展覧会遠征 神戸編16
今日から三連休の初日であるが、まずは神戸の美術館を訪問することにした。と言っても今日は連日の灼熱地獄の中。こんな中を歩き回るのは堪らないので車で行くことにした。
神戸に到着したのは昼過ぎ頃。まずは美術館に立ち寄る前に昼食を摂ることにする。立ち寄ったのは六甲道周辺の老舗洋食屋「自由軒」。幸いにして2台しかない駐車場が空いていたので、車を置いて入店する。店内は12席ほどのカウンターのみ。お世辞にも綺麗とは言い難い店である。「ビフカツ(1200円)」を注文して、これにご飯をつける。
出てきたビフカツが、揚げたビフカツを切ったものではなく、最初に肉を切った状態で衣をつけて揚げているのが珍しいところ。この方が固まり肉である必然性がないのでコストを抑えることが出来るか。揚がり具合もちょうど良く、ソースの味もまずまずでなかなかのものである。普段使いの洋食屋としては申し分ない。どうやら出前もしているようだし、近くにあればちょくちょく立ち寄るというタイプの店。こういう店が我が家の近くにあればな・・・。
昼食を終えたところで兵庫県立美術館へ向かう。しかし美術館の前になぜか車列が。どうも駐車場が満車で空きを待っている車列の模様。「なぜこんなに?」と驚くが、仕方ないのでここで30分以上待つことに。しかしようやく順番が回ってきて車を置いてから入館すると、今度は券売所の前で行列。ここではさらに10分ほど待たされる。この美術館がこんなに混雑しているのを見るのは初めて。
推測してみるに、「怖い絵展」というタイトルがキャッチーだったのではないかと思われる。このような展覧会タイトルにされると、私のような常習的に美術館を訪問している者は「一体どんな絵が展示されるのかサッパリ分からん」とむしろどん引きしてしまうのであるが、そうでない者にとっては逆に怖いもの見たさで興味を惹くのだろう。恐らく夏休みで絶叫マシンにでも乗りに出かけるノリで出向いている輩もいるのでは。明らかに場違いな雰囲気のカップルや家族連れなども多数いたことからも、この推測が裏付けられる。
「怖い絵展」兵庫県立美術館で9/18まで
恐怖を主題にする作品を集めたとのことで、展示作は地獄や悪魔などを描いた作品から、社会的な事件を描いたもの、歴史的な出来事を描いたものなど様々。もっともタイトルから想像するような残酷描写のもの、もしくはグロテスクな作品などはほとんどない。
何をもって恐怖を主題にしていると判定しているのかが非常に曖昧。ルドンの不思議系絵画から、社会風刺的な版画、果てはターナーの風景画まで含まれているのは非常に疑問を感じる。正直なところタイトルだけに乗せられてやって来ると、完全に肩透かしを食らうのではなかろうか。
個人的にはルドンの作品やファンタン=ラトゥールの作品などが含まれていたのが見所か。ただ全体としては展覧会の印象は薄い。
どうも正直なところ、企画のあざとさだけが目について不快。そして何より、館内が大混雑で作品の近くに寄ることさえ困難という最悪のコンディション。ここまで最悪のコンディションはこの美術館どころか東京でも滅多に経験したことがない。まあ美術館としても観客動員を増やすために企画に工夫が必要だが、この手の虚仮威しはどうであろうか? 今回の来館者のここでの美術館経験が今後につながれば良いが、私にはそうなるとは思いにくいように感じられた。
それにしても恐怖というコンテンツは観客を引き寄せるらしい。遊園地などでも絶叫マシンは大人気だし、ホラー映画なども量産されている。とは言うものの、いずれも自分は絶対の安全が確保されていて、なんちゃって恐怖を感じるというのが最大のポイント。頭のいかれた馬鹿以外は、まさか実際に実弾や爆弾が飛んでくる真の恐怖なんて感じたくはなかろう。しかし今の権力者共は、国民は戦場の真の恐怖の中に突き落として、自分たちは安全な場所でなんちゃって恐怖を楽しもうとでも考えているようである。
美術館で想定外の時間の浪費と体力と精神力の消耗をしてしまった。後は風呂にでも立ち寄って帰ることにしたい。久しぶりに六甲おとめ塚温泉に立ち寄ることにする。
相変わらずの趣味が良いとは言い難い外観の建物だが、人気の方も相変わらずでまだ4時頃だというのに既に大勢の客が押しかけている。入浴料の420円を払うと、奇跡のような炭酸泉を露天風呂でタップリ味わう。若干のヌルヌル感があるのは炭酸水素塩によるものだろう。体にかなり泡が付くのはいつものことである。それにしてもこのような素晴らしい温泉銭湯が近くにある近所の人々はうらやましい限り。
久しぶりの上質な湯を堪能すると、帰宅の途についたのである。炭酸泉のおかげでいささか血の巡りが良くなったのか、心なしか体が軽くなったように思われた。
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