展覧会遠征 阪神編

 

 どうも心身共に疲労が溜まっているのか体調は絶不調である。しかしこんな時でも行っておきたい展覧会のネタは尽きない。そういうわけで今回はとりあえず車で美術館2館を回ってきた。疲労のせいか朝に起きることが出来ず、家を出た時にはもう既に午後になっていた。


「エル・グレコ展」国立国際美術館で12/24まで

 

 ベラスケス、ゴヤと共にスペイン三大画家に挙げられる巨匠の大規模な回顧展である。初期作品から晩年の作品までを一望でき、さらには彼の宗教画をその劇的効果をもなるべく再現する形で鑑賞することができる。

 彼の作品の特徴は引き延ばされた人物像と独特の色遣いである。ただその引き延ばされた人物像については、単に彼のクセといったものだけではなく、高所に飾られることが多い宗教画に対する鑑賞者の視点を計算してのものであるという。

 彼の作品、特に宗教画において一番特徴的なのがこの「計算」である。すべての画面構成がその場面を劇的に演出するために徹底して計算されているのである。ただそのような彼の作品を眺めていて私が感じたのは、果たして彼は本当に信仰心を持っていたのかということである。信仰篤すぎる画家の描く作品は往々にして自己陶酔に陥ってしまい、作品として凡庸になる場合が多い。彼のようにここまで計算ずくで作品構成をするには、ある意味でクールな頭が必要であり、信仰の場面を舞台演出のように取り上げる客観性が必要なのである。

 今となっては彼の信仰心のほどについては分からないが、とにかく言えるのは彼の残した作品は信仰心皆無の私でもその劇的構成故に十二分に楽しめるということである。

 なお彼の初期作品の中の女性の肖像画の一つについて、エル・グレコの真筆かどうかの真贋論争があるとの記載があったが、私の目から見てもあまりに他の作品とタッチや色遣いが違いすぎており、彼の作品とは感じられなかった。


 非常に見応えのある展覧会だっただけに、予定よりも鑑賞に時間を要してしまった。しかしまだ次の予定がある。夕闇が迫りつつあるのを気にしながら、神戸に車を飛ばす。ピックタイトルだけに閉館時間が延長されており、おかげで何とか間に合うことが出来る。

 


「マウリッツハイス美術館展」神戸市立博物館で1/6まで

 東京都美術館でじっくりと見ることが出来なかった展覧会の地元での再訪である。

 フェルメールを初めとしてオランダフランドル絵画の名品が並ぶが、やはり白眉はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。この作品はフェルメールの作品の中でもオーラが桁違いである。近くでマジマジと眺めると実はかなり早い筆致で描いているのではと思われるのだが、それにも関わらずここまで生々しさを感じるのは驚きである。見つめていると彼女の瞳に吸い込まれそうである。

 フェルメール以外でもレンブラントやルーベンスの名品もあり、ルーベンスの作品を見ていると思わずパトラッシュと一緒に昇天しそうになってしまった。

 とにかくじっくりとした鑑賞に堪える逸品ぞろいである。再訪の価値は十二分にあった。


 目論見通り東京よりは観客数が少なかったので、東京では遠くから軽く挨拶するのがせいぜいだった美少女と今回はじっくりと対話することが出来た。久しぶりに対面した彼女は相変わらず魅力的であった。

 

 これで予定は終了。後は例によって駐車場代がわりに大丸地下でフランクフルタークランツとバームクーヘンを購入してから家路についたのであった。

 

 

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