展覧会遠征 京阪編5

 

 この週末は大阪・京都でライブの連チャンである。まずは土曜の大阪のライブへ。

 

 昼前に家を出ると福島に昼過ぎに到着。ライブは3時開演なので、その前に何はともあれ昼食。今日は肉を食いたい気分なので「Da-Wa」「ステーキランチ1.5倍増量版(1300円)」を頂くことにする。

  

 なかなかのボリューム。やはりここのランチはCPが良い。福島はオフィス街のせいか、意外と昼食に適した店が多い。これで後はネカフェのような時間をつぶせる場所があれば完璧なんだが。

 

 ゆっくりと昼食を終えた頃には開場時刻となっているのでホールに向かう。


日本センチュリー交響楽団 第204回定期演奏会

 

[指揮]アラン・ブリバエフ(日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者)

[ギター]村治奏一

 

リムスキー=コルサコフ:組曲「見えざる町キテージと聖女フェヴローニャの物語」より

             第1曲・第2曲・第3曲

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 op.47

 

 一曲目はリムスキー=コルサコフの極彩色のオーケストレーションが冴えわたる曲。

 二曲目はギターのソロが非常に甘美な曲である。甘美ではあるが俗ではない。村治のギターはなかなかのテクニックであり、単なるミロシュの代演で収まる奏者ではないようだ。ギターの演奏を面白いと感じたのは初めて。

 三曲目はブリバエフの指揮が炸裂している。彼の指揮はかなりメリハリの効いたダイナミックなもの。テンポなども非常に大胆に細かく振ってくるんだが、オケがそれによく追随している。以前の時にも感じたのだが、センチュリーはブリバエフが振ると演奏の技術レベルが1ランクアップするような印象がある。


 なかなかの快演であった。ちなみに今回のライブを聴きに来ようと思った第一の理由は、アランフェス協奏曲は今まで聴いたことがないので一度聴いてみたいと思ったこと。それと第二は、以前にブリバエフ/センチュリーの組み合わせが結構面白かったので、ショスタコで再確認してみたかったこと。結果としてはいずれも大正解であった。

 

 なお私の席は前から4列目というあまり良いとはいえない席だったが、アランフェスに関してはホールの後ろだと電気的に増幅したギターの音色を聴くことになるので、この席が大正解だった。

 

 ただ一つだけ気になったのは観客の入り。今日の入りはせいぜい3〜4割というところで、はっきり言ってガラガラだった。センチュリーが定期演奏会を2日制にしたのは今年からだと聞くが、この入りだと経費がかかるだけで割が合わないのではないか。来年も2日制をとるようだが、大丈夫なのか? ちなみに来年度のスケジュールは既に発表されているが、私個人としてはラインナッブにあまりに魅力を感じず、恐らく来年度はセンチュリーのライブはほとんど行かないと思う。

 

 ライブを終えると明日に備えて京都に移動である。今晩は京都で宿泊する予定。ただホテルに着く前に一カ所美術館に立ち寄る。

 


「琳派からの道 神坂雪佳と山本太郎の仕事」美術館「えき」KYOTOで11/29まで

 京都は琳派400年記念で琳派一色であるが、その一環の展覧会。近代琳派の巨匠・神坂雪佳の作品と、琳派に対するオマージュ満載の山本太郎の作品を展示。

 神坂雪佳の作品はいかにも琳派的な装飾的な絵画でありながら、独特のホワンとした雰囲気が暖かい。

 一方の山本太郎の作品はパロディ精神に満ちている。明らかに琳派の伝統を踏まえた描き方をしながら、そこに描かれるのはマリオとルイージの「風神・雷神」など。松林の絵にはガードレールが入っているしといった次第。しかし今時なら琳派もこうなってしまうのかと妙に説得力があったりする。


 それにしても毎度のことながら、この建物は来る度にストレスを感じる。とにかく動線設計が無茶苦茶で使いにくいことこの上ない。エレベータは満員で乗れず、エスカレーターはてんで滅茶苦茶な場所につながっているので、目指している場所にたどり着くのにとにかく無駄に歩かされる。ここまでひどい動線設計をする建築家が安藤忠雄以外にもいるということは私にとっては驚きであり、激しい絶望感を抱かされる。現代建築とは使い物にならない巨大なガラクタを生み出すのが仕事なのか?

