展覧会遠征 阿蘇編

 

 9月の連休第二弾は九州を訪問することとした。九州地域には未だに多々の宿題が残っているが、その中の大きなものが阿蘇訪問である。阿蘇は以前に訪問しているが、その時はお山の機嫌が悪くて火口に近寄れていない。やはり火口の見学はしたいという気持ちがある。また九州を走る観光特急の中で未だに乗車していないのがあそぼーい!。そこでこの二つの宿題を片づけることを中心にプランニングを実行した。

 

 出発は金曜日の仕事終了後。新幹線で博多に乗り込む。博多での宿泊ホテルはこれまた定宿化しつつあるルートイン博多駅前である。

 

 新幹線から降り立った博多は生憎の雨。明日以降の天候が気になるところ。ホテルにチェックインすると夕食に行く必要があるが、雨は降っているししんどくて面倒くさいのでホテル内の花の舞で済ませてしまう。

 腹が減っていたせいでいささか食い過ぎた。まさか夕食に5000円以上も使ってしまうとは・・・。財布にも体にもダメージが。

 

 夕食を終えると大浴場で入浴。入浴を終えてマッタリとテレビを見ているとNHKでドクターGが始まるのでそれを見る。今回は息苦しさを訴える42才の女性の例。シングルマザーで生活に追われてストレスが多いことから、過喚起症候群がまず疑われるところだが、実はさにあらずという展開。正解は子供の頃に発症したリウマチ熱がきっかけとなって心臓の弁に感染、長年の間に弁膜症を発症したという症例。息苦しさが出る場合は心臓に原因があることもあるということ。心臓の働きが悪くなると、肺の中に水が溜まって呼吸が苦しくなることがあり、特に横になった時に症状が出ることがあるとか。

 

 ドクターGを見終えた頃には眠気も来るので就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は6時半に目覚ましで起床。部屋風呂で汗を流すと朝食を摂りにレストランへ出向く。ルートインの朝食は内容的には悪くないのだが、メニューに変わり映えがないのがツライ。

 

 チェックアウトしたのは8時頃。今日の予定だが、レンタカーでこの周辺地域で宿題として残っている城郭を訪問する予定。レンタカーは駅前のオリックスレンタカーを予約済み。貸し出されたのはホンダのフィット。驚いたことにハイブリッドである。一番安いクラスの車を予約していたので、まさかハイブリッド車が回ってくるとは思わなかった。空きでもあったのだろうか。

 ハイブリッドフィット

 ハイブリッド車に乗るのは初めてだが、シフトレバーが独特な以外は特に普通のガソリン車と変わらない。ただ普通と違うのは発進時にモーターのキュイーンという甲高い音が聞こえること。なお最近のトヨタのハイブリッド車はだんだんとガソリン発電器付き電気自動車という趣が強まっていると言うが、このフィットについては「モーターサポートガソリンエンジン車」という印象。運転感覚も普通のガソリン車に近い。ただガソリン車と違うのは、リッター22キロとか平気でクリアしてしまうこと。

 

 まず最初に向かったのは「立花山城」。博多の東にある立花山の山上にある城郭である。福岡高速の香椎ICで降りると北側から県道540号で立花山の東に回り込む。立花小学校を過ぎてさらに南下すると右手に立花山駐車場の案内看板が見えるのでそこで右折。登山者の車は進入禁止の看板がある脇に登山者用の広い駐車場がある。既に車が結構止まっており、どうやら立花山が地元民にとってはかなりポピュラーなハイキングコースであることが伺える。

案内標識の先に広い駐車場がある

 ここに車を置くと山に向かって歩く。数分歩いたところで登山道入り口にたどり着くが、実はここまでの行程が意外としんどい。登山道の入り口手前に駐車場があるが、そこはどこかの施設の駐車場らしく入口を閉め切ってある。登山道入口部分にも車を停められるだけのスペースがあるが、ここを解放したらすぐに車で塞がってしまってかえって混乱を招くことから、一律で車の立ち入りを禁止したのだろうと思われる。

数分歩くと登山道入口に着く

 登山道入り口から本格的な登山の始まり。進むごとに「後○○メートル」の表示があるので親切だが、道のりは結構キツイ。しかもまいったのは私の足が全く前に出ないこと。どうも先週の新潟遠征のダメージがまだ残っている模様で、完全に体がなまってしまっている。足が重くて仕方ない。

出展:余湖くんのホームページ

 山頂までは1.2キロとのこと。一本杉のところが中間地点の600メートルだが、この区間がかなりしんどい。ここを越えると300メートル地点の屏風岩までは比較的なだらかな道。しかしここからの最後の300メートルが追い込みでかなりキツい。しかもこの間に特に城らしい構造は全くないというのがハイキング目的ではなくて城郭目的のものにはツラい。

 屏風岩

 立花山城はその歴史は古く、1330年に豊後守護の大友貞宗の次男の大友貞載がここに城郭を築いて立花氏を称するようになったことから始まるという。博多を見下ろす戦略上の要地であることから戦国期には大内氏、毛利氏、大友氏が覇権を争って激闘を繰り広げたが、秀吉の九州征伐などを経て城郭が戦略的砦よりも経済中心としての機能を強めると共に存在意義は薄くなり、黒田長政が福岡城を築いたことで廃城となったという。

