だから最近は朝食はイオンで購入して素泊まりするパターンが多い。
今日は10時に大阪ステーションシネマでMETライブビューイングを鑑賞予定。出し物は「トスカ」である。それに合わせてシャワーを浴びたり身支度を済ませるとホテルをチェックアウト。江坂から大阪は地下鉄一本なのでアクセスが良い。
「トスカ」METライブビューイング
指揮:エマニュエル・ヴィヨーム
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:ソニア・ヨンチェヴァ、ヴィットーリオ・グリゴーロ、ジェリコ・ルチッチ、パトリック・カルフィッツィ
蒼々たる実力者の揃った鉄壁の布陣で鉄壁のトスカというところ。悪党・スカルピアの堂々たる悪っぷりが話を引き締める。惜しむらくは、妖艶な美女・トスカが、アップになると年齢が高すぎることと恰幅が良すぎることが目についてしまうというオペラ特有の問題。
やはり視点はロング固定の方が落ち着くように思えるのだが・・・。
映画館を後にすると西宮に移動する前に阪急の地下で昼食を摂ろうと考える。しかし1時を回っているのにどこの店も大行列。待っている暇はないので、恐らく行列はないだろうと推測して「江戸川」に行ったのだが、ここでも待ち客がいて5分ほど待たされる。全く最近の大阪・京都はどうなってるんだ?
江戸川では鰻重を注文。私は蒸した柔らかい関東式鰻も食べるのだが、今日の気分としてはパリッとした関西式鰻の方が良かったか。どことなく物足りなさを感じる。
昼食を終えると西宮に移動する。場内は満員のようで当日券も売り切れの模様。下野・三浦の組み合わせに期待している客も多いのだろう。
PAC第103回定期演奏会
指揮/下野 竜也
ヴァイオリン/三浦 文彰
管弦楽/兵庫芸術文化センター管弦楽団
ジェームス・マクミラン : ブリタニア
ブルッフ : スコットランド幻想曲 op.46
メンデルスゾーン : 交響曲 第3番 イ短調 op.56 「スコットランド」
一曲目は演奏後に下野自身が語っていた通りの「変な曲」。狂信的な愛国心に対するパロディを含んだ曲だそうな。確かに今の時代には合っている。
二曲目は三浦のバイオリンはテクニック的には問題ないのだが、音色がやや繊細で無機質な印象がある。幻想曲と言うにはもう少し情緒が欲しい。
三曲目は下野の指揮の意図はよく分かるのであるが、オケの方がその要求に完全に応えていたとは言い難い面が散見された。このオケの弱点であるアンサンブルの甘さが随所に出てしまった感があり、若干精彩に欠けた。
お約束の通りにアンコールは「真田丸」、それに加えて「西郷どん」も。いずれも下野が指揮をした曲であり、本人によるPRもあり。しかし演奏も場内もこの大河シリーズが一番盛り上がっていた印象。
この日のアンコール曲
二曲目が終了した後にソリストアンコールがなかったから、場内は「えっ?ないの?」という雰囲気だったが、三曲目終了後に三浦がバイオリンを持って現れた次第。下野によるとこのためにソリストアンコールがなかったとのこと。結局はこれが本コンサートのメインイベントだったかも。
「真田丸」でバイオリンソロを演奏した三浦は「西郷どん」では第一バイオリンの末席に加わって演奏。しかし彼だけボーイングが他の奏者と違っていたのが目立った。やはりいくら上手い演奏家でも、いきなりだとボーイングは合わないものなのかと妙なところに感心。
これでこの週末の予定は終了、帰宅と相成った。
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