展覧会遠征 岡山編6

 

 どうも体調がパッとしない。こういう時にはあまり遠出をするべきではない。というわけで近場を考えた場合に浮上したのが岡山方面である。岡山と言えば県立美術館でモネ絡みの展覧会があるのでこれには行っておく必要があろう。またさらに足を伸ばせば行きつけの竹喬美術館もある。後は時間次第で山城等に立ち寄りも可能というあたりで適当な行き当たりばったり遠征に繰り出すことにした。

 

 出発は今回もいつもよりも遅め。例によって老カローラ2を駆って高速を突っ走る。そういえば高速の料金もこの春から変更の予定だったはずだが、政局の混乱に続く震災の混乱でズルズルと旧制度が引き延ばされている状況になっており、今後の見通しが不明である。民主党案は平日も含めて2000円上限だったのだが、今回の震災で財源不足のためにこの案は撤回になりそう。その場合に休日1000円が維持されるのか、それともまた昔の馬鹿高い料金に戻るのかは不明である。ただかつての馬鹿高い料金に戻せば、それでなくても低迷している地方の観光業にトドメになる可能性が高いので、それは無理ではないかと考える。となると中を取ったら休日2000円上限あたりが落としどころか。

 なお政治の混乱を避けるために政府が自民党に連立を持ちかけたという話があるが、どうやら元々政策の持ち合わせのない自民党は今更有効な政策なんて考えられないことから、全力で政府による復興策への妨害に徹するつもりの模様。こんな政党が最近まで長年に渡って政権を担っていたんだから、そりゃ津波一発でメルトダウンする原発も出来るというものである。まあ自民党に仕切らせたら、復興事業と称して意味のない高速道路や空港ばかりができあがるのがオチではあるが(実際に阪神大震災の後がこうだったのである・・・)。

 まあ今後のことは分からないが、とにかく今のうちは高速1000円を使い倒しておくのが得策と言うものである。山陽自動車道に乗ると笠岡出口まで一気に突っ走る。笠岡で高速を降りるとそのまま南下。そういえばここを訪れるのも久しぶりの気がする。

 


「金谷朱尾子−花と人を描く」笠岡市立竹喬美術館で4/17まで

 

 岡山生まれの日本画家・金谷朱尾子の花や人物画を中心とした展覧会。金谷朱尾子は最初は文学を好んでいたが、彫刻家の父・哲郎の「絵の世界はいいぞ、自由で」の言葉に触発されて絵画の世界を目指すことになったという。

 確かに彼女の作品を見ていると、その文学志向は現れているような気がする。人物画のことごとくが人物の内面をえぐるというか、さらに言えば彼女自身の心理を描こうとしている傾向が顕著なのである。またその表現手法は年と共に微妙に変化しており、若い頃のかなりシャープで激しいが、その陰に繊細な危うさがちらつくところから、晩年にかけての心境の根本に落ち着きが見られるところまで、いわゆる人間の円熟の過程が現れているように感じられた。

 つくづく残念であるのが、彼女が51才という若さでこの世を去ったこと。もう少し長命を得ていれば、更なる円熟の極地がその作品に現れていたであろうにと考えると、その早逝が惜しまれるのである。


 展覧会の見学を終えると、次の予定地へ向かう前に一カ所立ち寄ることにする。それは笠岡グランドホテル内にあるワコーミュージアム。その存在は大分前に知っていたのではあるが、今まで立ち寄る機会がなかったのである。

 ワコーミュージアムは笠岡グランドホテルの1〜3階のフロアの一部を区切って存在している。1階は市民ミュージアム的な雰囲気のフロアだが、展示されているのは笠岡由来の作家の作品で内容は多彩。二階には有名どころの絵画の展示があり、地元ゆかりの小野竹喬、さらには奥田元宋など意外と名品がある。また備前焼コレクションなどもかなりの物量。ホテル付属で入場料無料の美術館と少々侮っていたのだが、どうしてどうしてなかなかの見応えありである。

 

 ミュージアムの見学を終えた頃には昼時。ついでだからこのホテルのレストランのランチバイキングに参加することにする。

 このランチバイキングは1200円で1時間食べ放題というパターン。驚くほどにうまいというものは特にないのだが、普通に旨い。メニューも結構豊富で私はデザート類を中心にタップリと頂いた。この辺りはこれという飲食店もないし、CP的にはマズマズなのではないかという印象。実際に来客はかなり多かった。

 

 昼食を終えたところでとりあえず岡山まで高速で移動する。次は本遠征の主目的である。岡山出口で高速を降りると市街に向かって走るが、相変わらず岡山の街は車で走りにくい。しかも今日はいつにも増して車が多い模様。そしてその煽りが美術館にまで。なんと美術館の駐車場が一杯で駐車不能。他の有料駐車場を探してくれと言われたが、先ほどこの辺りを一回りした時に周辺のタイムズなどはすべて満車なのを確認済み。この辺りで一番大きな駐車場と言えば後楽園のものか。そこで後楽園を目指すがここが大渋滞。どうやら後楽園が花見のシーズンにさしかかっており、それが岡山市内が異常に混雑していた最大の原因。とにかくやたらに無駄に時間を浪費してようやく駐車場(と言ってもただの川原である)に到着。なおここの駐車場は後楽園の駐車場なので「必ず後楽園に入場して下さい」との表示がある(駐車場自体は無料)。私は元よりそのつもりだが、その前にまずは美術館の方に立ち寄っておく(この間も歩くと結構距離がある)。