左 本丸入口  中央・右 本丸

 ようやく山上に到着した時にはヘトヘトである。しかし開けた風景が癒やしてくれる。山上には結構大勢の人がいてやはり地元のハイキングコースであることが覗える。なお城郭として見た場合にはここが本丸ということになるのだが、そう大きな曲輪ではない。

 この本丸から東の方向の一段下にやや広い曲輪があるが、ここは鬱蒼としていて全貌がよく分からない。とりあえずこの曲輪と上の曲輪で本丸というところか。

本丸の奥の曲輪に降りてみるが、鬱蒼として訳が分からない。

 本丸から北西の方向の尾根上に立花山城の遺構は続くらしいのでそちらに向かう。本丸西の急斜面には石垣のような石がゴロゴロしていて曲輪のような構造も見られたが、鬱蒼としているために全貌がよく分からない。

石垣らしき石に曲輪らしきスペース

 そこからさらに降りていくとやはり鬱蒼としてはいるが明らかに曲輪だと分かるスペースに出る。その端には明確な石垣遺構がある。かなり重要な曲輪であったように思われる。

そこから降りるとより明確な石垣と曲輪がある

 ここから西側の斜面には曲輪などもあるようだが鬱蒼としているので降りていく気もなれない。下りつつ北上すると尾根筋のルートを通って松尾山城に行けるようだが、さすがにここまで行く体力がないので途中の分岐から降りることにする。するとこの脇に予想外の立派な石垣が。規模としては残っている中では最大のものだと思われる。

左 分岐がある  中央 先に進むと松尾山らしい  右 右手に降りた途端に目に入る立派な石垣

 ここから先は特に遺構のようもものも見つからないまま最終的には一本杉のところまで降りてくる。

 後は降りるだけ

 この辺りの山上一帯に広がる大要塞のようで、本気で回ったら丸一日コースだろう。しかしハイキングコース以外は鬱蒼としているので全貌をつかみにくい。私が歩き回ったところで無駄な労力に終わりそうである。ハイキングコースとしてだけでなく、城郭としての整備をもう少し願いたいところ。

 

 立花山城の見学を終えると次の目的地へ向かうことにする。次の目的地は佐賀の「勝尾城」。勝尾城は現在の鳥栖市の辺りを中心として勢力を誇った筑紫氏の城郭であり、この地域に存在する筑紫氏遺跡の中心でもある。なお勝尾城は1586年筑紫広門の時に島津家久の攻撃を受けて落城、広門自身も島津の捕虜となってしまう。この時に勝尾城は廃城となったとのこと。

 

 九州自動車道を鳥栖ICで降りると案内に従って進むが、道は段々と細いものになっていって対向車が来たらすれ違い不可の狭い道を延々と進むことになる。本当にこの道で大丈夫なのか不安になってきたので、途中でたまたま通りかかった地元の人に尋ねたところ、この先まで進むと広い駐車場があり、そこから石段を登って20分ぐらいで勝尾城だとの話。確か下からだと片道1時間くらいかかると聞いているのだが・・・。まあそれはともかくとして、この先に駐車場があるのは確からしい。とりあえず狭い道路を行き止まりまで突っ走ると、確かにかなり広い駐車場があった。

左 この上が筑紫氏館跡  中央 主殿跡は神社になっている  右 ここが虎口
 

 石段を登った先は神社になっているが、ここがつまりは筑紫氏館跡らしい。今では藪に埋もれてしまっているが、虎口の跡も残っている。勝尾城への登山道はこの奥からつながっている。ここに来るまでは「今日は立花山も登ったし、勝尾山を登るのは無理」と考えていたのだが、登山道を見た途端にそんな考えは吹っ飛んだ。そこに山城がある以上、登らないわけにはいかない。私の思考回路はいつの間にやらアルピニストになってしまっていたようである。

  館跡の奥を登っていく

 しかしいざ歩き始めると、この登山道がまた難儀な道である。道と言うよりも元々は沢筋だったのではないかと思われるルートなので、とにかく足下に岩がゴロゴロしていて歩きにくいことこの上ない。先の新潟遠征で靴がズルズルに滑りまくったのに懲りて、今回は新しい靴を履いてきたのだがそれが正解だった。あの靴のままだと、間違いなく山頂に到着する前にどこかでけがをするだろう。

ロープ場あり、藪あり、沢筋ありのとんでもないルート

 意外だったのは立花山を登った時よりも体が軽くなっていたこと。立花山登山で疲労が溜まってとても無理だろうと思っていたのだが、むしろあれで鈍っていた体がほぐれたのか。それともテンションが上がって脳内麻薬出まくりの麻痺状態になっているのか。まあ何にせよ、かなりの気合いがないととても登れないような道。時々「道からはずれたのでは?」と不安になる頃にキチンと案内看板が立っているので、こんな道でも整備はされているようだ。

 

出展:余湖くんのホームページ

 道なき道を登ることしばし、ようやく大手曲輪の所に出てくる。どうやらここから城域のようだ。かなりの巨石がゴロゴロしているのが印象的。この山なら、曲輪の削平の時に石垣用の石材も切り出せそうだが、それは裏を返すと工事が大変ということでもある。よくもまあこの山上にこれまでのものをと呆れる次第。

