展覧会遠征 大阪・名古屋編

 

 この週末は大阪でのコンサート及び名古屋方面に出向くことにした。

 

 水曜日の仕事を終えると大阪に駆けつける。今日はフェスティバルホールでの大フィルの定期演奏会。コンサートの前に夕食を摂りたい。大阪駅前第二ビルの地下にある「グリル北斗星」に立ち寄る。「デラックスバンビセットの大盛り(1330円)」を注文する。

  

 オムライスにカツにハンバーグ、魚フライ、鶏の唐揚げなどを盛り合わせたプレート。オーソドックスな洋食でなかなかにうまい。ただいささか食い過ぎたとは思う。

 

 夕食を終えるとフェスティバルホールへ移動。場内は8割以上の入りと言うところか。

 


大阪フィル第513回定期演奏会

 

指揮:尾高忠明

 

<曲目>

モーツァルト/交響曲第39番 変ホ長調 K.543

モーツァルト/交響曲第40番 ト短調 K.550

モーツァルト/交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

 

 尾高の指揮はオーソドックスに見えるが、実は意外に結構細かい仕掛けが多い。大フィルは結構緻密なアンサンブルを聴かせている。ただ一つ非常に気になるのはホルンの音程。以前から言われているが、大フィルのホルンは安定性がない。今回のような室内楽的演奏になると、それが顕著に弱点として露呈する。

 また大フィルの14管編成は、いかにアンサンブルに力を注いだとしても、モーツァルトの曲に対しては大編成過ぎる感は否定できない。結果として、残念ながら特段印象に残らない演奏となってしまったのである。


 コンサートを終えるとホテルに移動する。今日宿泊するのは新今宮のホテル中央オアシス。ホテルに入ると入浴。このホテルは大浴場はないが、部屋の浴場がトイレとは分離しているタイプ。やはりこのタイプでないと落ち着いて入浴できない。

 

 入浴を終えると持参したBDプレイヤーでヒストリアを見てから就寝する。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 この夜は爆睡。翌朝は8時に目覚ましで起こされる。とりあえずテレビなどを見ながら朝から入浴。今日は14時からの関西フィルのコンサート以外の予定はないので、チェックアウトしたのは10時頃。

 

 とりあえず朝食を摂る必要があるので「ミンガス」に立ち寄るが、どうもカレーを食べる気がしないので「朝定食」を頂くことに。カレー店で食べるだし巻き定食というのも妙なものだが、これはこれで結構いける。

 朝食を終えたがまだ11時前。開演時間まではかなりあるが立ち寄る先もなければ、昨日からどことなく風邪気味でうろつく体力もない。仕方ないので西梅田のネカフェにおこもりして時間をつぶすことに。

 

 アイアムアヒーローを最後まで読んだが、あーあ、やっちゃったなというのが正直な感想。ストーリーに大風呂敷を広げすぎた結果まとめそこなって、とうとう最後は作者が逃げ出してしまったようだ。実のところ最近はこういうふうにラストでしくじる作品が非常に多い。それはそもそも、連載漫画の毎回の人気投票の結果に一喜一憂しすぎるせいで、票をかせぐのに無理矢理にでも毎回クライマックスを持ってくる必要があるから。結果としては毎回無理矢理に謎や伏線らしきものを適当に放り込むことになる。しかしそんなことをしていたらラストまでを見通した堅牢なストーリーなんて書けるはずもない。毎回毎回、行き当たりばったりで無理矢理話を広げ、結局は収拾をつけられずに無理矢理終わりということになる。読者が「この後はどんな展開になるんだろう」とワクワクしていたら、作者は「この後は一体どう展開したらいいんだ」とオロオロしているという次第。こういうやり方を最初に導入したのは少年ジャンプだが、下手に部数が増えたものだからこれに倣うところが多くなった。だから私はジャンプ方式こそが日本の漫画を駄目にした諸悪の根源だと断言している。最近はドラマなども同じようになっている。その結果として、シナリオの作り手のレベルが著しく低下するということになる。おかげでここのところは脚本で失敗している映画も実に多い。四半期の営業成績ばかりを気にする馬鹿経営者が増えたせいで日本の大企業が軒並み駄目になったのと同じ構図が、創作の世界でまで発生している。

