展覧会遠征 阪奈編
この週末は大阪地区で開催されるコンサートに出かけることにした。まずは土曜の大フィルの定期演奏会。土曜の昼頃に家を出る。
昼食は新装オープンとなったフェスティバルゲートの地下で摂ることにする。「鳥料理藤よし」に入店。日替わりランチで豚の生姜焼きを注文。なかなか美味い。これで1000円だったら結構使える。
昼食を終えるとホールに入場する。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第508回定期演奏会
指揮/ウラディーミル・フェドセーエフ
曲目/ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
:交響曲第1番 ハ長調 作品19
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64
フェドセーエフは爆演型指揮者のように言われることがあるが、決してそれは正しくはない。実際は結構細かいところに気を回して鳴らしてくる指揮者である。それは一曲目のオベロンに端的に現れている。ここでのフェドセーエフはかなりロマンチックにゆったりと鳴らしてくる。
二曲目の交響曲第一番は、作曲者のウェーバー自身が「若気のいたり」という類の評価をしているように、やや構成的に散漫さが見られる曲。ここでフェドセーエフはこの曲をオペラの序曲のように聞かせている。こうして聞くと、確かに欠点もあるがロマンチックななかなか魅力的な曲である。
最後のチャイコフスキーの5番はフェドセーエフの十八番中の十八番。流石に余裕の演奏だが、ここではタップリと艶っぽく聴かせてくる。私は大フィルがこんなに艶っぽい演奏をするのは初めて聴いた。決して自らの手兵ではない大フィルの音色をここまで変化させるのだからフェドセーエフ恐るべしだ。そして最後まで決して煽ることなく、むしろゆったり目のペースで堂々と鳴らしてくる。しかしその演奏がとんでもなく「血湧き肉躍る」演奏となるのである。
終演後は大盛り上がりで場内は爆発的な歓声に包まれた。そういう点では確かにフェドセーエフは爆演指揮者であるとも言える。
コンサートを終えるとホテルに移動する。今回の宿泊ホテルは法華クラブ大阪。私が大阪地区で利用するホテルの中では最も高級ホテルである。どうも最近は仕事のせいか異常に体に疲労が溜まっていることもあり、良いホテルでゆったりと過ごしたいと考えた次第。高級ホテルは大阪東の歓楽街近くという非常に「環境の良い」場所に立地している。しかも部屋の窓から見える風景は向かいのパチンコ屋の建物(笑)。このホテルの良い点は朝食が美味いことと大浴場完備であること。
チェックインを済ませて大浴場で入浴して汗をながすと、夕食に繰り出すことにする。気分的には洋食を食べたかったのだが、残念ながら近くには洋食屋はない模様。仕方ないので近くの海鮮料理店「とも吉」入店する。
ドリンクはノンアルコールの梅酒ソーダを注文。料理は「カンパチの刺身」「鯛尽くし」「焼き岩ガキ」を注文。梅酒ソーダを頂きながら料理を待っていたら、ノンアルコールのはずなのに何となく酔いが回って来る。
酔いが回ってきたところでメニューに「カワハギの姿造り」があることに気付く。結構なお値段がする(2500円ほど)。しかし酔いが回ってきている私は勢いでこれに「車エビの刺身」を加えて追加注文。
後は怒涛のように食いまくる。美味い。魚の鮮度も良い。やはりカワハギは偉大だ。この肝のコッテリとしたたまらない風味。結局は夕食を堪能したのだが、支払いはカワハギが祟って6000円以上。やってしまった・・・。まあ週末のストレス解消ということにしておこう・・・。
ホテルに戻ると再び入浴して、この日は比較的早めに床につく。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時に起床。よく寝たはずなのだがやはりどうしても体がだるい。とりあえずシャワーで汗を流すと朝食に出向く。