大手曲輪は巨石がゴロゴロしている

 大手曲輪から少し登ると、二の丸方向と主郭方向に道が分かれる。とりあえず予定では主郭から下山するつもりなので、二の丸方向に向かうことにする。二の丸には少し下る形になる。二の丸はかなり広く、また虎口周辺に石垣も残存している。さらに進んだ先端部には櫓跡と言われている小高い丘も残っている。

左 巨石の分岐を進む  中央 さらに進むと  右 鉄塔のある曲輪へ

左 その奥に進んでいく  中央 二の丸はかなり長い  右 先端の櫓台跡

左 二の丸虎口の石垣  中央 二の丸虎口  右 二の丸石垣列
 

 二の丸の見学を終えると主郭へ。ここはロープ伝いで結構登ることになる。主郭自体は複数の曲輪からなり、こんな高い山上とは思えないぐらいに広い。また主郭の先端部には見張り台と言われている岩場があり、ここからの眺めは抜群である。

主郭へはかなり険しい道を登ることになる。

左 奥の一段高い部分が本丸  中央 こちらは見張り台  右 見晴らし胃が良い

左 本丸へ登る  中央 本丸も巨石がゴロゴロ  右 本丸奥に曲輪
 

 帰りは主郭から西側に降りるルートを通る。こちらは階段が整備されていて、行きのルートよりは随分まとも。尾根沿いにある出城的な場所を辿るルートになる。ただ私は途中で道を間違えて、結局は往路と同じルートに合流してしまう。あの悪路を下ることだけはしたくなかったのだが・・・。仕方ないので最大の神経と筋力を使いながら慎重に降りていくことになる。

大手曲輪は巨石がゴロゴロしている
 

 勝尾城の見学を終えた頃には2時過ぎになっていた。やはり看板通りに往復で100分ほどかかったことになる。いくら田舎の人は健脚だと言っても、さすがにこの道を20分では登れないだろう。さて移動しようかと車を出したところで「葛籠城」の案内看板が目に入る。葛籠城は勝尾城の出城のようである。行きがけの駄賃とばかりについでに立ち寄ることにする。

左 入口はかなり厳重  中央 内部  右 左手の林が武家屋敷跡
 

 葛籠城はそう大きな城郭ではなく、基本的に単郭の城塞と考えて良いのだが、主郭の周辺には土塁が残る上に、主郭を取り巻くように空堀が築かれている。また一部には石垣の跡も残っている。

本丸へと進む

左 本丸周囲の土塁と堀  中央 本丸内は結構起伏がある  右 土塁には石垣の跡も
 

 さらには南側の斜面を分断するかのように何本もの土塁と空堀が築かれている。これがこの城の最大の特徴と言え、この奥に筑紫氏屋敷などがあることを考えると、その入口を守るための最前線の砦という位置づけだったのだろうことが覗える。

左 空堀が何重にもなっている  中央・右 石垣も残っている
 

 小規模ではあるものの、結構見所のある興味深い城郭だった。こういうことがあるから城郭見学は面白い。

 

 この後はレンタカーは久留米に返却して、そこから新幹線で熊本に移動する予定。ただしレンタカーは今日の夜まで借りれるようになっているので特に急ぐ必要はない。それにしても疲れたし、腹も減った。やはりこれは昼食を摂ると共に汗も流したい。そう考えた時、頭に浮かんだのが以前に立ち寄ったことのある久留米温泉。久留米温泉は久留米の市街にある温泉だが、こんな町の真ん中で弱アルカリ性の硫黄泉が自噴しているというレアな施設である。

 

 案内に従って路地をクネクネと進んでいった奥に久留米温泉がある。ちょうど石橋美術館の裏手ぐらいである。人気のある施設なので相変わらず駐車場には結構多くの車が止まっている。

 

 入館料を払って入館。大浴場に直行したいところだが、その前に昼食を摂ることにする。レストランのメニューを見たところ一番人気と書かれていた「チャンポン(670円)」を注文する。

 

 野菜たっぷりの具だくさんでなかなかに食べ応えのあるチャンポンである。化学調味料の後味がきついリンガーハットなどと違って素直な味でなかなか。

 

 遅めの昼食後に大浴場で入浴。浴槽にはダバダバと新鮮な湯が注ぎ込まれており、浴場内には硫黄の匂いが漂っている。また湧出量が豊富なためカランまで温泉を流しているようである。何とも贅沢な温泉の使い方。湯は肌にしっとりとなじむ上質のもの。先ほどの登山での汗を流すと共に、挫きかけて痛みのある右足首を癒す。

 

 入浴を終えて時間を確認すると5時前。当初予定では6時台の新幹線で熊本に移動するつもりだったが、e5489で予約を早めることにする。レンタカー返却前に駅近くのGSでガソリンを満タンにするが、給油量は3リットル程度というのはさすがのハイブリッド。レンタカーを返却すると久留米駅から新幹線さくらで熊本に移動する。

  久留米駅

 久しぶりの熊本。やっぱりここの空気は良い。以前に訪問した時には熊本駅周辺はまだ工事中だった記憶があるが、表側ではその工事は一段落している。ただ今後さらに熊本駅自体を高架化する予定があると聞いている。当分はこの駅は工事中が続くんだろう。