 

 開場時刻の手前辺りでネカフェを出ると、まだ腹はあまり減っていないので「段七」でラーメンを軽く一杯腹に入れてからホールに向かう。


関西フィルハーモニー管弦楽団第288回定期演奏会

 

[指揮]オーギュスタン・デュメイ

[ピアノ]横山幸雄

[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

 

フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

サン=サーンス:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 op.22

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」 op.9

デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」

 

 一曲目は横山の伴奏でデュメイがいきなりいい音色を聴かせてくれるが、二曲目はデュメイをバックに横山が縦横無尽に暴れ回るという印象。三曲目四曲目もかなりノリの良い演奏であり、いつもややおとなしめの関西フィルにしてはかなり元気な演奏であった。デュメイ自身も今まで見た中で一番ノリが良かった印象。


 非常にノリの良い楽しいコンサートであった。洒落たフレンチと言ったところか。関西フィルでこういう雰囲気は結構珍しいように思う。

 

 コンサートを終えると名古屋に移動。新幹線の中では疲れが出てしまって爆睡しているうちに名古屋に到着する。

 

 夕食を摂るために名鉄百貨店のレストラン街に行くが、うなぎ屋はいつものように大行列で80分待ち。馬鹿らしいので隣の山本屋総本店に入店する。

 

 久々の味噌煮込みうどん。相変わらず麺が死ぬほど固い。それに関西人からすれば考えられないほど下品な濃厚な赤味噌。しかし最近はこの下品さがクセになるというか、年に何度か無性にこれが食べたくなる時があったりするんだよな・・・。私もかなり赤味噌王国に洗脳されてきたか?

  

 夕食を終えたところでホテルに移動。今回は名古屋ビーズホテルを予約している。ホテルの送迎バスが駅前から出ているのでそれで送ってもらう。このホテルは大浴場があることと、この送迎バスが非常にありがたいところ。 

 

 ホテルに入るとしばらくマッタリと休憩するが、やはり昼食が軽かったところに夕食がうどんでは腹が中途半端。かといって今からガッツリひつまぶしというのも明らかに過剰。何か適当なものがないかと町に繰り出したところ、橋を渡ったところで串カツ屋「串カツ田中」を見つけたので入店する。

  

 串カツを数本頂いて、コーラや冷やし飴を飲んでといったところで、支払いは2500円ほど。味も良かったし、まずまずのところ。「大阪伝統の味」と書いてある店に名古屋で入っている私もかなりマヌケだが。

 ホテルに戻ると入浴。大浴場があるホテルはこういう時にありがたい。風呂から上がると疲労が出てくるので早めに就寝する。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は8時に起床。かなり長時間寝たが、それでも体に怠さが残っているのは最近毎度のこと。どうも睡眠力が落ちているようでよろしくない。それにのどに違和感がある。やはり数日前から風邪気味である。

 

 朝食はパンとスープの簡易朝食。これがこのホテルの最大の難点。これで朝食がもっとしっかりしていたら満点なんだが。

 

 さて今日の予定だが、6時45分からのセントラル愛知交響楽団のコンサートを聴きに行くのが最も大きなもので、後はこれといった特別な予定はない。ただ頭の中にある一つは、最近に重伝建に指定された有松を見学に行こうというものがある。特に予定がキツくないので、10時頃まで部屋でゆったりと過ごすとバスで名古屋駅まで送迎してもらう。

 

 名鉄に乗るのは久しぶりである。それにしても名鉄の名古屋駅は手狭だ。本来ならターミナルになるべき駅なのに、スペースの関係で線路が2本だけの通過駅仕様。ここを全路線の列車が通過するので、数分おきにひっきりなしに列車が来ることになる。

