2016年度ライブ総評

 

 2016年度も終了と言うことで、例によって私流の本年度のベストライブとワーストライブを選定しておくことにした。異論・反論等はあるだろうが、これはあくまで私の趣味と偏見に基づいての私選ということでお許し願いたい。

 

 

ベストライブ

 まずはベストライブだが、今年は名演目白押しで3つでは足りないのでベスト5を選ぶことにした。なおこれでも入りきらなかった名演もあるので、結局は番外という形で追加した。

 

第5位

 レナード・スラットキン指揮 フランス国立リヨン管弦楽団

 

 キラキラとした輝きのあるサウンドが最大の魅力。特にラヴェルの作品ではその特徴が遺憾なく発揮された。その一方、「展覧会の絵」では一転して渋い音色で堂々と鳴らしてきて、このオケの実力のほどと表現の幅の広さをうかがわせた。

 

第4位

 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 バンベルク交響楽団

 

 分厚いサウンドで豪快に押してきた堂々たる演奏。オーケストラをバリバリ鳴らしつつ、ここ一番ではバシッと引き締めてくるブロムシュテットの名人芸が光った。アンコールでの「エグモント」が一番の圧巻。惜しむらくはこの組み合わせでブルックナーを聞きたかった。

 

第3位

 ユーリ・テミルカーノフ指揮 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団

 

 堂々とした巨匠テンポで決して煽ることなく風格を感じさせたショスタコの5番が圧倒的。ピアニッシモからフォルテッシモの最大エネルギーまでダイナミックレンジの広さにも驚かされる演奏であった。

 

第2位

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮 サンフランシスコ交響楽団

 

 オケが秘めた凄まじい爆発力を巧みに制御しつつ、決して慌てずにゆったりとしたテンポでスケールの大きな演奏を行ったマーラーの巨人が見事。既に聞き飽きた感さえあるこの曲を、こういう演奏もあり得たのかと新たな感動を呼び起こされた。

 

第1位

 マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

 

 まさに天上の音楽とさえ感じられたマーラーの9番の名演については忘れがたい。バイエルンの安定した分厚いサウンドはさすが。

 

番外

 サー・ネヴィル・マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団

 

 マリナーが達者な様子で手勢を駆使して見事なベートーベンを聴かせてくれた。その健在ぶりから、必ず来年もまた来日してくれると思っていたのだが・・・。合掌。

 

 ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 読売日本交響楽団

 

 巨匠によるまさに巨匠らしい演奏。特徴的な長い指揮棒を振り回しての堂々たる指揮ぶりに、これがショスタコの正しい演奏だと言わんばかりの演奏であった。指揮者が変わればここまで読響のサウンドも変わるのかと驚かされた。ロジェストヴェンスキーの健在ぶりだけでなく、読響の実力も感じさせた名演。

 

 プラハ国立歌劇場 オペラ「魔笛」

 

 私をオペラに本格的に開眼させた見事な演奏内容であった。オペラというものの面白さを思う存分味合わせてくれた。

 

 

 

ワーストライブ

 名演が相次いだ2016年度にも、思わず首をかしげるような「迷演」もいくつかあった。その中からワースト3を。

 

第3位

 ヤニック・ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団

 

 軽さとぬるさばかりが目立って、今ひとつ精彩を欠く演奏になってしまっていた。フィラデルフィア管弦楽団もヴィルトーゾオーケストラと呼ばれたオーマンディの頃の栄光は遙か彼方か。

 

第2位

 コルネリウス・マイスター指揮 ウィーン放送交響楽団

 

 オケは決して下手ではないのだが、それを率いるマイスターが何をどう表現したいのかが全く伝わってこなかった。非常に空回りの印象が強い内容。昨年のヒメノを思い出した。

 

第1位

 リオール・シャンバダール指揮 ベルリンシンフォニカー

 

 これは純粋にオケが下手すぎ。ここまで下手くそなオケは今までで初めて。弦楽セクションがあまりに貧弱なせいか、ソリストが第一バイオリンのパートまで演奏していたのには驚かされた。まさに次元の違う下手さで呆気にとられてしまった。

 

 

2016年度はアメリカ、フランス、スペインなどのオケが来日したが、それらの中から名演が出た。サンフランシスコ交響楽団の演奏は圧巻の一言であるし、フランス国立リヨン管弦楽団もなかなかの名演も見せてくれた。またまた惜しくもベスト5には入っていないが、スペイン国立管弦楽団もなかなかの名演であった。また変わったところとしては、指揮者減点があったもののハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団もかなり技術の高さを感じさせた。

 

 一方で期待外れだったのはワースト3位のフィラデルフィア管弦楽団にシカゴ交響楽団。いずれも名の通った一流オケであるが、フィラデルフィア管弦楽団については過去の栄光はいずこにと思わせる精彩を欠いた演奏であったし、シカゴ交響楽団についても今ひとつ納得できるレベルの演奏ではなかった。なお昨年度はワーストの方に入ったウィーンフィルだが、今年はさすがの堂々たる演奏を聞かせてくれた。

 

 昨年度同様にランキングのほとんどが外来オケになってしまったが、これは例によって外来オケの方が評価が極端になりやすいことによる。国内オケだけでベストを選べば、読響以外では新日フィルのマーラー8番、東京フィルのマーラー5番、さらに札幌響などが入るところ。ワーストについてはセンチュリーの「アレクサンドル・ネフスキ」、日フィルのマーラー5番などだろうか。なおインバル指揮の大フィルは一曲目のモーツァルト25番はワースト、二曲目のマーラー5番はベストにそれぞれランクインしそうなほど同一コンサート内で極端に明暗の分かれる演奏だった。以前から言われていることだが、大フィルのホルンの不安定さはどうにかならないものか。 

 

 

戻る