  熊本に到着

やはり熊本のヒーローは彼です

 熊本駅からは路面電車で移動。今日の宿泊予定ホテルはドーミーイン熊本である。熊本の中心地域に近い便利な立地の上に温泉付きというホテルであるが、難点は週末は宿泊料が高い上にそもそも予約が取りにくいこと。

 

 ホテルにチェックインするとまずは大浴場に直行。弱アルカリ泉という温泉の泉質は残念ながら先ほどの久留米温泉とは比べるべくもないが、それでもビジネスホテルの大浴場としては贅沢なもの。

 

 入浴を済ませると一休み後に外出、夕食を摂る店を探してフラフラするがなかなかピンとくる店がない。その時に私の目に飛び込んできたのが地産地消の緑提灯。そこでこの提灯をつるしていた「写楽」に入店する。

 

 郷土料理などの店のようだが、何やら変わった店構えの店である。とりあえず注文したのは「ハツの刺身」「郷土の前菜五点盛り」「天草大王(鶏)のたたき」。いずれもなかなかうまい。

 デザートは「いきなり団子アイス」。芋味の雪見だいふくという趣でなかなかうまい。やはり緑提灯にはずれはなかったか。もっとも支払いはトータルで5000円越えなのでCP的にはややしんどい。以前から熊本の飲食店は味には不満がないのだが、どうもCP的にはしんどいところが多い。

 

 ホテルに戻ると今日の登山で汗だくになった衣服を洗濯、くじきかけた足の調子が悪いので再び入浴。入浴後にはドーミーイン名物の夜鳴きそばで小腹を満たす。

 

 それにしても疲れた。やはり一日で2ヶ所も本格的な登山というのは限界を超えている。強烈な体のだるさとあちこちの痛みに襲われたので、10時過ぎには就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は5時半に目が覚めてしまうが、そのまま6時半頃までしばしゴロゴロ。今日は10時28分のあそぼーい!に乗れば良いだけなので時間に余裕があるのでもっとゆっくりしたかったのだが、最近は睡眠力が落ちているのか中途覚醒が多い。疲労で結構爆睡していたつもりだったのに、早朝になると勝手に目が覚めてしまう。その一方で昼過ぎになると眠気が来るのだからたちが悪い。

 

 一応昨晩に痛みのある右足首とやや痛みのあった左膝には湿布を貼って寝たのだが、今朝になると両太股にかなりのだるさがある。昨日の無理を考えるとこれならまだ上々か。それとも明日以降に来るのか。実の所はそっちの方が怖い。

 

 レストランでバイキングの朝食を終えるとしばしテレビを見て時間をつぶす。仮面ライダーが大詰めらしく次のライダーの宣伝が入っているのだが「仮面ライダードライブ」って・・・。ライダーがバイクに乗らなくなって久しいが、車に乗って戦うことを売りにしたライダーって何なんだ? しかもキャッチコピーが「そのライダー、ドライバー」。それならただ単に仮面ドライバーで良いのと違うのか? それに今度のライダーは刑事だとか。仮面ライダー史上初とか、仮面ライダーの歴史を変えるとか謳っているが、ただ単に宇宙刑事シリーズの要素を放り込んだだけ。こんなのは仮面ライダーの歴史を変えているのではなく、ただ単に仮面ライダーの歴史が行き詰まっているだけ。どうも創作界もここ数年ネタ詰まり傾向が末期的。

 

 ホテルから駅までは送迎してもらうことになっている。送迎のタクシーが出るのは9時40分だからまだまだ時間に余裕があるというわけで、朝から風呂でゆったりとする。今回は今までにないくらいゆっくりしたスケジュールである。やはりたまにはこういう余裕も必要だ。

 

 ゆっくりと入浴を済ませてからチェックアウト。タクシーで駅まで送ってもらうが、市内は何やら祭りらしく交通規制やら何やらで大渋滞。タクシーは通常のルートを諦めて迂回ルートへ。列車の発車まで時間の余裕は十二分にあるので大丈夫だが、これはギリギリだったら焦ることになるところだ。

 

 駅に到着すると5番ホームで待つことしばし、ようやくあそぼーい!が入線する。車両自体は以前にA列車に乗車した時に見ているが内部は初めて。観光列車ということでいろいろと仕掛けがあるようだ。私の席は2号車。シートは通常の特急タイプでやや狭い。

 やがて隣のホームにA列車も入線し、予約で満席というあそぼーい!は定刻通りに発車。ディーゼル車なのでエンジン音がかなりうるさいし、列車のテイストからも想像できるように乗客に子供が多いのでその点でもやかましい。

 

 熊本を出た列車はしばしは熊本市街部を走行。この間は対向列車とのすれ違いが多くほぼ各駅停車。ようやく特急らしく走行し始めるのは、市街が切れる肥後大津以降。ただこの車両はいくらリニューアルしているとは言え、基本的には旧型車両であるためかエンジン音はうるさいし、揺れ具合も気持ち良くはない。足回りがあまり強くないのかもしれない。単純に乗り心地だけなら新型車両の九州横断特急の方が良さそうだ。