   有松駅

 有松まではそう遠くない。有松駅を降りると駅前には重伝建関係の案内板が立っている。どうも重伝建指定を積極的に観光に利用しようとしている模様だ。実際に町並みを歩くと商売をしている家も結構多く、こういう場合は概して重伝建の運営がうまくいく場合が多い。

 

 有松は東海道の沿いの茶屋町であるが、尾張藩によって鳴海宿と池鯉鮒宿の間に設置されたとのこと。そもそもこの辺りは松林が生い茂った非常に寂しい地であり、盗賊の類いが出没することがあると言うことで、治安の意味でもこの地に集落を設ける必要があったのだという。諸役免除などの特典で移住者を募集したところ、それに応じる者が8名現れてそれが最初の集落になったという。しかしこの地は農業を行うには狭すぎる土地(明らかに斜面が多すぎる)だったため、副業として絞り染めが発展したという。当初の町は1784年の大火で全焼したが、その後に藩による保護策などによって新たな街並みが復興、瓦屋根のうだつの上がった町並みがその時に整備され、その多くが現在も残存しているとのこと。

駅西側の町並み

 町並みは川沿いの低地に伸びている。歩いて一回りして見るが、それにしても町並みの完成度はかなり高い。他の重伝建でもここよりも町並みとして揃っていないところは多い。ここが今まで重伝建に指定されていなかったのがやや不思議なぐらい。全国にはまだまだ隠れた重伝建クラスはありそうだ。

駅東側の町並み

裏手の川筋に回り込む

 町並みを西から東まで一渡り見学したところで、町並みの中にある日本料理店「やまと」に立ち寄る。古民家をレストランとして使用しているようで、二階の和室が客席になっている。注文したのはランチメニューの「一期一会(2160円)」

 いわゆる典型的な会席料理。普通にうまいんだが、やはり和食の常でボリュームはやや不足。私にはいささか上品すぎるか。

  

 昼食を終えるとこの近くにあるという桶狭間古戦場公園に立ち寄ることにする。バス停に行くが、生憎とバスは出た直後で次の便は20分以上先。Google先生にお伺いを立てたところ、目的地までは歩いて20分とのこと。Google先生は結構健脚だから大丈夫かなという不安はあったが、次のバスを待つ気もしないので歩き始める。

 

 有松からはかなり上り坂を進むことになる。左手に小高い丘をみながら回り込む形。私ならここに城郭を構えるがと考えていたのだが、後の調査によるとここは高根山と呼ばれるこの辺りでの最高地で、やはり桶狭間の合戦時には今川方が陣をしいていたらしい。この先にはそのものズバリの幕山と呼ばれる地域があり、こちらもやはり今川方が陣をしいていた場所らしい。

 

 桶狭間古戦場公園はその奥。公園内には今川義元と織田信長の像が建てられているが、街道一の弓取りとの二つ名の通り、義元は弓を持ったなかなかにりりしい像になっている。どうも一般的には義元と言えばゴジャルゴジャルのお公家さんイメージで描かれることが多いが、実際はこちらの方が正しいのでは。もっともこの義元の隣で槍を持って立っている信長がいささか貧相。まあ駆け出しの戦国大名だから、これも実際に近いか。

    

 この公園の構造自体が桶狭間合戦のジオラマになっているといういささか凝ったものである。公園を一回りしたら、合戦での布陣や辺りの地形などが理解できるという趣向。

 帰りは歩く気力がないので幕山からバスに乗って帰ることにする。ちょうどこの辺りの巡回バスが数分後に到着する。バスで有松に戻ってくると名鉄で名古屋に戻る。

 

 名古屋に戻ってきたところで次の立ち寄り先だが、四間道を訪ねてみることにする。聞くところによると趣のある町並みがあるとのこと。Google先生によれば、名古屋から徒歩で15分程度とのこと。

