展覧会遠征 坂本・京都編
この週末は京都の竹内栖鳳展を見に行くことにした。しかしただ京都に行くだけだと芸がないので、ついでに重伝建地区の坂本の見学も組み合わせようとのプラン。現在、関西1デイパスで京阪大津線に乗り放題のチケットがついてくるのでちょうど良い。
出発は日曜の早朝・・・のつもりだったのだが、起きられなかった。ここのところ心身の疲労が溜まっているのか、とにかく朝が起きられなくなっている。元々のプランは早朝に出発してついでにミシガンに乗船してやろうというものだったのだが、この時間だとまずミシガンに乗っている暇はない。とりあえず新快速で山科に直行、山科から京阪浜大津を経由して坂本に直行する。
坂本に到着した時にはもう既に昼時。昼食は坂本でとろうと店も目星を付けている。立ち寄ったのは「鶴喜そば」。建物が有形文化財に指定されているという由緒正しき老舗そば屋である。しかし店の前に来ると長蛇の列で唖然。仕方ないので隣の「日吉そば」をのぞいたがこちらも待ち客でごった返している。私はたかが蕎麦を食べるために行列に並ぶという価値観は持ち合わせてないので、とりあえず昼食は後にして見学を先にすることにする。
左 鶴喜そば 右 日吉そば 坂本は日吉大社の門前町であるが、その町並みの特色をなしているのが穴太衆による石垣である。京阪坂本の二つ手前の駅が「穴太」であることから分かるように、この辺りは穴太衆の本拠である。石垣建築のスペシャリストとして戦国時代に名を馳せた職能集団である穴太衆だが、その石積み技術はこういう町並みでも発揮されているのである。
石垣の町並みを日吉大社まで歩く。ちょうど紅葉シーズンであるためか観光客がやたらに多い。特に神社仏閣に興味があるわけでなく、信心に至っては微塵も持ち合わせていない私だが、ここまで来たついでだから日吉神社を観光しておくことにする。
紅葉の参道筋を日吉大社まで歩く ゲートで入場料を払うと順路に従って西本宮から見学に回る。社内には売店などもあり、典型的な観光寺院。ただ私のように信心皆無の人間には、このような堕落した観光寺院の方が純粋に文化財見学として物見遊山出来るのでむしろ向いている。
参道は紅葉が綺麗なので、各地で写真撮影をしている風景が見られる。重要文化財の西本宮楼門をくぐると国宝の西本宮を見学。さらにこの隣にある重要文化財の宇佐宮も見学する。さらにその奥の白山宮も重要文化財ということで、この辺りは重要文化財のオンパレードである。
左・中央 社内は紅葉が綺麗だ 右 西本宮楼門前には人だかりが(猿回しがいたらしい) 左 国宝・西本宮 中央 重文の宇佐宮 右 これも重文の白山宮 西本宮エリアの見学を終えると東本宮エリアに向かう。途中で奥宮もあるそうだが、長い石段の挙げ句に1キロの山道を歩かないといけないらしく、今日はとてもそんな時間も体力もない。私は別にここに悟りを開きに来ているわけでもないのでこれはパスする。
このずっと上が奥宮らしい
東本宮には重要文化財の樹下宮と国宝の本殿がある。これらの見学を済ませると日吉大社を後にすることにする。日吉大社を出る直前に二宮橋なる石橋があるが、これも重要文化財らしい。さすがに日吉大社ともなれば、国宝や重要文化財が掃いて捨てるほどあちこちにある。
左 東本宮の楼門 中央 東本宮 右 重文の樹下宮 左 国宝の本殿 中央 これは拝殿 右 これまだ重文の二宮橋 日吉大社の見学を終えると再び門前町をプラプラ。なかなかに風情のある町並みで、プラッと散策するには最適の町である。また重伝建エリアの外にも何やら由緒を感じるような建物がいくつか見あたる。
風情のある坂本の町並み(北部地区)
重伝建エリアの外にもこんな趣の家があったりする
一回りしたところでそろそろそば屋の客が減っているのではと再び「鶴喜そば」を訪れるが、相変わらず店の前には大行列。嫌気がさしたので隣の「日吉そば」に入店。にしんそば(840円)を注文する。
可もなく不可もなく、正直なところ全く普通のそばで取り立てての特徴がないというところ。悪い蕎麦ではないが、待ってまで食べるものではない。
とりあえずの昼食を摂ったが、どうも蕎麦一杯では腹が中途半端な気もしつつ、さらに門前町の見学を続けることにする。
坂本の町並み(南部地区) 町並みを一回りして戻ってくると「鶴喜そば」の客が捌けて待ち客がほとんどいなくなっていた。腹も中途半端なことだし、ついでに立ち寄ることにする。
左 老舗の看板 中央 登録有形文化財の表記 右 庭園付 注文したのは「鴨蕎麦の大盛り」。確かにうまいそばであるが、正直なところそれほど特別というほどでもない。大津線チケット呈示で飲食代が10%割引で1420円というのはCPとしてはウーン。
坂本の見学を終えると京阪と地下鉄を乗り継いで京都に乗り込む。紅葉シーズンの京都は大混雑で地上では渋滞なども発生しているのだろう。地下鉄に「バス振替口」と書かれた入口があったことから、バスが動かなくなっているのだろう思われる(数年前にそれでひどい目にあった経験がある)。目的地の京都市美術館周辺も大混雑であった。
帰りの京阪はなぜかポり車両
「竹内栖鳳展 近代日本画の巨人」京都市美術館で12/1まで京都画壇を代表する巨匠・竹内栖鳳の生涯に渡っての作品を一堂に集めた大展覧会である。
展示は栖鳳修業時代の作品から始まる。新しい日本画を目指しての模索、渡欧しての実験的な作品、さらには面白いところでは工業デザイン作品の展示などもある。円山派で学んだ写生・写実から西洋絵画的な技法までも貪欲に取り込んでいく栖鳳の種々の試みを目にすることが出来る。
さらに時代が下ってくると、以前のような写実に対するこだわりが薄れ、情緒面を重視したより伸びやかな画風が見られるようになってくる。新境地というものであろう。若い頃の精緻な技法から、晩年に至るに連れてぼかしなども使用した簡潔な技法になっていくという変遷は、川合玉堂などにも見られたパターンで、日本画家が辿る共通の軌跡なんだろうかなどと感じてしまう。
私は個人的には栖鳳は「動物画家」というイメージを持っていたのだが、実際に彼は動物の絵が多く、人物画は数えるほどしか描いていないという。その数少ない人物画の中の秀作「絵になる最初」などが印象的。ただ当展の目玉として一番観客を集めていたのは、やはり重要文化財の「斑猫」であった。
美術館を後にした時には既に夕闇が迫りつつあった。当初の目論見では後二、三カ所立ち寄るつもりであったのだが、朝に出るのが遅すぎた上に坂本で思いのほか時間を使ってしまった。残念ながら今回はタイムアップ。このまま帰宅と相成ったのである。
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