展覧会遠征 美山編
月の頭に胃腸風邪をひいてから体調がずっとグダグダだったが、ようやく回復に向かい、毎日のトレーニングも再開出来るようになった。こうなるとやはり身体の回復度合いを測る意味も兼ねてどこか山城に出向きたいところである。
どこか目的地はと考えた時、以前から候補に挙がっていた山城がある。それは京都の周山城。明智光秀絡みの城郭である。これに同じく京都北部の重伝建築である美山町の見学を組み合わせると一日のスケジュールとしては十分。距離的にも乗り換えた新ノートに慣れるための慣らし運転に適当であること。さらにはもっと時期が遅くなると積雪のリスクもある地域であることなどを考え合わせ、今回の遠征先と決した。
出発は午前中。中国道と舞鶴若狭道を乗り継いで、丹南篠山口で下りるとひたすら東進する。今年の秋頃から立て続けにこの辺りの明智関連城郭を攻略しているので、最早かなり馴染みのある地域のような気がしてくる。
この辺りは快適なドライブである
ナビの案内に従って国道477号を走る。ここまでは至って快調である。しかし山岳地帯手前に来たところで「大型バス・トレーラー この先通行困難」との標識のある道にたどり着く。ここからが大変。何しろ基本1.0車線の山道が続くことになる。所々ですれ違い可能な箇所もあるが、運が悪ければ延々とすれ違い不可区間が続くエリアもある。こうなると対向車が来ないことを祈るのみ。結局は途中で一台だけ対向車に出くわしたが、幸運にも道幅が広がっている所だったために事なきを得た。途中で山越えになるのに、ガードレールもない崖なんかもあり、ハンドル操作を間違うと真っ逆さまである。このエリアは悪天候時には通行規制がかかるようになっているらしい。確かにこんな道を豪雨や雪の時に走りたくはない。
左 「通行困難」の文字が酷道突入を告げる 中央・右 とにかくとんでもない道 左 恐ろしいことに対向車が来ることも 中央・右 とにかく狭い、死ぬほど狭い ようやくセンターラインが復活してホッとした時には周山の手前である。もう既に昭吾近くになっている。とりあえずウッディー京北という道の駅があるので、そこに車を停めると昼食を摂ることにする。
注文したのはオーソドックスに「カツ丼(750円)」。可もなく不可もなくの極めて無難な内容である。
昼食を終えるとここで「周山城」のマップをもらっていよいよ出発である。この辺りは今では京都市になるが、そもそもは京北町。古い造り酒屋があったりなどそれなりに趣のある町である。JAを目印に国道162号の旧道を北上すると、バス停の所に周山城の案内標識がある。
左 周山城はこの山の上 中央 風情のある造り酒屋を抜ける 右 バス停の横に標識発見 周山城案内図(ウッディ京北で入手) 住宅地の間を抜けて山に向かうと、途中に案内標識があり、そこからは山道になる。しばらく山道を進むと、途中からは九十九折りの登山道を息を切らせながら登ることになる。完全に息が上がった頃にようやく城内らしき雰囲気の所にたどり着く。それが地図のA点である。ここから右手のB点辺りには曲輪らしき構造が見られるが、入れないようにネットが張ってある。
左 登山道の始まり 中央・右 行き止まりから九十九折りの道を登る 左 A地点辺りから城内らしき雰囲気が 中央・右 B地点の曲輪はネットが張ってあって入られない Bの反対方向に尾根を迂回する斜面の中間の細い道を進む。この道は険しくはないのだが道幅が狭くて左手は急な崖なので用心しないと大変なことになる可能性がある。そこを抜けると案内標識のあるC点に出る。
左 本丸方向に進む 中央 尾根を回り込む道はとにかく狭い 右 C地点 ここから本丸方面に進むには引き返すような方向になる。なお「ここから本丸までは道が険しいので注意」の表示があるのだが、それはしばらく進むとすぐに分かる。D点が分岐になるのだが、左に進むと曲輪を回り込んでEの虎口にたどり着くルート、まっすぐ進むのが直登ルートである。直登ルートはかなり険しいが、目の前に石垣が見えたのでとりあえずこのルートを登ってみる。
左 C地点から振り返ったところがアンテナのある曲輪 中央 石垣がある 右 ようやく直登成功 急な斜面を登り切るとNHKのアンテナのあるかなり大きな曲輪にでる。結構広いスペースなので、往時には建物などがあったと思われる。
左 結構広い曲輪である 中央 さらに奥に進む 右 本丸の崖がそびえ立つ ここからさらに進むとこの曲輪の虎口のEを抜け、その先には先ほどよりもさらに急な崖が見える。ここも直登ルートがあるように見えるが、かなり急すぎて危ないので無理をせずに迂回ルートをとることにする。ただこの迂回ルート、途中で道が不明瞭になっていて迷いそうになる。結局は落ち葉に足を滑らせないように用心しながら九十九折りに斜面を登っていくと、Fの虎口にたどり着く。案内によるとここが二の丸とのこと。なお案内図ではここにNHKのパラボナアンテナがあるはずなのだが、なぜか私は見つけることが出来なかった。