四間道の町並み

 四間道は幅の狭い道に面して、古びた町並みが並ぶところ。ただし古いといっても江戸時代と言うよりは昭和レトロの風情。かなり古い家もあるがそれは数軒。全体としては震災で完全に失われたかつての古き良き長田の町並みに近いか。

 

 ただ飲食店が多いと聞いていたのでお茶でもしたいと思っていたのだが、店の大半はいわゆる飲み屋系のようで、3時現在ではすべての店が閉店中。一軒だけ見つけた喫茶店は待ち客がいる状態。結局はこれといった立ち寄り先もなく、何をするでもなく一回りして帰ってくるだけになってしまう。

 

 もう何もすることがなくなってしまったので、ホテルまで歩いて帰ると入浴。後はマッサージチェアで体をほぐしたりなどしてマッタリと時間をつぶす。

 

 再びホテルを出たのは5時過ぎ。ホールに行く前に夕食を摂ることにする。味噌煮込みうどんはもう食べたので、後はひつまぶしか。遠くにまで行く時間はないので、ホテル近くの「澤正」に入店。ひつまぶし(3500円+税)を注文。

  

 パリッとしたうなぎはうまいのだが、やはりいささかボリューム不足は否めない。ここはうなぎと日本料理の店とのことだが、実際は高級日本料理店というのが正しい位置づけか。

 

 夕食を終えると歩いてホールへ。このホールに来るのは二回目で、前回もセントラル愛知のコンサートだった。ただその時は曲目が山田耕筰の交響曲というかなりの変化球だったせいで、オケの実力を測りかねていた。そこで今回というわけである。なお今回のコンサートを選んだのは、指揮者のスワロフスキーに興味があるから。

   夜の名古屋の町並み


セントラル愛知交響楽団第158回定期演奏会 〜モノラル・ステレオが交差する素朴な旋律〜

 

指揮/レオシュ・スワロフスキー

ヴァイオリン/アンドレイ・バラノフ

 

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」Op.5 序曲

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調Op.63

チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64

 

 一曲目のルスランとリュドミラだが、この曲は弦が下手だといきなり演奏が崩壊してしまうという危ない曲。しかしセントラル愛知はこの曲を全く問題なく室内楽的アンサンブルで演奏する。やや金管が吠えすぎの感はあるが、ノリも良くまずまずの演奏。

 二曲目はソリストのバラノフのテクニックがかなり前面に出る。なかなかに堂々たる弾きっぷりでオケを引っ張っていく。

 三曲目はスワロフスキーの技が光る。セントラル愛知は10編成の小規模オケだが、その規模の小ささを感じさせないぐらいのパワーを炸裂させる。これはしらかわホールの小ささも幸いしているようだが、この曲をやる時に懸念した音量不足は感じさせない。またスワロフスキーはただ大音量でぶっ飛ばすだけでなく、突然に音量を最小まで絞ったりなど、かなりメリハリの強い演奏。その指揮に弦楽陣はなかなか見事に追随していた(金管に関してはそもそもダイナミックレンジがやや狭めで、特に小音量には対応し切れていなかった部分があるが)。結果として熱演と言って良い演奏になっていた。


 感想としては「意外とやるなセントラル愛知」というところ。またやはりスワロフスキーはうまい。今後注目したい指揮者の一人である。

 

 夕食のひつまぶしがややボリューム不足の感があったため、ホテルへの帰りに「地鶏屋本店」に立ち寄り、名古屋コーチンを始めとする焼き鳥を10本ほどつまんで帰る。

 焼きが絶妙でうまい焼き鳥だ。特に締めで注文した焼きおにぎりが、表面はパリパリで中はもっちりという絶品。ただとにかく注文してからの時間がかかるのが難点。焼きおにぎりなどは焼くのに10分以上かかっていた。

 腹を膨らませてホテルに戻ると、もう一度入浴する。今日は有松で歩き、名古屋で歩き、さらにホールまで往復しで1万8千歩以上歩いている。体をほぐしておかないと明日の行動に響く。

 