 

 ついでに夕食を摂っていこうかと思ったが、最上階のレストランはどこも大混雑。「美々卯」でうどんでも食べようかと思ったのだが、なぜか店内には空席があるのに表には大行列である。意味が分からない。アホらしくなったので、とりあえず夕食は後回しにしてホテルに向かうことにする。さて今日の宿泊ホテルだが、祇園にあるルーマプラザ。これは私としては初めてのカプセルホテルの使用である。諸々のことから私は今までカプセルホテルを避けてきたのだが、さすがに昨今の京阪神地域におけるビジネスホテルの価格相場の異常な上昇を考えると、毎回ビジネスホテル宿泊というのでは財政的に厳しくなってきた。そこでカプセルホテルというものが果たして使い物になるかどうかのテストケースである。

 

 京都から祇園への移動だが、地下鉄だと遠いし、京阪に乗ろうと思うと奈良線で東福寺に行く必要がある。考えた末、結局はバスで河原町まで移動することにする。しかしここで忘れていたのは今は「秋の京都」であるということ。もう既に日は沈んでいるというのに道路は車で一杯で、目的地に到着するまでにバスはかなりの時間を要することになる。

 

 ようやく河原町で下車すると夕食を摂る店を物色しながら祇園方面に歩く。すると途中で「美々卯」を見かけたのでそこに入店する。やはり先ほどの駅ビルで待つ必要などなかった。注文したのは「美々卯御膳(2106円税込)」

 オーソドックスで普通に美味い和定食。しかもうどんはさすがだ。ここで「御膳でなくてうどんをガッツリ食べても良かったな」と少々後悔。

 

 夕食を済ませるとデザートでも欲しいと「都路里」を覗くが、何と階段にズラリと行列が出来ている。諦めてホテルにさっさと入ることにする。

 

 ルーマプラザはビルの3階にある。ここにフロントとロッカーがあり、館内着に着替えて階段で2階のカプセルホテルに行く形式。また6階にサウナや風呂があり、そこから5階に降りるとレストラン、さらに4階に降りるとマッサージ室や仮眠室という構成になっている。また屋上にも塩サウナと露天風呂がある。

 風呂はさほど大きいというほどではないが、設備が一渡り揃っていてなかなか快適である。ここでサッパリと汗を流すと、5階のレストランでかき氷でクールダウンしてからカプセルに向かう。

 

 さてカプセル内部だが、ここのカプセルは比較的広いらしく、私自身が閉所恐怖症を有していない(と言うか、ガキの頃から段ボール箱に入って遊ぶのが大好きで、前世がハムスターと言われるくらいむしろ閉所とは相性がよい)ために圧迫感は意外とない。ただやはりどうしても上下左右からのドカドカという音はいくらか聞こえる。もっともこれについては私の使うクラスのビジネスホテルはいずれも壁が薄いので、それと大差があるかと言えば疑問なところ。ただ一番難儀なのはやはり室温か。異常に暑がりのせいで肌寒いぐらいの室温を好み、ビジネスホテルではこの時期でも大抵は冷房をかけて眠る私には、一般人の感覚に合わせたカプセル内の気温はやや暑苦しい。また上段カプセルにしたら、意外と出入りが大変。次の時には下段にしよう。

 

 暑さと下及び横から聞こえてくるいびきの音がやや不快。もっともそれらは元より想定済みというわけか、カプセル内には耳栓まで配備してある。とりあえずそれのお世話になって就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半頃に起床のつもりだったが、それよりも早い時間に回りのカプセルがドタバタガタガタ始めたので目が覚めてしまう。それでも意地でも7時半まではカプセルの中で横になっている。

 

 7時半になって活動開始。ゴソゴソとカプセルから出たところ、ほとんど全員出払っている。みなさん活動がお早いようで。とりあえず朝風呂で目を覚ますとレストランで朝食。カプセルホテルの朝食ということで全く期待していなかったが、予想に反して存外まとも。少なくともこの前のスーパーホテルよりは数段立派。

 

 あまり早く出かけても仕方ないので、9時頃までは再びカプセルでゴロゴロとすごし、チェックアウトしたのは9時半過ぎ。ふと見ると「都路里」は10時開店なのにもう既に開店待ちの客が。こりゃ駄目だ。

 

 今日の最初の目的地は京都市美術館。祇園からバスで移動する。今はまだ朝の早めの時間のせいか、途中で何カ所か引っかかったもののバスは概ね順調に走行する。

 


「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち−世界劇場の女性−」京都市美術館で1/5まで

 

 フェルメールとレンブラントというように銘打っているが、実のところは彼らの作品は一点ずつ。しかもフェルメールの作品の方は今ひとつパッとしない作品で、有名な「青いターバンの少女」のような強烈なオーラは感じられない。こういう作品を見ているとやはりフェルメールはただ一人傑出した画家というわけではなく、あくまであの時代のオランダ絵画の流れの中の一人だということが痛感される。

 一方のレンブラントの方であるが、これはたった一点にもかかわらず、これが完全に他から群を抜いていて明らかに目を惹く作品。実のところ私はこの作品がレンブラントの作品だということを知らずに「すごい作品があるな」と感じて、作者を確認したらレンブラントだったという次第。

 オランダ絵画のまさに黄金時代に当たる作品を概観できる展覧会。実際のところ、上記の二人以外にもかなり目を惹く作品は多々ある。精密絵画系が嫌いでないなら一見の価値はある展覧会である。