 

 立野駅で団体客が一斉に降車して車内人口は一気に減少する。彼らはここから南阿蘇鉄道にでも乗車するのだろう。私は車内で弁当の販売があるので購入。お子さまテイストの列車だけに、弁当もどことなくお子さまテイスト。箸でなくて先割れスプーンで頂くところが何とも。

何となくお子様テイストの弁当

 立野のスイッチバックで高度を上げると阿蘇山が見えてくる。生憎と山上には雲がかかっているようである。赤水を過ぎると次が阿蘇。列車は次の宮地が終点だが、私はここで下車する。

  阿蘇駅で下車

 阿蘇ではレンタカーを予約している。貸し出されたのはキューブ。キューブに乗るのは初めてだが、やけに重心の高い車という印象である。重心の高さのせいでカーブでの限界値が低く感じられ、スピードが上げられない。慣れるまではかなり運転しにくそうだ。

 

 最初の目的地は阿蘇山。阿蘇の火口見学をしていないというのが今回の遠征の理由の一つだった。しかし今回もお山とは縁がなかったのか、先月末から噴火の可能性が高まっているとのことで入山禁止。ロープウェーの運行もしばし休止とのこと。正直なところこの時点で完全に脱力である。なおロープウェーが運行休止だと収入がなくなるからか、阿蘇スーパーリングなるプロジェクションマッピングシアターが開業しているのでついでに見学する。まあ面白かったのであるが、入場料500円というのは少々割高。

阿蘇は1次規制中で火口に近寄れない

左 阿蘇スーパーリング  中央 ここに映像を映す  右 山頂は煙って見えない
 

 結局は本遠征の主目的の一つは達成不可能になってしまった。やむなく阿蘇山頂を後にすると草千里に立ち寄ってしばし散策。

 

草千里

 草千里は壮大な光景であるが、塗れた草の臭いと観光用の馬の臭いとが入り交じって何とも表現に困る臭いが立ちこめている。なるほど、これで「クサー千里」というわけか・・・と思わず親父ギャグが。

クサー千里を散策

 クサー千里の散策を終えたところで、さて困った。正直なところ今日の予定が全くなくなってしまったのである。しかしそもそも今回の遠征は温泉でゆっくりしたいということもあった。もうさっさと今日の宿である黒川温泉に移動してしまおうと考える。

 

 黒川温泉に行くには阿蘇の外輪山を越えてのはるばるのドライブとなる。途中で大観峰の近くを通ったので立ち寄るが、やや曇っているせいもあるのか眺望が今一つ。歩いた先に展望台もあるようだが、疲労が溜まっていてそこまで行く気もしないので先を急ぐことにする。

 

 山道を下りながら進むことしばし、途中から雨がぱらつき始める中、ようやく黒川温泉にたどり着く。黒川温泉は山間部の鄙びた温泉街だが、秋田の乳頭温泉などとは違って温泉宿が散在するのではなく、まとまった温泉街が形成されている。

 

 ただ黒川温泉に到着したのはよいが、いざ現地に到着すると宿の場所がわからない。結局はウロウロするうちに温泉街の中心部に迷い込んでしまうが、これが車で走るのは極めて困難な狭隘道路。そんなに大きくないはずのキューブも、こういう所に入るとやけに大きく感じる。しかも観光客がやたらに多いし、道ばたにバイクを停めているオッサンはいるし、結局はここを通り抜けるのにかなり神経をすり減らす。

 

 四苦八苦したがようやくホテルに到着。今日の宿泊ホテルは夢龍胆花泊まり。温泉付きの離れのような施設である。大浴場はないが、各部屋に個室風呂がついているという造り。なお大きな浴場に入りたければ、本館の大浴場が使用できるとのこと。

離れのような造りである
 

 とりあえず部屋に荷物を置くと一息。まだ日の高いうちに温泉街の散策に出ることにする。幸いにして先ほどの雨は止んだようである。

 

 黒川温泉は山間の川沿いの斜面に広がる温泉街である。領域は非常に狭く、そして何よりも道路が非常に狭い。先ほど私がここの道に車で迷い込んで泣きたくなったが、やはり迷い込んでくる車が数台。私のキューブでさえカツカツだったのに、もっと大きな車で迷い込んできている者も。抜けられるのだろうか?

風情のある温泉街を散策

 温泉街を散策しながらお菓子などを購入。途中で見かけたパティスリー麓で塩麹シュークリームを購入。サクサクしたバイ生地とコクのあるクリームがうまい。

塩麹シュークリームを頂く

 さらに散策を続けると「味処なか」を見つけたので、かなり早いがもう夕食を摂ることにしてしまう。昼食があそぼーい!の弁当だったので腹が中途半端になっている。注文したのはカツ丼馬刺し。特別なものでもないが普通にうまい。