朝食は法華クラブ名物大阪飯バイキング。串カツに土手煮等々。種類も豊富でなかなか美味い。朝からガッツリと腹にたたき込んでおくことにする。
朝食を終えると8時過ぎぐらいにチェックアウトする。事前の計画ではチェックアウト時限ギリギリまでホテルでグダグダするつもりだったのだが、急遽奈良に立ち寄ることにした次第。当初の計画では昨日のコンサートの前に奈良に立ち寄るつもりだったが、疲労でグダグダした挙げ句に家を出るのが遅れて寄り道の余裕がなくなってしまったせい。どうも万事この調子で現在は心身共に絶不調である。
JRと近鉄を乗り継いで奈良へ。近鉄奈良線に乗るのも久しぶりの気がする。奈良に到着するとバスに乗るのも面倒臭いので国立博物館まで歩く。しかし後で思えばこれが失敗。昨日から大量に汗をかいていささか脱水症状気味だったのが、ここでまた大量に汗をかいたことで悪化。博物館に到着した時点では頭がチカチカすることに。買い込んだ麦茶を大量に流し込んだがすぐには復活しない。
体調が万全とは言い難い状態で展覧会へ。
「快慶 日本人を魅了した仏のかたち」奈良国立博物館で6/4まで
鎌倉時代を代表する仏師で、運慶と共に東大寺金剛力士像などで知られる快慶の作品を集めて展示。
金剛力士像の印象が強すぎるせいで、快慶と言えば荒々しい仏像を作る仏師というイメージがあるが、実際はそれは正しくない。快慶の作品にはむしろ精緻で静謐さを感じさせるようなものが多い。彼の彫った釈迦如来像などは、まさに静けさを体現しているかのような作品である。
その一方で妙な生々しいリアルさを感じさせるのが彼の作品のすごさ。実際に仏像が静かに歩き出しそうな非現実的な感覚を湧き起こさせる。この造形の凄まじさは他の仏師にはなかなかに見られないものである。
半分ボンヤリとした頭であったが、それでもやはり快慶のすごさは改めて感じられた。作品からオーラが感じられ、強烈な存在感に胸を打ち抜かれた。
ついでに仏像館の方も見学していくが、いよいよしんどくなってきたのでザッと一回りしただけ。帰りに地下のミュージアムカフェで一服する。
体調は最悪。脱水症状の余波が残って体がだるい上に、一気にお茶を流し込んだせいで腹の具合も悪い。体が大量の水分を求めても、それを流し込んだら胃腸の方が受け付けられないようだ。これは本来は点滴でもするしかないのか。
カフェで一服した後は、今度はバスで近鉄奈良まで移動。ここから一気に西宮まで移動である。今日は西宮で開催されるフィルハーモニア管弦楽団のコンサート。
フィルハーモニア管弦楽団
指揮 エサ=ペッカ・サロネン
ピアノ チョ・ソンジン
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調
マーラー:交響曲 第6番 イ短調 「悲劇的」
ベートーベンのピアノ協奏曲についてはチョ・ソンジンのうまさが光る。見事なテクニックであるが、決して無機質にはならず歌うべきところではしっかりと歌う。
後半のマーラーの6番については凄まじいの一言。魂の咆哮のような凄まじいマーラーである。この曲はそもそもかなりドラマチックな曲であるが、それを叩きつけるような演奏で持ってきた。まさに爆演といったところ。指揮者の無茶ぶりにも近いような指示に100%応えているオケもなかなかの技倆だ。
ただ曲全体の2/3がフォルテッシモで突っ走った印象で、謂わば常にアクセル全開最大音量という内容。正直なところもう少し陰影が付いた方が感動的であったように感じられる。間違いなく熱演ではあるのだが、それが名演であるかとなれば少々疑問もあるところである。ガツンガツンと迫ってくる迫力はあるのだが、さらにもう一段深いところで魂を揺さぶられるような感触が欲しかったのが本音。
とりあえず場内の盛り上がりは凄まじかった。西宮でここまで万雷の拍手を聞いた経験は私にはない。それとも改装してから音響特性が少し変化したか? 何となく以前よりも響きが増したような気もする。場内が唸るような拍手で満たされ、拍手はオケ団員が引き上げても収まらず、いわゆる一般参賀あり。
戻る