 京都市美術館の見学を終えると、向かいの京都国立近代美術館へ。ちなみに先ほどの半券を持参すると入館料が団体料金に割引される。


「琳派イメージ展」京都国立美術館で11/23まで

 琳派は400年前に確立したスタイルであるが、今日に至るまで多くの芸術家に影響を与えている。そのような琳派の影響を受けた絵画、工芸、版画、ファッション、グラフィック等多彩な分野の作品を紹介。

 紹介される作品は実に多彩であるが、これが琳派かと言われると微妙な作品もないではない。ただその中で最も私の印象に残ったのは加山又造の大作屏風絵。確かに琳派的な装飾スタイルを受け継ぎながら、強烈な彼らしさが炸裂した作品。

 これ以外では工芸系の作品に意外と面白いものがあり。尾形乾山を思わせるような作品から、いかにも近代陶芸作品まで多彩。


 次の目的地へ移動する前に、美術館内の「cafe de 505」トマトソースのパスタを昼食として頂くことにする。悪くはないのだが、私の好みからするとトマトソースがやや酸っぱすぎか。

  

 昼食を終えると次の目的地へ。どこにするか迷ったが、バスで京都国立博物館に行くことにする。しかしこのバスが途中で渋滞に捕まって進まない。結局はかなりの時間を浪費することになる。

 

 ようやく到着した博物館は大勢の観客で満員である。残念ながら美術品鑑賞の条件としては最悪に近い。


「琳派 京を彩る」京都国立博物館で11/8まで

 

 他の美術館が「琳派の現代」という視点の展示が多いのに対し、本展は真っ向から正統派で、琳派の祖である俵屋宗達から、それを受け継いで琳派スタイルを確立した尾形光琳、さらにそれらの伝統を受け継ぎながら独自の展開を図った酒井抱一などの琳派の歴史を追った展示である。

 一番の展示の目玉は宗達、光琳、抱一の風神雷神図屏風の揃い踏み・・・のはずだったのだが、残念ながらこれが実現するのは後期展示の模様。私の訪問時には抱一は別の作品の展示であった。宗達の力強い風神雷神に対し、光琳のものはより明快で装飾的になっており、ある意味で最も琳派らしい印象を受けた。

 またやはり面白かったのは工芸作品。やはり琳派は工芸装飾と極めて相性が良い。なかなかに唸らせられるような作品が多かったのである。


 鑑賞を終えて表に出ると、謎の灰色の虎キャラが闊歩していた。何だと思えば、光琳の「竹虎図」を元にした本展の公式キャラ・トラりんだそうな。今時は何でもありだな・・・。ちなみに私が何かキャラをデザインするとしたら、円山応挙の「虎図」をモチーフにして・・・駄目だ、これだとトラりんでなくてネコりんになってしまう。

 博物館を出た時にはもう時間的に大分余裕がなくなっていた。これは直接にホールに向かった方が良さそうだ。まずは京都駅まで移動だが、ここからバスに乗る気も起こらず、キャリーを引っ張りながら京都駅まで早足で移動することにする。距離的にはそう大したこともないのだが、キャリーを引いての移動は意外としんどい。

 

 京都駅からは地下鉄でホールに向かう。ホールに到着した時には開演30分前であった。


小林研一郎× 京都市交響楽団supported by ゼロホーム

 

指揮/小林研一郎 

Pf/小林亜矢乃

管弦楽/京都市交響楽団

 

チャイコフスキー :エフゲニー・オネーギン〜ポロネーズ

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

チャイコフスキー:交響曲第4番

 

 一曲目はややゴチャゴチャした印象の演奏になってしまっていた。

 ラフマニノフはピアノの小林亜矢乃がなかなかの熱演。力強い演奏である。彼女は指揮者のコバケンの長女とのことだが、さすがに呼吸を心得ているようだ。

 最後はコバケン節が炸裂のチャイコの4番。例によっていろいろと歌わせてくるが、やはり基本が演歌である。ラストは超アップテンポの怒濤のフィナーレで盛り上げる。もっともやや俗な演奏とも言える。


 これで本遠征の全日程は終了、地下鉄でJR京都に戻るとそこから新快速で家路に・・・のはずだったのだが、何と今日の強風で架線に飛来物がからんだとのことで現在は快速と新快速が休止中、いつ京都駅にやってくるか分からない状態とのこと。延々とホームで待つのもしんどくさいし、どうせ列車がやって来ても息も出来ないぐらいの満員になるのは見えているし(既にホームは人であふれかえっている)、諦めて新幹線で帰宅することにする。全く無駄な出費だ・・・。

 

 結局はコンサートを2日間で梯子しつつ、琳派一色に染まっている京都の美術館を回ってきたというのが今回の遠征。なおカプセルホテルについては、意外と使えるなという印象。ただ運が悪ければ熟睡とはいけない危険性がある。実際に今回も近隣のいびきのせいで夜中の三時に一度中途覚醒しており、朝もやや疲労感が残っている状態であった。さすがに連泊だったらキツいだろうな。

 

 

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