展覧会遠征 京阪ライブ編
この週末は京都で開催される大学の同窓会に参加するついでに、京都と大阪地域のコンサートをはしごする事にした。
秋の京都は異常な人出で、京都駅は歩くのも困難なぐらいの状態。これでは風情もクソもあったものではない。私に言わせれば「秋の京都なんて来るもんじゃない」というのが本音。特にここ数年は外国人観光客まで増加したせいでとんでもないことになっている。
同窓会が開催されたのは京都駅近くのホテル。見覚えのある顔ぶれが揃うが、やはり「お互い年をとったな」というのが大きい。また老け方は人様々。イメージがほとんど変わっていない者もいれば、すっかり禿げ上がった後輩なんかもいる。また出世した者もいれば、うだつの上がらない者もいる(その筆頭が私なのだが)。まさに人様々である。
同窓会で旧交を温めた後は京都コンサートホールへ向かうことにする。コンサートホールはほぼ満席に近いぐらいの入り。なかなかの盛況のようである。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮/グスターボ・ヒメノ
Pf/ユジャ・ワン
管弦楽/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
曲目
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番 ト長調
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」
ユジャ・ワンのピアノは非常にハイテクニックを駆使したもので堂々たる演奏である。ただオケとの呼吸が今一つ合っていないように感じられ、どことなくオケがソリストに合わせるのに必死という印象を受けた。
さて悲愴だが、オーケストラは弦の密度も高いし、管も非常に安定しており実に良いサウンドを響かせている。しかし演奏の方については「なぜそのテンポで、なぜそのバランスで」というような疑問を常に抱かせるもの。一楽章などはもっと謡ってくれば良いのになぜかギクシャクした演奏になっているし、三楽章も今一つの緊張感不足である。また最終楽章はもっと切々とした情緒がほしいところ。全体的に張りつめた空気の全くない精彩を欠く演奏となってしまった。
オケは間違いなく超一流なのだが、そのスペックを生かしきれていなかったとの印象を強く受けた。まるで宮崎吾朗監督のアニメ作品のような残念感がある。
ユジャ・ワンは体のラインのはっきり現れた赤いミニスカートのドレスにかなり高いハイヒールで登場。一見したところまるでグラビアモデルのようなスタイルであったが、そのスタイルからは想像できないようなテクニシャンであった(この言葉を使うと彼女の場合は別の卑猥な意味に聞こえそうだ)。万雷の拍手に答えてアンコールを2曲演奏したが、そこではさらなるテクニックを披露しており、非常に挑戦的な印象を受ける演奏。2曲目のアンコール終了後でもまだ鳴り止まない拍手に、彼女はコンマスの手を引いて退場したのだが、これがまるでキャバ嬢と同伴しているオッサンみたいで何とも笑える光景。
ヒメノの指揮は、その若くてスラリとしたスタイルに流麗な腕使いなど、その指揮姿は非常に絵になる。しかし絵にはなっても、その演奏内容には疑問一杯である。スタイルよりも今後はもっとそちらに磨きをかけて欲しいところ。また彼の指示(?)とオケの演奏が必ずしもかみ合っているように感じられない部分が多々あり、極論すれば勝手に演奏しているオケの前で指揮真似をしているだけのように感じられることもあった。こんな感覚は西本智美の指揮以来である。
一言で感想を述べると「今回のライブはビジュアル系?」というところ。まあユジャ・ワンの方は実力も伴っているが。コンセルトヘボウのサウンドにはさすがと思わせるものがあったので、次回の来日ではもっと老練な指揮者で来て欲しいところ。コンセルトヘボウはそういう指揮者の方が合っている。
コンサートを終えると一気に腹が減ったのでホール近くの「進々堂」で夕食を摂る。いささか食い過ぎか。
今日の宿泊ホテルはホテルクレストいばらき。京都・大阪共に昨今のホテル価格急騰の上にそもそも予約が取れず、その中でようやく確保した妥当な価格で大浴場付きのホテルである。チェックインを済ませると大浴場で汗を流し、この日は早めに就寝する。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時頃に起床すると、レストランで朝食。ここの朝食は和定食だが、これがなかなかうまい。
朝食を終えると大浴場で朝風呂。今日は大阪のコンサートに出向くだけなので、チェックアウト時刻の11時ギリギリまで部屋でマッタリする。
ホテルをチェックアウトすると福島へ直行。昼食はいつもの「Da-Wa」でいつもの「1.5倍ステーキランチ(1300円)」をガッツリと頂く。どうも昨日から肉付いている。
食事を終えて一息ついたが、まだ開場時間まで30分ほどある。天気が良ければ公園のベンチでこの原稿の入力というところだが、今日は天候が悪いのでホールの前の庇の下でボンヤリと時間待ち。同様の者も結構大勢いる。なぜか急ぐ必要もないのに時間前からしっかりと待つ日本人の習性。
ようやく開場時刻になり入場。私はB席で二階の奥の方の席。会場内は8割程度の入りというところで、A席であまり良くない場所の席に空席が多いという印象。3階などの安い席はほぼ満員のようだ。
フィンランド放送交響楽団&諏訪内晶子
[指揮]ハンヌ・リントゥ
[ヴァイオリン]諏訪内晶子
[管弦楽]フィンランド放送交響楽団
シベリウス:交響詩 「フィンランディア」op.26
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 op.43
フィンランディアはこの国では国歌のようなものと言われるだけあって、オケにとっても特別な曲なのだろう。とにかく力の入った演奏。弦が少々濁ろうが、管が少々割れようがお構いなしでブイブイとやってくる。かなりの熱演と言って良い。
ヴァイオリン協奏曲は諏訪内の演奏がダイナミックレンジの広いなかなか聴かせる内容。オケにややがさつな部分も見られたが、全体としてはまとまっていた。
交響曲第2番はこれまた非常に力の入った演奏。しかもリントゥが煽りまくるので、オケが崩壊寸前のギリギリのところですっ飛ばすかなり緊張感のある演奏。聴かせるべきところはしっかり謳い、盛り上げるところは爆音爆速ですっ飛ばすというかなりメリハリの強い演奏であった。
リントゥの「オーケストラを掌握してコントロールしている」感が半端ではなく、ヒメノの演奏と対極的であった。オケ自体の能力は比べるべくもないのだが、それにも関わらず演奏としては今日の方が遙かに満足度の高いものとなっていた。指揮者の存在の重要性を改めて認識させられたのが今回である。
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