 マンホールのふたにも岡山らしさが


「モネとジヴェルニーの画家たち」岡山県立美術館で4/10まで

 モネはジヴェルニーに居を構え、結局は人生の最後をそこで迎えることになったが、そのジヴェルニーの地には多くの画家が彼の名を慕って訪れており、村全体が画家のコミュニティのようになっていったという。そのようなジヴェルニーゆかりの画家の中でも特に大きな勢力であったのがアメリカから画家であるという。そのような画家達の絵を集めた展覧会。

 モネの名を慕って集まってきている画家達だけに、その手法は印象派的なものが大半であるが、ただその中にも自ずと特徴はある。どちらかと言えば当時のフランスの画家達に比べると保守的で写実的な傾向が顕著である。そのために一部の画家達からは印象派と言うよりはアカデミズムの匂いが感じられることもある。またアメリカ人画家と言えばアンドリュー・ワイエスを思い出すが、彼の作品にも通じる精密描写的な画風も多々あり、そのままアメリカ画壇の特徴の現れのようであり面白い。

 なおどうしても日本での知名度が今一つの画家の作品が多くなるので、最後のコーナーではモネの作品数点を集めて一挙展示をしていたが、客寄せ的にはこのコーナーが一番アピールがあったようである。


 美術館の見学を終えると後楽園に舞い戻る。いよいよ後楽園に入場である。後楽園は何度か来ているが、やはり相変わらずだだっ広い少々閑散としたイメージのある庭園である。個人的には兼六園のような変化に富んだ庭園の方が趣味に合う。なおここから見える岡山城は格好良い。あの城は中にはいるとゲッソリするが、とにかく外から見る分には実に絵になる城である。

    

 後楽園を一回り見学すると、土産物を買い求めてから次の計画を考える。既に昼を随分と過ぎていて今から山城を訪れるのは時間的にも無理だし、体力的にももうそろそろ限界。山城関係の予定はまるごと省略して、温泉にだけ立ち寄って帰ることにする。

 

 後楽園から次の目的地に移動する前に、その手前にある夢二郷土美術館に入館してみる。どことなく変わった外観の建物だが、内部は竹久夢二の作品を多数展示すると共に、当時の雰囲気を伝えるアイテムなども展示されている。ただやはり私には夢二の絵はやや下品に見えて趣味に合わない。恐らく女性に対するスタンスが私と彼では根本的に違うのだろうと感じられる。まあ女性関係皆無の私と、女性関係が極めて多彩というよりはハッキリ言って女たらしと言える夢二では、女性観が一致することがそもそもあり得ないが。

 これで岡山での予定は終了。とりあえず岡山市街を出ることにするが、これが予想以上の難行苦行。とにかく道路の混雑が半端でない上に、運転マナーというか、それ以前の次元のひどい運転者が多い。何しろ信号が赤に変わってから交差点に突入して中央で停車、そのまま反対車線の流れを延々と止めて悠々としている車が続出。またウインカーなんて使っている車の方が圧倒的に少ないぐらい。とにかくとてもまともなドライバーとは思えない。さすがに岡山は桃太郎の地だけあって、どうやら車の運転も猿がしているようである。

 「あり得ない!」「馬鹿かこいつは?」「こんな奴でも教習所を卒業できたのか?」あらゆる悪態が自然と口をついて出てくるような状況下を堪え忍びつつ、ようやく郊外にたどり着く。今まで各地を走行しているが、やはり岡山ダンジョンの難易度は桁違いである。マップは複雑(道が分かりにくい)な上にモンスターのレベルが高い(運転者のマナーが悪い)と来ている。正直なところここはいつも車では来たくないと感じる場所である。岡山で道路を走る時は、車のいない山の中に限る。

 

 山の中を走行することしばし、到着したのは「レスパール藤ヶ鳴」。岡山空港の近くにある宿泊設備も持った日帰り温泉である。実は当初の岡山案はここに宿泊して周辺の山城攻略も含めたものであったのだが、どうもわざわざ岡山で宿泊するのも・・・と考えているうちに面倒くさくなってしまったという経緯がある。

 泉質はアルカリ性のラジウム泉とのことだが、あまり特別な浴感はない。また内風呂に関してはやや塩素の臭いがしている。風呂の設備としては整っているが、肝心の湯の方が今一つの印象である。

 

 入浴後は施設内のレストランで夕食を。海老フライ定食は味的にはまあまあだったのだが、セルフ形式の店内があまり雰囲気がよいとは言い難く、CPも良いというほどのものでなくとにかく中途半端。万事施設全体に中途半端の印象がつきまとっており、ここに宿泊しなかったのは結果としては正解かもと感じた。それにこの辺りは周辺にあまりに何もない。

 海老フライ定食自体は悪くはなかったが・・・

 入浴と夕食を終えて帰途に就くが、その前についでに岡山空港を見学しておくことにする。岡山空港は典型的な地方空港だが、ソウル便などもあって一応は国際空港である。ただ施設内自体は閑散としており、便数もそう多くない模様。場所も岡山市街から遠すぎ、辺りにも全く何もない上に開発が進んでいる様子さえない。何となくこの一帯に赤字のオーラが漂っていた。また驚いたのは送迎デッキの入場が有料だったこと。これはさすがにあまりにせこいのではという印象。まあ金をケチって入場しなかった私はさらにせこいが。

  

岡山空港はなんと送迎デッキへの入場が有料

 これで本遠征は終了。出発が遅かったのと、岡山ダンジョンで無駄に時間を浪費したことで今一つメリハリのない遠征となってしまった。なお今回パスした山城は、また後日に機会を改めて訪問したいところ。ただ問題はどの機会にするか。岡山県立美術館に来ることはこれからもあるだろうが、やはり岡山は車では来たくないなと改めて感じた次第であり、そうすると車でここに来る機会が・・・。

 

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