 入浴を済ませると一息ついてから就寝。明日は今日よりも早めに行動する必要がある。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は6時半に起床すると直ちに朝食、7時50分発のバスの予約を入れてから素早くチェックアウト準備を行う。今日は名古屋発8時半の近鉄特急で名張を目指す予定。名古屋に8時頃に到着すると、飲み物を買い込んだりの乗車準備。

 

 今回事前に特急券を手配したのはビスタカーの2階。眺望の良い座席なのだが、残念ながら朝日がまぶしいせいでほとんどカーテンを引きっぱなし。

ビスタカーの車両

 名古屋を出た時点では3割程度の乗車率だが、四日市に到着した時点でかなり大量に乗り込んできてほぼ満員。地形的に考えて、四日市から大阪方面にアクセスすることを考えた場合、この近鉄特急が最速達ということになるのだろう。三重エリアでは近鉄が圧倒的な強さを誇るという所以でもある。ちなみにこの三重地域でのJRの惨敗ぶりを反映してか、なぜか三重県内にはJRの駅レンタカーがない(JRが通っているはずのない佐渡島でさえ駅レンタカーがあるのに)。ちなみに全県でJRの駅レンタカーがないのは三重以外では沖縄だけである。実はこのせいで、今日は津で宿泊してレール&レンタカー切符を使うという最初のイメージプランが破綻して、予定変更になった次第。

 

 1時間以上かけて名張に到着すると、バジェットレンタカーの営業所へ。これが10分ぐらいかかる。キャリーをゴロゴロ引いての移動は面倒くさい。

   名張駅に到着

 貸し出されたのはパッソ。トップヘビーの運転しにくい車だ。これでこれから山道を走ることになる。

 

 最初に目指したのは「北畠氏館」。続100名城に指定された施設である。

 

 名張から国道368号を南下する。最初は対面2車線の綺麗な道路だったのだが、あるところから突然300番台国道が牙をむく。急に道幅が狭くなり、いわゆる1.2車線道路に。しかしそれにも関わらず車は意外に多いので、大きな車が来た場合にはすれ違いに大騒動。

 

 難所を抜けてようやく道が良くなった頃に国道369号との分岐に到達、ここには道の駅みつえがあるので休憩に立ち寄る。ここはいわゆる産直売り場に入浴施設があり、飲食店も併設している。そこで若干早めだがここの飲食店「お食事処山桜」で昼食を摂ることにする。

  

 注文したのは「ぼたん鍋膳(1400円)」。やはりこの時期に山の中でといえばメニューはこれだろう。味はまずまず。ただやはり名古屋寄りのぼたん鍋かなという気がする。個人的には丹波篠山のぼたん鍋の方が好みに合う。

 昼食を終えると「北畠氏館(北畠神社)」に向かう。ここからはすぐに到着する。

  

 入口の前に車を置くと、まずは神社の見学。要はこの神社のある場所がかつて北畠氏の館があった場所だという。15世紀末〜16世紀初頭ぐらいに大規模な造成が行われ、中世城館では日本最古となる南北2列の石垣が設けられたとのと。

    

 神社内には北畠顕家の像が立っている。北畠顕家は南朝方の将として足利尊氏と激戦を繰り広げた武将で、激戦の末に何度か尊氏軍を打ち破っているが、最後は阿倍野で露と消えたという。その時、弱冠21歳。美少年だったとの話もあり、何かと創作の主人公になるべき要素の揃っている人物でもある。ちなみにNHKの大河ドラマ「太平記」では後藤久美子が顕家を演じたとか。ここの像にも北畠顕家公という名の脇に「花将軍」という名が添えられている。誰か少女漫画家が彼を主人公にした作品を描けば、聖地巡礼の歴女がわんさか訪れそうだ。ちなみに調べたところによると、「花将軍 北畠顕家」という小説は既にあるようだから、後は誰かが漫画にするだけである。ちなみにこれが戦国時代の人物だったら、当の昔にアニメ化されているだろう。そういう意味では南北朝騒乱というのはこの手の作品の新たな舞台設定として狙い目かも。楠木正成とか美形にしたらうけそうなキャラにも事欠かないし。