左 道を見失いながらも回り込む 中央 二の丸虎口 右 二の丸(NHKのパラボラはどこ?) 二の丸の奥がさらに一段高くなっており、そこがようやく本丸である。この時点でかなりグッタリ。確かにこの城は城内に入ってからの方が険しかった。なお本丸内部には複雑な段差があるが、小高い部分は櫓台なのかも知れない。ここを中心に、東側には先ほどの二の丸、西側には小軽丸、南側には鷹屋ノ丸の三つの曲輪が放射状に広がっている構造になる。
左 本丸方向を見る 中央 本丸虎口 右 本丸 本丸虎口付近 本丸奥 西側の小軽丸の方に下りていくと、先端の方には石垣の跡が残っている。この曲輪は石垣でしっかりと固められていたようである。こちら方面には尾根筋が続いているのでその方面への防御のためか。なおこの曲輪の北方斜面に井戸の跡がある。
左 小軽丸へ下りる 中央 井戸の標識がある 右 これが井戸のようだ 左 数段の曲輪の先に石垣がある 中央 曲輪先端部の石垣 右 振り返ると石垣で数段になっているのが分かる 南側の鷹屋ノ丸は小規模な曲輪であり、特に何があるというような様子がない。
左 鷹屋ノ丸は小規模 中央 先にも特に何かがあるわけではない 右 本丸を振り返る これで城内の見学はほぼ終了。足下に気を付けながら急斜面を下りてくる。C地点まで戻ってきたところで尾根沿いに直進すると、小高い丘の先のG地点に放送設備らしい建物のある小さな曲輪がある。これはBと同様の独立曲輪だったのだろうか。周山街道のある東側からの攻撃は、このGの曲輪とBの曲輪、さらにはNHKのアンテナのあった曲輪の三方向から万全の構えで防ぐ構造になっていたようである。かなり堅固な要塞であったことが伺える。
左 C地点を直進すると 中央 小高い丘を回り込んで 右 放送施設らしきものがある小曲輪Gがある 見応えの十二分にある城郭だったが、その分身体にはかなりきつかった。病み上がりの回復度合いを測るには少々無茶だったような気もする。ようやく下まで降りてきた時には少々グッタリしてしまった。
とりあえずウッディ京北に戻って一息付くと、次の目的地である美山を目指すことにする。美山は山間の静かな集落で、今でも多くの茅葺き住宅が残っているとのことで重伝建に指定されている。
国道162号線を北上。この道路は途中で若干道幅の狭い部分もあるが、概ね整備されていて走りやすい。ただし気温が低いのであちこちに凍結注意の看板が立っている。確かにこんなところで道路が凍結したら命にも関わる。途中で雪がちらついたりすることもあったので少々焦るが、幸いにしてそれ以上降る気配はなかった。目的とする美山町の重伝建地区は途中で県道38号に折れてから10分ほど走るとたどり着く。
左 山道だが快適な国道162号 中央 ここを右に曲がる 右 県道38号も快適な田舎道 現地は観光整備されているようで、駐車場や土産物屋などが建っている。土産物屋の駐車場に車を止めると向かいに見える茅葺き集落を徒歩で見学する。
非常に落ち着く日本の原風景ともいうべき風景である。風景の完成度という点では白川郷にも匹敵するところがあるように思われ、実際に観光バスでやって来ている団体客などもいる。またかつては農業主体の集落だったろうが、今では観光客を相手にした民宿や喫茶店などを営業している住宅も多いようだ。今日は身を切られるような寒さの中だから観光客の姿は決して多くないが、紅葉シーズンなどは多くの観光客が押しかけたであろうことは想像に難くない。
茅葺き集落の見学を終えると、駐車場横の「お食事処きたむら」で「辛みソバ(900円)」を頂く。手打ちの新蕎麦がなかなかに風味があって良いが、添えられている薬味の辛み大根が私の予想を超える辛さで、せっかくのそばの風味が強すぎる薬味によって消されているきらいもなくもない。
これで今日の予定は終了。既に4時頃になり、完全に暗くなってしまう前に山から抜けたかったので早々に帰宅することにする。帰りは県道12号と国道27号を乗り継いで丹波綾部道路の京丹波わちICから高速に乗ったのだが、この道は山道ではあっても道幅は広くてよく整備されていたので、どうやら美山にアクセスするのはこの道が正解のようである。現在建設中の丹後綾部道路の工事が終了して京都縦貫道が全通したら美山のアクセスも向上し、より観光地としてのポテンシャルが高まりそうである。
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