早めの夕食を摂る
 

 腹がふくれたところで夢竜胆の本館の方を訪問して大浴場で入浴する。広々とした露天は気持ちいいが、どことなく落ち着かないので宿に戻ることにする。

  夢竜胆本館

 温泉街の散策から帰ってくると部屋の風呂に入ることにする。最初は湯巡りも考えたが、結局はここの風呂が一番ゆっくりと入れそうである。泉質はナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉で、湧出温80度ぐらいの湯をタンクに溜めて供給している。浴槽には掛け流しの湯がなみなみと注がれており実に上質。結局はチェックアウトまでの間、この風呂に入り倒すことになる。夕食がかなり早かったので夜になると腹が減ってきたが、温泉街まで食事に出るのも面倒くさいので、この日はこのまま特に何をするということもなくボンヤリと過ごす。まあたまにはこういうことも良いだろう。

この夜のおやつ

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時頃に起き出すと早速朝風呂。朝食は8時に運ばれてくる。昨日の夕食がかなり早かったから腹が減っている。朝食がなかなかうまい。

   

 朝食を終えるとまた入浴。結局は10時前ぐらいまでマッタリと過ごす。いい湯にくつろげる宿、最高の贅沢である。名残惜しくはあるが、次の目的地へと旅立たないといけない。

 

 さて今日の予定だが、宮崎県の重伝建地区である椎葉村十根川地区を訪問する予定。阿蘇を越えて遙か南への長距離ドライブになる。黒川温泉を出ると県道11号を南下。この道路はやまなみハイウェイと呼ばれ、かつては有料道路であったという快走路だが、今日は生憎の天候のせいで靄がかかって風景が全く見えないどころか、視界が10メートル程度ぐらいしかなくて、道路を走るのも難儀な状態。先の道路がどっちに向かっているかは、白い靄の中にぼんやりと浮かび上がる黄色いセンターラインだけが頼みである。

 

 ようやく宮地まで降りてきた頃には天候は回復した。ここからは国道265号で南下することになる。この国道265号、実は九州ではかなり知られた酷道らしい。もっともその酷道度が全開となるのは椎葉村以南と聞いているので、目的地までは問題ないだろう。

 

 実際、宮地から高森までの区間は、起伏こそはあるものの酷道どころか快走路と言って差し支えがない。高森を過ぎた頃からやや怪しい気配が出てくるが、それでも対面二車線の普通の道路である。この道路もかつてに比べてかなり改良工事が進んだらしい。

 

 しかし最後の最後で酷道が牙を剥く。五ヶ瀬渓谷を越えて国見トンネルを抜けて十根川地区が近づいてきたところでセンターラインが消失。落石事故でもあったのか道路工事が各地でなされている。いよいよ国道265号線が九州NO1酷道の一端を垣間見せるのである。こうなると対向車が来ないことを祈るのみだ。

 

 幸いにして酷道区間に突入してほどなく十根川地区への分岐に差し掛かる。しかしこの道が道幅も傾斜もすごい山道。でかくて非力な車なら通れないのではと思うような道である。

 

 椎葉村自体は山の急斜面に張り付いたようなすごい地形の村である。その山麓に大神館なるそば屋があるのでそこでししそばを注文して昼食にする。

   

 手打ちそばらしいがやけにそばが太いのが印象的。味はまずまず。

 

 そばを食べるついでに重伝建地区について教えて貰ってから見学に向かう。車は十根川神社の手前に駐車できるスペースがあるので、そこに車を置いて徒歩で見学。十根川神社の周囲にあるのがいわゆる八村杉。しかしこの一帯はこの杉だけでなくて巨木の森である。

  十根川神社周辺は巨大樹の森である

 十根川集落は急斜面に石垣を築いてその上に住居を建てた集落。各家々は迷路のような石段でつながっており、独特の町並みを形成している。あまりの急斜面なので、豪雨の時に大丈夫だろうかと心配になるのと、高齢化時代にはバリアフリーの対極のような住宅なので大変である。

 十根川集落を見学した後は、ここから村道でさらに山奥に向かい大久保のヒノキを見学する。一応は駐車場まで完備されているが、そこまでたどり着くのが大変である。駐車場の手前であまりの急斜面にキューブのタイヤが空滑りする場面も。樹齢800年というヒノキの巨木は見応えあるが、帰りの運転は怖々である。

 

左 十根川集落が遙か遠くに  右 大久保のヒノキ

 椎葉村の見学を終えた時には12時過ぎ。実のところ、今日の予定は椎葉村しか入れていなかったのだが、いくらなんでもここからホテルに直行だと早すぎる。今日の宿泊予定地は高千穂だが、ここから高千穂まではおおよそ1時間程度である。どこか立ち寄り先はと考えた時に、この辺りに通潤橋があったことを思い出す。ここからは高千穂と反対側になるが、ざっと見て1時間、さらに通潤橋から高千穂までが1時間。ちょうど手頃なところである。これで目的地決定である。

 

 国道265号線を戻ってから、国道218号に乗り換えて西進すること約1時間で通潤橋に到着する。ちょうど手前の橋の見えるところに道の駅があり、そこに車を停めて徒歩で見学することになる。初めて目にする通潤橋の印象は「思ったよりもでかい」というもの。昔に作った橋なのでこんなに巨大なものだとは思ってもいなかった。

    

通潤橋と道の駅にあった謎の人形

 早速通潤橋の見学に向かいたいところだが、その前に先ほどそばを食べただけだといささか腹が心許ない。そこで道の駅のレストランでステーキ丼を昼食に頂く。

 

