展覧会遠征 名古屋編2

 

 冬の青春18シーズンもいよいよ終わりに近づいている。というわけで、この期間内に是非とも訪問しておく必要がある地域としては、やはり名古屋が浮上した。今回は久しぶりの名古屋訪問である。

 

 最近は名古屋方面に行くのも、新幹線を使用したり、自動車を使用したりなどとかなり「堕落」していたのであるが、今回は青春18切符を使用しての質実剛健(?)な名古屋訪問である。例によっての米原での「第4次スーパー席取り大戦」をくぐり抜けて、無事に名古屋に到着すると直ちに活動を開始する。最初は例によっての「どの駅からも適度に遠い」一番嫌な美術館の攻略から。


「開館20周年記念 モネ「印象 日の出」展」名古屋市美術館で2/8まで

 

 モネを始めとする印象派の画家達の代表的な作品を、各地の美術館から集めて展示した展覧会。マルモッタン美術館から来日した「印象 日の出」の公開が最大の目玉となっている。

 モネを中心として蒼々たる画家の作品を全国より集めているので、印象派のカタログを見るように初心者にも理解しやすい展覧会。また「印象 日の出」については、名前は耳にしても実際に目にしたことはなかったので感無量。実物を見てみると予想していた以上にサクッと描いてあるのがよく分かり、これが当時「未完成作だ」と酷評されたのも理解できるような気も。

 印象派好きならずとも、絵画に多少でも興味のある者なら訪問しても損はない。


 実は本展が今回の遠征の第一目的。これをクリアしたところで、次の目的地まで移動。ここは面倒なので徒歩で移動する。ただしその途中で昼食。ひつまぶしか味噌煮込みうどんか悩むところであるが、寒いので味噌煮込みうどんを食べることにする。久しぶりに山本屋本店に立ち寄り、名古屋コーチン入り味噌煮込みうどんとご飯のセット(2047円)を注文。

 

 グツグツと言いながらうどんが運ばれてくる。また例によって関西人には異常に思われる硬さの麺だが、麺類は硬い方が好みの私にはちょうど良いぐらい。味付けは出汁が結構効いていて、やはり以前に行った山本屋総本家の方よりも、こちらの方が私の好みに合うということを再確認。

 熱々のうどんでかなり身体がカッカしてきたので、ついでにデザートも頂くことにする。注文したのが「黒蜜バニラ(210円)」。和三盆を使用したという甘味が上品でなかなか口直しに最適の一品。

 昼食を済ませたところで、腹ごなしの運動を兼ねて次の目的地へと徒歩で移動。目的地に到着した途端に入場券売り場に行列。あまりの人気ぶりに絶句。


「大三国志展−悠久の大地と人間のロマン−」松坂屋美術館で2/1まで

 

 主に二部構成なっており、前半は三国志のエピソードをなぞる形で、三国志の物語を表現した絵画など。後半は三国時代にまつわる中国の出土品など、刀剣類や鏃などの武器類に装身具など。

 前半部についてはあまり目新しいものはないが、三国志のストーリーをよく知らない者なら、三国志を学ぶのにちょうど良いようにも思える。とは言うものの、そもそもそういう者は最初からここには来ないような・・・。後半部の博物展示についても特別に興味深いものはなく、今一つ何がメインなのか分からない展覧会であった。やたらに目についたのはゲーム調のイラスト。最後の武者ガンダムに至っては最早意味不明。


 ゲームなどの影響で、現実とはかけ離れたイケメン戦国武将が人気を博していたりするとのことだが、本展でも絶対にあり得ないようなイケメンの劉備・孫権・曹操などが登場していた。ちなみに実際の劉備はイケメンと言うよりは変わった面相だったようだし、曹操は背が低くて今一つ見栄えがしなかったと言われている。イケメンと言われていたのは美周郎と言われていた周瑜ぐらいであるが、彼にしたところであくまで三国時代のイケメンであり、当然ながら現在の美意識とは異なるはずである。歴史上の人物に想いを馳せるのは自由だが、ここまで実態とかけ離れてしまうと・・・。

 あり得ないイケメン三国武将。左から劉備・孫権・曹操。

 ここから地下鉄で一駅移動、この日の最後の目的地である。


「アンドリュー・ワイエス−創造への道程」愛知県美術館で3/8まで

 

 アメリカのリアリズム画家の巨匠として知られるワイエスの水彩画や素描を中心に集めた展覧会。彼の有名な作品はテンペラによる精密描写がされた作品であるが、それらの下書きとも言える水彩画やスケッチを集めることで、彼の構想の跡をたどることができると共に、彼がいかに身近な人々や風景を愛情を持って見ていたかも分かるのである。


