展覧会遠征 和歌山編

 

 さて先週は鳥取に小遠征を行って疲れ果てた私。こうなると今週は近場でおとなしくしておくというのが賢明な判断である。そこで今回は金曜日に大阪方面の仕事が入ったついでに、そのまま大阪で宿泊してから翌日に和歌山方面に繰り出すことにした。

 大阪での仕事を終えると、例によって大阪での定宿にチェックインするととりあえず夕食に。夕食は通天閣周辺をウロウロとする。いわゆる一番大阪くさい「じゃりン子チエ」が闊歩していそうな世界である。東京の人間なんかはこんな風景を見ると、ガラが悪いと感じるようであるが(中には差別意識をむき出しにするちょっと頭がアレな輩もいるようだが)、この猥雑さこそが都市が生きている証拠の一つだったりする。

 いかにも大阪らしい通天閣

 辺りにはとにかく串カツ屋やタコ焼きやなどのソース系や粉物系が多く、この辺りもいかにも大阪らしい。ただ私の目的は別のところにある。途中の路地に入り込んだ先にその目的地があった。

 今回夕食を摂ったのは「グリル梵」。いかにも町の洋食屋といった風情で、中はテーブル3つほどの小さな店である。注文したのは「ヒレビーフカツレツ(1800円)」とライス。

 最初にスープが出てくる。いわゆるコンソメスープ系だがコクがある。店のおばさんの勧めに従って黒胡椒を加えるとややスパイシーになる。

 次にデミグラスソースがたっぷりとかかったビーフカツが登場。ここのデミグラスソースは、よくあるやたらに苦いタイプと違い、若干の酸味と共に甘みがある。私の好みにかなり合致したタイプである。肉の揚げ加減も柔らかくて良いし、実に文句の付け所のない内容。いかにも洋食屋さんというイメージの料理である。大阪にしてはやや価格が高めな気もするが、内容的には価格相応と言うところ。

  

 なおこの店ではこのビーフカツを使用したカツサンドが有名とのこと。このカツをパンに挟んだら美味しくないはずはなかろう。ただ価格も1800円とそれなりなので、そこが判断の難しいところ。

 ホテルに戻ると大浴場で入浴、早めに床について翌日に備えることにする。

  

☆☆☆☆☆

 

 翌朝は6時起床。とりあえず朝食代わりに買い込んでいたおにぎりを腹に放り込むとチェックアウトする。まずは南海新今宮から移動。ここで登場するのが先週手配したスルッと関西2DAY切符である。これで関西一円の私鉄は乗り放題。今回はこれを利用して和歌山遠征と同時に南海沿線の視察をしておくことにする。

 

 まずは羽衣まで移動。ここからは以前にJRの羽衣線視察に行ったことがあるが、今回の目的は南海の高師浜線。これは南海電鉄の支線である。高師浜線は南海本線から外れた行き止まりホームにつながっている。ここに待っているのは二両編成のロングシート車両。この最小編成の車両が往復運行しているようである。私が羽衣駅に到着した時には列車が到着した直後で、向こうから大勢の乗客が降りてきたが、こちらから乗り込む客はあまりいない。周辺の高師浜までは2駅なのであっという間に着く。終点は高師浜は住宅地の真ん中という感じで特に何もない。乗降客は隣の伽羅橋の方が多い。

左 羽衣駅高師浜線ホーム  中央 高師浜駅  右 周辺はごく普通の住宅地

 羽衣まで戻ってくると区間急行で泉佐野まで移動。ここから今度は空港急行で関空まで。関空自体は以前にJR関西空港線でやって来ているので特に珍しいものはなし。南海の路線はりんくうタウンを過ぎたところからJRと線路が共用になるので(こういうことが出来るのも、南海が狭軌だからだが)、まさにJRと大差なし。到着した関空駅もJRと南海で見事にカラー以外は相似になっているというのは笑えるところ。久しぶりに訪れた関空は相変わらず赤字垂れ流しオーラが渦巻いていてあまり好きになれない。

  

左 笑えるほど左右対称なJRと南海の駅  右 「鉄仮面」こと関空特急ラピード

 関空駅で「鉄仮面」ことラピードをやり過ごすと空港急行で泉佐野まで帰還、ここからは普通でみさき公園駅へ。みさき公園駅は休日のせいか、意外と降車客が多い。私はここから支線の多奈川線に乗車。ここも今では2両の最小編成車両が単線区間を線内折り返しをしているだけだが、途中の駅のホームは明らかに大きく(現在は2両分だけを区切って使用している)、かつてはもっと長大編成の車両が運行されていたのだろうと思われる。この沿線もかつてはフェリーが運航されていたり、大きな工場があったりと賑わったというので、その頃の名残なのだろう。ただ現在では見る影もないというのが正直な印象。