 腹を満たしたところで通潤橋の見学に向かう。通潤橋は灌漑の用水を運ぶために建造された水道橋だが、日本の石組み技術の粋をこらして建造されたという。確かに石組みだけでこれだけの巨大橋を築き上げた技術には感心するばかりだ。思わず「ローマなんかはこんな建築物ばかりなんだろうか」という考えが頭をよぎる。

   

 通潤橋は水道橋であるが渡ることも出来る。もっとも、転落などをしても責任はとれないという旨の看板が出ている。通潤橋を渡ってみたのだが、ここで私は久々に高所恐怖症を発症してしまった。橋の中央辺りまで来たところで心拍は上がり、足下はフラフラして崩壊するのではという妄想にとりつかれる。どうもこの橋には柵の類が全くないというのが災いしたようである。橋の端の方から下をのぞき込む猛者もいるが、私は橋のど真ん中から動くことができない。本能がこの場にいることを拒絶している。とうとう我慢が出来なくなって対岸まで走り抜ける。

左 橋の上(柵がない)  中央 渡った先の水路  右 渡った先にある史料館
 

 通潤橋の脇には小高い山がある。いかにも城郭を造れば良さそうな山だが、ここには貯水施設でもあるだろうと睨んで登る。しかし水道関係の施設はなく、代わりに目に飛び込んだのは「岩尾城跡」の看板。鎌倉初期の1222年に阿蘇氏が本拠として築城したのが岩尾城で、どうやらここが二の丸でこの辺り一帯の山上に城郭があったようだ。

左 この上が二の丸  中央 岩尾城二の丸の碑  右 一段下も曲輪のようだ
 

 二の丸はそこそこの広さがある。奥には堀切が切られていて、その先にある小高い山上が本丸らしい。本丸は例によって神社になっているが、それほど広いスペースではない。案内看板によるとこの隣にさらに三の丸があったらしいが、どうもそれは畑化などで失われているように思われる。

二の丸奥に進むと堀切があり、その先の山が本丸

本丸に上がってみると神社になっている
 

二の丸脇から本丸方向を望む

 通潤橋の見学ついでに城郭を一つ攻略したところで宿泊ホテルに向かうことにする。今日の宿泊ホテルは高千穂の国民宿舎ホテル高千穂である。高千穂まではここから国道218号線で1時間ほど。道路は整備された道路なので走行に問題ないのだが、途中でここまでどうにか持っていた天候がとうとう崩れ、本格的に雨が降り始める。

 

 何とかホテルの近くにたどり着いたが、ホテルの駐車場への入口が分からない。道に迷っている内に高千穂峡の観光用駐車場にたどり着いてしまって、ほぼ有無も言わせず駐車料を徴収される羽目に。仕方ないのでホテルに直行するつもりだったが高千穂峡の見学に行くことにする。

 

 高千穂峡はなかなかに壮大な光景である。しかし雨が結構激しいのと、想像以上に疲労が来ている上に先日の勝尾城でくじきかけた足に痛みが出ていて足下がかなり怪しいのとで、適当なところで切り上げてホテルに向かうことにする。残りの部分は翌朝にでも見学することにしよう(駐車料金が無駄ではあるが)。

 

 何とかホテルにたどり着く。ホテルにチェックインするとまずはとりあえず大浴場で汗を流す。残念ながらここの大浴場は温泉ではないので、先日の黒川温泉郷とは比べるべくもないが、それでも汗をサッパリと流せるのは気持ちが良い。ようやく生き返る気分である。

   

ホテルの部屋の裏手は高千穂峡

 入浴後は部屋でしばし休憩。それにしても疲労は予想以上である。先日の山城連荘が体力的にかなりキツかったのは間違いないが、今日の長距離運転が精神的疲労を伴ってボディーブローのように効いている。計画立案時から今日の予定はややキツいかと予想はしていたのだが、予想以上であった。・・・っていうか、気がついたら立ち寄り先が当初予定よりも増えてるし・・・。その時には貧乏性とアドレナリンの赴くままに目一杯に予定をぶち込んでしまうが、後で一息ついて我に返るとHPが1桁というパターンである。どうも私は貧乏性にアドレナリンが作用すると一種のバーサーク状態になり、冷静に自分の体力を判断する知力が消滅するようである。

 

 しばしネットで情報収集でもしながらマッタリ、その内に夕食の時間が来るのでレストランへと出向く。夕食はいわゆる会席料理。

 夕食はまずまずというところ。特別な驚きもなかったが不満もなかった。夕食が終わるとまたしばしマッタリだが、実はこの後にイベントが控えている。このホテルの近くにある高千穂神社では観光目的の夜神楽が毎夜開催されており、そのための送迎バスがホテルから出るとのこと。高千穂まで来たのだから、これを見学しない手はないというものである。

 

 バス発車時間になると私と同じ考えの宿泊客がゾロゾロとロビーに現れる。ほとんどの宿泊客が来てるんじゃないかという印象で、バスは一回だけでは乗り切れず二回往復になる。

 

 高千穂神社まではバスで5分もかからない。散歩がてらに歩いてでも行ける距離である。私のホテルだけでなく、他のホテルからもバスが来ている模様。恐らく各ホテルがバスでの送迎を行っているのは、宿泊客に対するサービスというだけでなく、乗客が全員車で来ると駐車場に収容しきれないという理由がありそうだ。