 ちょうどこの日、アンドリュー・ワイエス氏が逝去されたとの情報が入った。ご冥福をお祈りしたい。

 

 これで予定は終了だが、まだ2時頃。このまま帰るのはいかにも勿体ない。そこでちょっと寄り道をする。栄から地下鉄に乗ると千種で降車、ここからJR中央本線に乗り換える。

 例によっての「21世紀の地域振興と交通について考える市民の会代表(自称)」としての視察活動である。今回の視察対象は城北線。そもそもは名古屋を迂回する貨物路線として計画されたが、それが後に旅客路線に転用された路線である。現在は中央本線の勝川と東海道線の枇杷島を結んでいる。運営はJR東海の子会社によってなされているが、JRの路線とは完全に区別されている。全線高架の複線非電化路線であり、武豊線と並んで愛知県内では数少ない非電化路線ということになる。

 勝川で乗り換えるのだが、城北線の勝川駅はJR勝川駅から徒歩で5分ほどかかる距離にあり、結構遠い。なおJR勝川線は現在高架化の工事中であるが、高架化後に城北線の勝川駅が統合されるという予定は目下のところないという。

 

JR勝川駅は高架化工事中

 ようやく勝川駅に到着。時刻表を見ると・・・もう発車時刻である。列車ははるか前方に停車しており、外に出た運転士がこっちの方を見ている。どうやら私が到着するのを待ってくれているようである。慌てて列車まで走るが、荷物は重いし日頃の運動不足も祟って思わず吐きそう・・・。

 城北線勝川駅はJRからかなり遠い

 乗車した列車はJR東海のキハ11型のセミクロスシート車である。運行はワンマンで行われており、車内を見渡すと乗客は数人。全線高架の路線は非常に見晴らしが良くて気持ちがよいが、それはそのまま設備投資の巨額さを物語っており、それの回収のために運賃が高価に設定されている(枇杷島→勝川で430円。ちなみにJRの同区間は320円)ことが嫌われて、利用者数はかなり低迷しているとの話である。高架である上に線形も良く、その気になればかなりの高速運転も可能なはずであるが、そこをディーゼルのキハ11型がトロトロと鈍重に走行していく。これでは巨額の設備投資も意味をなしていない。

 

ガラガラの列車が高架の上を走る

 終点の枇杷島までは16分程度。その間も乗客の乗り降りは一桁レベルだった。このままでは巨額の設備投資にもかかわらず存在の意義を問われそうである。そもそも貨物路線としてなら名古屋駅を迂回する意味はあるが、旅客路線となると名古屋駅を迂回することに意味はなく、しかも勝川にも枇杷島にも何かがあるわけではないので、どこもつないでいないという無意味な路線になってしまっている。頼みは沿線住民の利用なのだろうが、それがさっぱりの模様。そもそも同じ駅内に乗り入れている枇杷島は良いが、勝川の方はJRと距離がありすぎ。存在意義を出すとすれば、電化した上で中央線に乗り入れて高蔵寺で愛知環状鉄道と直結、岡崎への東海道線の迂回路としてのルートとして確立させるぐらいか。それでも存在意義はあまり濃くはない。

 すぐに枇杷島駅に到着

 なぜか愛知にはその存在意義を問われるような鉄道路線が多い。リニモ、あおなみ線などいずれも過剰な設備投資が赤字の原因となっており、ここと似たような状況だ。そう言えば小牧にもピーチライナーという高架の新交通システムがかつて運行されていたが、これも累積赤字が原因で十数年で廃止されている。どうも愛知ではトヨタ様に媚びを売るために、政治家などが介入して意図的に鉄道政策を失敗させているのではないかとまで勘ぐりたくなってくる。

 ちなみにかつてアメリカでは自動車会社が鉄道会社を買収した後、運行本数を減少させて意図的に利便性を悪くし、利用者が減ったところでそれを口実にして鉄道路線を廃止、結局はその町は車なしでは生活できなくなるというような、公共の利益に反することがおおっぴらになされていたという。そのような悪行の限りを尽くしたビッグ3も、今や存続のために国家の支援を仰ぐ羽目になっている。盛者必衰と言うべきか、それとも自業自得と言った方がよいか。

 枇杷島駅に降り立った時には3時過ぎ。まだ若干早い時間ではあるが、今回の遠征は荷物が異常に重かったせいで疲れてしまった。早めに帰還することにするのだった。

 

 

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