左 多奈川行き列車  中央 多奈川駅風景  右 多奈川駅駅舎

 多奈川で折り返してみさき公園に戻ってくると、和歌山市まで移動。とりあえず和歌山市駅でロッカーにトランクを放り込むと、駅内のうどん屋で腹ごしらえ。駅から出ないのは考えがあって、ここからついでに和歌山港駅まで行ってやろうということ。和歌山港からは徳島行きのフェリーが出ているが、その発車時間に併せて、1日に数本特急サザンが和歌山港まで延長運行される。この区間は一駅だけの単線区画だが、和歌山市街の外郭をグルリと回る感じで意外と距離がある(かつては中間駅があったらしい)。終点の和歌山港駅に到着すると、20人程度の乗客がフェリー乗り場の方に移動していき、それよりの多くの乗客が折り返しで乗り込んでくる。彼らは徳島からフェリーで到着した乗客だろう。私はこの駅で下車すると、駅前からJR和歌山駅行きの和歌山バスに乗り込む。これに乗り込んだ乗客は私以外は1人だけで、車内は閑散としている。

左 徳島行きフェリーターミナル  中央 和歌山港駅に到着  右 ここからはバスで移動

 バスを県庁前で下車するとまずは最初の目的地に向かう。

 


「ようこそ彫刻の森へ」和歌山県立近代美術館で9/5まで

 

 所蔵作品を中心とした彫刻作品を展示した展覧会。ロダン、ブールデルといったところから、マイヨール、ムアさらに近代彫刻まで幅広い。

 現代アート系作品については、絵画よりも彫刻の方がまだ面白いという印象。芸術的感慨とか意味とかはともかく、ゴチャゴチャと凝った造形は理屈抜きに面白かったりする。ただ現代アート系全般で言えるのは、作家によって芸風が決まっているということ。やっぱり一発芸なのか?

 


 美術館の見学を終えると、久しぶりに隣の博物館へ。実は今回はこっちが主題。

 


「長沢芦雪の動物画」和歌山県立博物館で7/19まで

 

 長沢芦雪は師匠の円山応挙の代理として紀州を訪れ、無量寺の竜虎図など多数の作品を残している。この時期に芦雪は応挙の束縛を離れて急速に自身の画風を確立していったと言われているが、そのような芦雪のこの地域に残る動物画を展示した展覧会。

 印象としてはとにかく自由に描いているという感を強く受ける。初期の犬の図などはいかにも応挙の描き方に近いが、精密描写を基本とする円山派の画風から離れ、より奔放な芦雪らしい作品の方向に向かっていっているのが分かる。

 何となくユーモラスな感じがあるのが、彼の作品らしいところ。正直なところ、そんなに師匠から離れて羽を伸ばして楽しかったのかなと言いたくなるのだが・・・。

 


 とりあえず美術館と博物館を回ったところで次の目的地へと向かう。次の目的地は「和歌山城」。と言うのも、よくよく考えてみると、かなり以前にここを訪問して以来一度も再訪していないことを思い出したから。和歌山城は言うまでもなく徳川御三家の一つである紀州藩の城で、あの徳川吉宗を輩出している。かなり大規模な城で100名城にも選定されている。なお戦前までは天守が残存したのだが、ここの天守もやはりあのアホな戦争のせいで焼失し、現在では鉄筋コンクリートによる外観復元の「なんちゃって天守」が建っている。なお現在残っている遺構は本丸及び二の丸であり、これは本来の城域の1/4程度だという。そもそも美術館や博物館、さらには県庁がある領域も三の丸だったというのだから、かなり広大な城であったことは明らかだ。

 現地案内看板より

 追廻門から入ると、南方向に回り込む。そこはかつて開かずの門であった不明門のあった辺りだが、ここは現在は駐車場になっている。そこから天守閣へと登っていく。和歌山城は平山城であり、天守閣は小高い山の上にある。疲労している足にはキツイが、最近連チャンで攻めている山城に比べるとなんてことはない。数分で天守閣に到着する。

左 追廻門  中央 追廻門内部  右 砂の丸は広場

左 この駐車場の奥が不明門  中央 天守閣へと登る  右 天守閣は工事中だった
 以前の訪問時の天守閣写真

 生憎と天守閣周辺は工事中らしく足場が組まれていて建物がよく見えない。残念ながらこれではやや興醒め。今回は天守閣に入場するのは止めて、近くの売店でラムネを飲んで一息つくと、本丸方向に降りていく。本丸はかなりの高台の上にあるが、今ではここに給水施設が出来ているので、関係者以外入場禁止とのことで閉鎖されている。この本丸から二の丸方面に降りていくが、この辺りはかなり立派な石垣が随所に見られる。