 

 会場の神楽殿には既に結構な観光客がやってきている。しばらく待たされて始まるのは8時から。題目は天岩戸伝説に基づいた3つの舞とイザナギとイザナミの国造り伝説に基づいた御神体の舞の4つである。天岩戸伝説は須佐之男の乱暴狼藉にぶち切れた天照大神が天岩戸に引きこもってしまうという話だが、天照大神が籠もった天岩戸を天手力雄神が見つけるのが最初の舞、次に天宇受賣命が天岩戸の前で乱痴気騒ぎで天照大神を誘い出すのが次の舞、そして三つ目の舞はその天岩戸を天手力雄神がこじ開ける場面となっている。イザナギとイザナミの国造り伝説に関しては、要は産めよ増やせよの世界なのでどことなくそれを暗示する内容。途中から舞手が観客の中に乱入しての乱痴気騒ぎである。

 夜神楽は1時間で終了。ちなみに本番の夜神楽は一晩徹夜で行われるようだ。ただ私のような素人にはこの程度のエッセンスの方が見ていて楽。終了後はバスでゾロゾロとホテルに戻ると、一風呂浴びてから就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 朝は6時過ぎに目が覚める。例によって爆睡していたはずにも関わらず突然の目覚めだ。体には若干の疲労が残っている。意外とダメージがあったのは、先日お寺で1時間以上座っていたこと。畳の上に座り続けるのは正直なところキツかった。やはり腰が良くないので足にしびれがでる。

 

 ざっとシャワーを浴びて目を覚ますと、7時から朝食である。朝食はバイキングだが、ドーミーインと大差ないレベル。さて今日の予定だが、阿蘇駅に12時に車を返して帰るだけ。阿蘇駅までは2時間もあれば到着できるので、かなり余裕を持って見積もっても、9時過ぎにチェックアウトすれば十分間に合う。

 

 そこで雨も上がっていることだし、出発前に高千穂峡の見学をしておくことにする。歩いていけば無料だが、距離はともかく高度差が洒落にならない。金をケチらずに車で行くことにする。駐車料金は500円。

 

 駐車場からボート乗り場へも行けるが、オール付きボートを一人で漕ぐ技術も体力も気力もない。当然のように遊歩道で徒歩での見学である。

 

 真名井の滝の周辺でボートがたむろしている。ボートに乗れば滝を下から見学できるというわけである。ただしボートの操作を間違って滝壺に突っ込んだら悲惨なことになりそうだ。実際に見ていると危なっかしいボートも少なくない。左右の力が違いすぎるのか、直進できずに岸壁に直撃するボートなども。確かにこれは救命胴衣の着用が義務づけられるはずである。

真名井の滝
 

 それにしてもすごい断崖である。阿蘇といい、高千穂といい、日本離れした風景である。私の知っている日本というのはいかに狭い世界を指していたかが思われる。

 

 昨日見学した箇所まで達したところで引き返す。ホテルに戻るととりあえず朝風呂を浴びてから9時過ぎにチェックアウトする。

 

 阿蘇駅までは1時間半程度で到着した。帰りのあそぼーいは12時半頃なのでまだ時間が余りすぎている。結局は道の駅に立ち寄ったり、近くの「あそとれキッチン満笑」で昼食を摂ったりしながら時間をつぶす。

   

 往路のあそぼーいは団体客もいて満席だったが、復路のあそぼーいは空席も目立つ。そもそも時間的にかなり半端な印象は否定できない。実質は熊本への回送運転のようなものである。往路はあそぼーいで復路は九州横断特急というパターンも多いのだろう。もしくは夕方便の104号を使用するか。

 

 熊本に到着するとここで新幹線さくらに乗り換え、博多を目指す。さて問題はこれからだ。博多から直接帰るかどうするか。ただ帰るのならのぞみではなく、さくらを使いたい。この疲れ切っている時にのぞみの馬鹿狭いシートはキツすぎるというものである。結局はダイヤとの絡みやなんやで2時間後のさくらに乗車することにする。

 

 博多到着するととりあえずキャリーや重い荷物をコインロッカーに放り込んで身軽になる。博多での予定だが、美術館的には立ち寄ろうと思うようなイベントが特にない。そこで思いついたのは筥崎宮にでも行くかというものしかない。

筥崎宮へ
 

 筥崎宮は石清水八幡宮、宇佐神宮と共に三大八幡宮に挙げられている(筥崎宮ではなく鶴岡八幡宮を入れている場合もある)。地下鉄で移動すると筥崎宮の参詣筋に出ることが出来る。伝統や格式のある神社かもしれないが、そう巨大と言うわけでもなく、個人的には鶴岡八幡宮の方が三大八幡宮としてピンとくる。なお本殿に高々と「敵国降伏」との看板が掲げてあるのでやけに好戦的な神社だなと思えば、これは「武力によって相手を降伏させるのでなく、徳の力で導いて相手が自ら靡き降伏する」という意味だそうな。

 

 筥崎宮の見学を終えると博多に戻ってきて昼食。お土産(博多通りもん)を買い込んでから帰宅と相成ったのである。

 

  

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