展覧会遠征 姫路編7
この週末は姫路市立美術館で開催中の竹内栖鳳展を見学に出向いた。それにしても姫路城の「白すぎ城」ぶりも相変わらずである。何か天守だけが白光りしている。
やはり白飛び写真のようになってしまう
「生誕150年記念 竹内栖鳳展」姫路市立美術館で3/29まで
言わずと知れた日本画の大家・竹内栖鳳の大規模な展覧会である。現在改装中のために休館している広島の海の見える杜美術館の所蔵品を初めとする栖鳳の作品が大集結、初期の雅号・棲鳳時代の作品から、栖鳳が描いた油絵「スエズ景色」などの珍品まで展示される。
あらゆる流派の技を吸収して「鵺」と揶揄されたこともあるという栖鳳だが、確かにその技量に関しては桁違いとの感を抱かされる。また常に技法の研究に励んでいるようで、作品ごとに技法が変化自在している。しかし一見してとにかく感じられるのは、暈かしのうまさ。この暈かしを諸々の表現に流用している。
また獣の臭いまで感じられると評された動物表現のうまさは圧巻である。静と動の対比が非常にうまく。静の表現はまるで「しーん」という文字が浮かぶような静けさであるし、一方の動の表現はまさに描かれた動物たちが動かんばかりで、彼らの鳴き声が聞こえてきそうな錯覚さえ生じさせる。
とにかく表現のポケットが非常に多く、底が見えないという印象を強く受けざるを得なかった。久々に圧倒された。
展覧会の見学後は山城攻略、と思って姫路北部の中世山城跡・城山城を訪問しようと考えたのだが、いざ現地に到着すると・・・高い。城山城がある山の高さが私がイメージしていたものの倍はある。これは下手をすると坂戸城なみのハードな登山になりそう。正直言って今の私は未だに病み上がりを引きずっていて、体力に全く自信がない。これはとても歯が立たないと、近くの道の駅で昼食だけ食べて撤退することに。情けない。
この山上らしい・・・うーん、無理
昼食は道の駅でとんかつを頂きました ただこのまま帰るのはあまりに情けない。ということでざっと考えたところ、ここをまっすぐに南下したら室津の漁港があるはずということで、牡蠣の仕入れついでに漁港の町並みを見学してこようと考える。
海沿いの国道250号線はこの時期は事実上牡蠣街道状態で、多くの車がやってきている。それにしてもこのようなワインディング道路を走ると、車高の高いノートは運動性能の悪さが際立つ。カーブの度に外に振られて吹っ飛びそうである(実際に以前に一回吹っ飛んで全損事故を起こしたわけだが)。運動性能ではかつてのカローラ2に及ばない。
室津港の牡蠣販売所付近は大勢の観光客でごった返している。無料で焼き牡蠣の試食を行っているところには長蛇の列である。とりあえず殻付き牡蠣を2キロと牡蠣の沖煮を購入すると市街の見学に移る。
室津港 室津市街はいかにも漁港らしく湾の狭い海沿いに住宅が密集している。路地沿いの町並みに風情はあるが、建物自体はそう古くはないものが大半である。
町並みに風情はあるが、建物自体はそう古くはない 漁港らしく船の修理工場もある
今では普通の漁港であるが、室津はかつては瀬戸内海運の運送業で発展したらしく、かつての回船問屋の建物が今では室津海駅館として公開されている。いわゆるどこにでもある「元豪商のお屋敷」でとにかく造りが立派な建物であるのが印象に残るが、海側に内縁を広く作ってあるのは防寒のためだろうか。
室津海駅館は元豪商の屋敷 町並みの一番はずれには番所跡があるが、今では駐車場になってしまっている。ここに置いてある巨石は、大阪城築城の祭に輸送された石垣用の石で、海底に沈んでいたものを引き上げたとのこと。
左 番所跡は駐車場に 中央 大阪城の石垣用の巨石 右 ここは龍福寺跡 龍福寺跡から海を見渡す ここから背後の丘に登っていくと賀茂神社に出る。檜皮葺の巨大な本殿を擁するなかなか立派な神社であり、この辺りにこの地がかつて海運でかなり栄えたという伝統を感じさせる。またここの神社が珍しいのは、通常は本殿の前に置かれることが多い拝殿が、本殿と離れて相対していること。これはとび拝殿と呼ばれる形式で、神社内の建物配置としては古い形態を残す貴重な遺構だとのこと。なお現在は檜皮吹き替えのための費用の寄付を募っているらしい。
賀茂神社は本殿と拝殿が向かい合う形式
左 本殿 中央 拝殿 右 山門 社内にはこの他に二本の榊が途中で一本になっている「愛の榊」なる木があり、これが想像通り夫婦の絆や良縁の御利益があるとされている。私も良縁を祈願しておく。ついでに引いたお神籤では「あせらずに待て」とのことなのだが、一体いつまで待てと言うんだ? もう十二分に待ちすぎた気がするんだが・・・。
二本の榊が一本になっている「愛の榊」
背後の丘には賀茂神社以外にも複数の寺院が点在している。室津港は海抜1〜2メートル程度の低地であるので、これらの寺院はもしもの際の避難場所も兼ねているのだろうと考えられる。もっとももし南海トラフによる津波が発生した場合、この高度で十分かどうかはよく分からない。
室津の町並みを一回りしたところで、土産物の牡蠣をぶら下げて帰宅と相成った。帰宅後は焼き牡蠣を堪能して大いに精をつけたのである。
戻る