展覧会遠征 大阪・西宮編2

 

 ようやく風邪は治ったが、体調はまだまだ本調子からほど遠い。それにも関わらず次々と襲来してくる仕事の山に心身共にクタクタである。こうなったらこの週末は気分転換をしたい。というわけでライブに繰り出すことにした。

 

 金曜日の仕事を終えると直ちに大阪に直行する。福島「やまがそば」で夕食にカツ丼定食を食べる。

  

 いかにもそば屋らしいカツ丼にオーソドックスな温蕎麦のセット。ここの蕎麦はそば粉7割とのことなので、いわゆる二八そばよりもさらに少ないことになる。と言うわけで、そばについては私はもっとそば粉の風味のある方が好み。

 

 手早く夕食を終えるとシンフォニーホールへ急ぐ。

 


大阪交響楽団 創立35周年記念シリーズ 第194回定期演奏会【自然・人生・愛〜マーラーとそのライヴァルたち3】

 

[指揮]寺岡清高(大阪交響楽団常任指揮者)

[管弦楽]大阪交響楽団

 

アントニン・ドヴォルザーク:

交響詩「水の魔物」op.107

交響詩「真昼の魔女」op.108

交響詩「金の紡ぎ車」op.109

交響詩「野鳩」op.110

交響詩「英雄の歌」op.111

 

 ドボルザークの交響詩を一気に5曲演奏するという意欲的なプログラムである。

 ただ演奏に関してだが、これはいきなり驚かされた。開始冒頭から弦はグダグダ、管はフラフラ。これではどうなることかと心配になる。どうも各人の音程が合っていない印象を受ける。その後、弦はどうにかある程度立て直したようだが、管の不安定さは相変わらず。何より演奏がハーモニーにならずに音がグチャグチャしている上に音色が濁っている。

 アンサンブルがある程度まとまったのは休憩後の後半2曲になってから。弦がなんとか揃ってきて、爆音で鳴らしていただけの管もようやく音が落ち着いてバランスがとれるようになってきた。とは言うものの、レベルが高いとは言い難いところ。

 結局は演奏の不安定さの方に気が行ってしまって、残念ながら音楽全体を楽しめるという状況ではなかった。


 演奏会を終えると宿泊ホテルに向かう。今日の宿泊ホテルは大阪の定宿の一つホテルクライトン新大阪。大浴場でさっぱりと汗を流すと12時過ぎには眠りにつく。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 疲れているので結構爆睡していた模様。朝の8時に目覚ましで起こされると、シャワーで汗を流してから朝食に向かう。ここのホテルは今まで何回か宿泊しているが、早朝の大阪空港の便に乗るためのことが多かったので、朝食を摂ったことは意外と少ない。ここの朝食は品数はそう多くはないが、焼きたてパンがあったりなど内容は悪くない。ガッツリと食べておく。

 

 朝食後は部屋でゆっくりとして10時過ぎにチェックアウトする。今日のライブは西宮で午後3時からなので時間がある。それまでに美術館に立ち寄ることにする。


「堀 文子 一所不住・旅展」兵庫県立美術館で6/7まで

 80年に渡って画業を重ねてきた日本画家・堀文子の作品を集めた展覧会。

 展覧会のタイトルにもあるように、彼女の作品について特徴的なのは「変化」。一カ所に落ち着いてしまうと刺激がなくって駄目になるとの考えから、彼女は一生を通して常に積極的に旅に出ているのだが、その旅ごとに作風に変化があるのが特徴である。

 初期はいかにもモダンを意識した日本画を描いており、挑戦的で意欲的である。またこの頃から彼女が本質的にカラリストであることは作品に現れている。

 最初に画風が一変するのは渡欧後、都会を離れて大磯に転居した時期である。この頃には伝統的な日本画に回帰した時期で、日本の風景を抑えめの色調でしっとりと描いた作品が登場する。

 しかし彼女はここで安住せずに、イタリアにアトリエを構える。そこでまた画風が一変、かつての鮮やかな色彩が再び前面に現れるようになってくる。

 晩年になって病で倒れた後は、彼女の旅は小さな世界に向かうようになり、顕微鏡で見た微生物などの新たな世界に展開するようになる。自然に対するまなざしと彼女独自の華麗な色彩と言った集大成の世界がここに現れている。