 

 ここの神社ではいろいろと発掘されて出土品もあったようだが、現地自体は特に建物等が残っているというわけでもなく、どちらかと言えば遺跡に近い。ザクッと一回りすると山上の詰城や霧山城の見学に向かうことにする。北畠神社の脇から「北畠詰城」を経由して霧山城に到達する登山道が出ているので、これを進むことにする。

   山道を登っていく

 詰城までは10分程度で登れる。北畠神社を眼下に望む場所にあり、一段高い郭とその周辺の郭からなるシンプルな構成。いざという時のためのお籠もりの城だから、まあこんなものだろう。背後には尾根筋が続いており、これが霧山城につながる。なおこの尾根筋は堀切で断ち切ってある。

左 詰め城に到着  中央 見晴らしは良い  右 裏手は一段高い曲輪が

左 登ってみたが鬱蒼としている  中央 裏手は崖  右 尾根筋は堀切で断ち切ってある

 「霧山城」に向けて登山道をさらに進むが、ここからがかなりキツい道のり。最近の運動不足が祟って足が前に出ない。それにも関わらず断続的にかなり急な傾斜もあるというなかなかにキツい道になっている。実際には詰城と霧山城は一体となった城郭であるという。そう考えると詰城は霧山城の出城と言えるか。

霧山城へは尾根筋をひたすら登っていく

 霧山城は山の尾根筋に曲輪を連ねていたようだ。登山道は谷筋を上っていく形になるが、ここを登っていたら両側の尾根筋から狙い撃ちである。矢の雨の中で敵兵はバタバタと倒れということになるんだろう。

そこを抜けると今度は谷筋を登ることに

 途中で鐘突堂跡との分岐がある。ここが霧山の山頂になるらしいが、山頂にはスペースは大してなく、ここは本丸手前の出丸及び見張り台というようなところだろうか。向こうの山上に見えている本丸へはここの脇を抜けて進むことになる。

左 もう一がんばり  中央 小さな削平地に出る  右 その先が鐘突堂跡への登り

左 鐘突堂跡は霧山の山頂になる  中央 向こうに見えるのが本丸  右 見晴らしが良い

 最高所に本丸があり、脇に米蔵と記された小曲輪がある。向かいには堀切を隔てて櫓との表示のある土塁に囲まれた曲輪があるが、これは二の丸と考えて良いだろう。これらを合わせるとそれなりの面積があり、ここだけでも結構多数の兵が籠もることが出来る。この曲輪だけでなく山上全体が要塞であると考えると、数千人単位の兵力が立て籠もることも可能であると思われる。まさに中世の大要塞である。

左 鐘突堂から回り込む  中央 登った先の右手が櫓、左手が本丸  右 櫓(二の丸)
 なかなかの風景

左 堀切を隔てて本丸が見える  中央 本丸  右 本丸の一段下が米蔵

 

 霧山城の見学を終えて山を下りてきた時には1時間半が経過していた。かなり疲れたのだが、その割には心地よさもある。やはり山で汗を流すのは良い。クタクタになった体とは逆に、久々に精神的には充実感を得ていた。

 

 近くにあるふるさと資料館なるところに立ち寄るが、ほとんど開店休業状態。どうやら元々は入場料300円だったようだが、それが無料になった模様。多分300円払って入場する者がほとんどいなかったのだろう。ただ無料になっても入館者はほとんどいなそう。展示品はどこにでもよくある考古博物館と民俗史料館を併せたようなもの。ザクッと一回りして後にする。

  

ふるさと資料館と展示してあった北畠館復元模型

 帰る前にここの近くにある道の駅美杉に立ち寄る。夜食に饅頭とか買い求めると共に、駐車場に車で出店していた「森のキッチンシカヤマ」の鹿肉料理という表示に惹かれる。ただ鹿カレーや鹿カツレツを腹に入れるには少し重いので、鹿の肉まんを買い求める。意外にジューシーでなかなかにうまい。これだと誰でも鹿だと意識せずに普通に食べられるのでは。日本人よ、もっと鹿肉を食え。