左 本丸はこの上  中央 本丸上は給水施設になっていて立ち入り禁止  右 本丸石垣

左 降りてくる途中にある井戸  中央 二の丸  右 二の丸から大手門に向かう

左 遠くに見えるのが大手門  中央 大手門と一の橋  右 この東側の堀が一番立派

 二の丸は広大な広場であり、いかにも公園化している。ここにはかつて二の丸御殿があったそうだが、今では見る影もない。ここからかつての門跡らしきところを抜けて大手門方面に向かうが、ここの石垣は最近に手を加えたのかやけに真新しい感じである。ここから二の丸東側の石垣沿いにずっと登ったところが大手門。これも最近に修復されたものらしいが、大手門という割には比較的簡素な高麗門である。ここに一の橋がつながっているが、ここを渡って東側に見える堀が一番幅も広くて立派である。

 とりあえず和歌山城の見学は今回はこの程度にしておく、どうせ和歌山は今後も何度も来るだろうし、その時に改めて見学することにする。とにかく広大な城であるので、一気に回ろうと考えてもしんどいだけである。

 

 和歌山城を出るとバスで和歌山市駅に戻る。ここから南海最後の支線である加太線の視察を行うつもりだが、その前に昼食。昼食は和歌山市駅の地下にあるラーメン屋で摂ることにした。出てきたラーメンを見るといかにも和歌山ラーメン的な色をしているが、やけに味が淡泊に感じられる。スープをすすってみるとそのまま旨い。ただ多分これが一番の問題。ここが使用しているストレート系の太麺ではこのスープだと麺に味が絡まないのではないか。いわゆる和歌山ラーメンのしつこいほどこってりしているスープだとこのタイプの麺でバランスが取れるのであるが・・・。

 

 加太線は和歌山港線と同様に和歌山市駅一番端の5,6番ホームから出ている。加太線の発着する6番線は行き止まりになっている模様。ここも例によって二両編成の最小構成だが、乗客はかなり多くて車内は満員である。列車は紀ノ川までは本線を通って、ここから分岐する。沿線はかなり宅地化しており、特に中間の八幡前までは人口密度もかなり多そうで、乗降客も多い。八幡前で対向車と行き違いをすると、ここから先は若干沿線人口が減少して、むしろ観光地ムードが出てくる。磯ノ浦駅の辺りから海が見えるが、駅を過ぎるとすぐに沿線は山になり、終点の加太駅までは若干の距離がある。この区間で初めて沿線の住宅が途切れる。終点の加太駅はそれなりの人口のある集落だが、雰囲気的には観光地と言った雰囲気が強く、乗降客もそれなりにはいる。多分夏本番になるともっと乗客が増えそうである。

左 加太行き列車  中央 磯ノ浦から先は山の中  右 加太駅駅舎

 これで南海電鉄完乗である。後は和歌山市駅に戻るとトランクを回収、難波方面へはサザンの指定席で帰ることにする。500円を払って指定席券を購入。さすがに別料金を取るだけあってシートはそれなりだが、近鉄特急と同様でテーブルがないのが不便。それにこれも近鉄特急と同様に速度がやや遅めなのはどうしようもないところ。

特急サザン指定席車内

 堺駅に到着するとここで普通列車に乗り換え、住吉大社駅で下車する。ここからは阪堺電気軌道に乗り換える。大阪に残された唯一の路面電車である阪堺電気軌道は、以前に恵美須町−浜寺駅前の阪堺線については調査しているので、この際に残った住吉公園−天王寺駅前の上町線について調査しておいてやろうという考え。

阪堺電気軌道風景

 住吉公園駅は南海住吉大社の駅前のゴチャゴチャした中にある。車両は小さいのだが乗客は意外に多く、次の住吉駅で乗り換えを含む多くの乗客が乗り込んできて車内はすぐに満員になる。ここからはしばらく専用軌道で、神ノ木駅周辺で高架で南海高野線をやり過ごすと、次の帝塚山四丁目辺りからは路面軌道へと突入する。そこからしばらく路面軌道を通り、再び専用軌道になって、また路面軌道に突入した頃には阿倍野駅になる。この辺りからは沿道がかなり繁華街。終点の天王寺駅前駅はどん詰まりの駅で、改札を抜けるとすぐに地下に潜ることになる。この周辺は一台乗り換え拠点である。

 

 これで阪堺電気軌道も完乗、後は地下鉄と阪神を乗り継いで帰宅することになったのである。今一つ主旨の曖昧な遠征であったが、そもそも仕事で大阪に出るのに合わせて急遽組んだ計画だったのでこの程度のものか。何やら南海と阪堺の視察がメインのような気が・・・私は鉄道マニアではないつもりなのだが。

  

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