展覧会遠征 大阪ライブ編20

 

 今日は大阪でフィンランド・タンペレ・フィルの演奏会。仕事場を出るのが少々遅れたので大阪に慌てて駆けつけ、毎度のように上等カレーでカツカレーをかき込んでからホールに急ぐ。

 

 ホールのロビーでは、ムーミンやシベリウスに関する小展示がなされており、フィンランドフェア状態。あわよくば観光売り込みをという考えもあるのだろう。

 ホール内は3階の座席は使用していない模様。一階席は中央付近はほぼ埋まっており、二階席は3割程度というところ。

 


フィンランド・タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団 日本ツアー大阪公演

 

[指揮]サントゥ=マティアス・ロウヴァリ

[ヴァイオリン]堀米ゆず子

[管弦楽]フィンランド・タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団

 

シベリウス:交響詩「フィンランディア」 op.26

      ヴァイオリン協奏曲 二短調 op.47

      交響曲 第2番 二長調 op.43

 

 フィンランディアの冒頭から金管がやや雑な感じの鳴り方をしたので、これは大丈夫か?と心配になったのだが、どうやらそういう鳴らし方をしていた模様。この後のさざめくような分厚い弦はなかなかの聴かせどころ。やや変則的な雰囲気のフィンランディアで、北欧の霧深い森ではなく、北極海の荒々しい波を思わせる演奏である。

 ロウヴァリは華奢な印象の若者。スラッとした長い手足を駆使して、まるで現代舞踏のような独特のスタイルの指揮を行う。その演奏は、微妙な溜やら急激な強弱やら結構仕掛けが多い。それでも演奏が破綻しないのはご当地ものの強みか。

 二曲目の協奏曲は、堀米のバイオリンがやや線が細い上に表情が薄く聞こえる。バックのロウヴァリはかなり劇的な演奏をしているので、そのギャップがどことなくしっくりいっていない印象につながる。

 メインの交響曲2番はロウヴァリの演奏の特徴がかなりハッキリと現れている。とにかく表情が豊かで細かい仕掛けが多い。これらの仕掛けは各所部分部分では面白さにつながることもあるのだが、ただ大きな音楽の流れとして聴いた時に逆にそれをぶった切ってしまっている感覚がつきまとう。局所最適化が必ずしも全体最適化につながっていないのである。若気の至りというか、明らかに表現過多であり、音楽の流れに身を任せようとすると途中でつんのめってしまうような不快感がある。

 それがさらに端的に現れたのがアンコール一曲目の「悲しきワルツ」。溜などの表現が強すぎるせいで音楽がぶつ切れになっており、悲しさ以前にワルツとして聞こえない。

 むしろアンコール二曲目のカレリア組曲からの行進曲の方が、オーソドックスにあまりテンポをいじらずに演奏しており、音楽としては気持ちよく聞こえた。


 昨年のラハティに比べるとオケ自体の技倆はこちらの方が高いように感じられた。ただオッコ・カムのオーソドックなように聞こえて深い感動を巻き起こす演奏の境地に至るには、ロウヴァリにはまだまだ経験が必要なようだ。

 

 観客には結構多くのフィンランド人が来ていて、フィンランド国旗を振り回している連中もいるという楽しい雰囲気。ところで入場していた日本人客のほとんどが感じたことは「大阪にあんなにフィンランド人っていたんだ」という驚きだろう。

 

 

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