 とにかく年代によって画風が一変するのだが、常に一貫しているのは自然に対しての強い執着と独自の色使いである。絵本原画なども手がけているが、本画作品が結構尖っているのに対して、こちらにはそれらの姿勢が非常に柔らかい形で現れていてまた面白い。

 独特の存在感があり、なかなかに魅力的な画家である。



「神戸の歴史とアートの旅 −近代化の轍(わだち)−」BBプラザ美術館で6/14まで

 阪神電鉄の沿線開発の歴史と、それと共にこの地域に花開いた文化について紹介。

 当時の風物などが展示されているが、それを見ていると神戸の「モダン」というイメージがこの頃に確立されていることが納得できる。新しいものを取り入れる進取の気風は現在よりもこの時代の方が強かったようである。私の生まれる前の時代の事物ばかりなのだが、それにも関わらずどこか懐かしさがある。


 美術館の見学を終えると阪神石屋川駅近くの「とんかつ富義」「とんかつA定食(1030円)」を頂く。

 いかにも昼食を頂くのに適した店という印象。オーソドックスな内容だがカツ自体はうまくて不満なし。

 

 昼食を終えると石屋川から今津を経由して西宮北口へ。ホールに到着したのは開演時間の1時間ほど前。

 


チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送交響楽団)

 

指揮 ウラディーミル・フェドセーエフ

ピアノ 小山実稚恵

管弦楽 チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ

 

■プログラム

<オール・チャイコフスキー・プログラム>

イタリア奇想曲 op.45

ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23(ピアノ:小山実稚恵)

交響曲 第5番 ホ短調 op.64

 

●アンコール曲

スヴィリードフ:「吹雪」から ワルツ・エコー

ハチャトゥリアン:「ガイ―ヌ」から レズギンカ

チャイコフスキー:組曲「白鳥の湖」から スペインの踊り

 

 もう冒頭のトランペットからグッときた。決して派手ではないが安定感のある響き、さらに低重心で非常にまとまりのある弦。バイオリンがすべて一つの音に聞こえるのはさすが。昨日てんでバラバラのを聞いた直後だけに、「ああ、そうそうこれが正しいんだよね」と妙に再確認。

 小山実稚恵のピアノについては、ダイナミックで力強くあるのだが、やはり妙に音色が硬質なのが気になるところ。今回は曲の性質から叩きつけるような打鍵がさらに多くなり、高音などは特にキンキンという印象になる。これで彼女の演奏は3回目ということになるのだが、やはりどうも硬質すぎる音色が私には今ひとつ合わないような気がする。もう少し音色に色気があれば良いのだが。

 チャイ5はドッシリと低重心で緻密なアンサンブルでグイグイと押してくる。とてつもない爆発力を秘めたオケを制御して、落ち着いた重厚なサウンドを引き出しているような印象である。

 と思っていたら、その爆発力をアンコールで思いっきり解放してきた。今回は異例の3曲アンコールだが、1曲目はコンマスがソロで技量を見せつける短編、2曲目以降が打楽器と管楽器が爆発的サウンドで大暴れする曲。演奏する側が思いっきり楽しんでいるのが伝わってくるような熱演であった。オイオイ、あまりに元気すぎだろうと言いたくなるぐらいのパワーだが、アンコール曲だとこれもあり。


 今や「巨匠」と呼ばれるフェドセーエフであるが、なかなかにサービス精神旺盛な熱演であり、会場の盛り上がりもかなりのもの。フェドセーエフの方も盛り上げ方を良く心得ており、アンコール曲なんか明らかにそのために選曲している。アンコール曲を爆発的に終えた後のドヤ顔がなかなかに笑える。

 

 ただフラ拍、フラブラはなんとかして欲しいもの。いきなりフライング気味での「ブラ!」には参った。

 

 なるほどこれがロシアサウンドなのかと納得したのが今回。ドッシリズッシリと言っても先日このホールで聞いたベルリン放送交響楽団のサウンドとはまた違った感じのズッシリ感。ドイツサウンドはとにかく緻密で精緻だったのだが、ロシアサウンドはそれよりは野蛮(笑)。そしてパワーは底知れぬという印象であった。それにしてもこの響きの悪いホールを力技で鳴らしてくるのはさすが。

 

 あまりの演奏のすごさに完全に浮かされてしまって、クロークに預けたキャリーを忘れて駅まで行きそうになって、慌てて戻ってくる始末。この日はかなりの充実感を抱いて帰宅したのである。。

 

 

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