 鹿肉を食った後は再び山道を突っ走って名張まで戻ってくる。時間に余裕があれば道の駅みつえで入浴することも考えていたのだが、霧山城は私が思っていた以上の堅城(と言うよりも、私が思っていた以上に体力の低下が著しいという方が正しいか)だったため、その時間的余裕はなかった。

 

 さてこれからだが、今日は赤目山水園で宿泊の予定。旅館の名前は最寄りの赤目四十八滝から来ている。ここに宿泊する以上、宿にチェックインする前に赤目四十八滝の見学をしないと嘘だろう。実際は明日のチェックアウト後に立ち寄るのが正解なのだが、明日は京都でのコンサートのために、早朝から京都に直行しないといけないので、滝見学をするには今日しかない。西に傾き始める夕日と競争するように赤目四十八滝へ急ぐ。

  

 滝の手前の土産物屋街の駐車場に車を置いて滝の入口にやって来た頃にはもう4時前になっていた。券売所の話では、もう4時半頃には日没で急激に暗くなってくるから、それまでに夜間ライトアップのある手前の不動滝のところまで帰ってくる必要があるとのこと。となるとかなり駆け足で見学する必要があるが、走って行ったところでも一番奥までは到底たどり着くのは不可能。とりあえず捲土重来を誓って、今回は行けるところまで行くだけにする。

  

 赤目四十八滝は滝見学というか、渓谷トレッキングと言うのが正しいところ。山歩き直後の体にはかなりキツい。しばらく進むと一番手前の滝らしい滝は不動滝。ここから先に進むには険しい登り階段を少し登る必要があるのだが、この時点で私は先ほどの霧山城で完全に足が終わってしまっていることを痛感する。これはどうも私の想定よりもさらに手前で見学を終える必要がありそう。

   最初の不動滝

 そこからさらに進むと千手滝に到着する。水の流れが複雑でなかなかに絵になる滝。

   これが千手滝

 

滝は写真の撮り方で表情を変える

 さらにこの先に布引滝があるとのことだが、この時点でもう4時半が近づいていて辺りが薄暗くなり始めているのと、布引滝に進むのにまた登り階段を進む必要があるのを見て、時間よりもまずこれを登り切る体力と精神力が尽きてしまっていることを痛感し、ここで引き返すことにする。

   ここを進む気力がもうなかった

 不動滝のところまで戻ってくると、ライトアップを見るために完全に日没するまでしばしここで待つ。同じ目的の観光客がゾロゾロいて、辺りは大混雑である。

三脚装備無しでの夜景撮影はどうしてもぶれる

 30分ほどでようやく辺りが真っ暗になるとライトアップの滝を撮影。しかしスローシャッターのせいでほとんどぶれた写真ばかり。最初からこれが目的で三脚を持参している気合いの入った観光客もいたが、私のような行き当たりばったりではそんな用意は当然ない。

 

 ライトアップ会場を一回して戻ってくると、真っ暗な中を宿まで車で走る。それにしても辺りは真っ暗、しかもAU携帯は圏外である。なかなかに凄い秘境。

 

 山水園は本当に山の中の宿という印象だが、宿自体は綺麗な建物。ただ斜面に増築増築で建物を増やしたらしく、敷地内に建物が散在しており、屋外の通路で移動する必要がある。私のシングルルームは一番上の方で、今日は天気が良いから良いが、これが雨や雪だったらかなり嫌だなと思える場所。

   部屋はオーソドックなシングルルーム

 部屋に荷物を置くと何はともあれ入浴。丹前を着込んで大浴場へ向かう。泉質は弱放射能単純泉とあるが、浴感としてはアルカリ泉としての印象が強い。肌にしっとりと来るお湯でなかなかに良好。内風呂に泡風呂、それに屋根付きの露天風呂がある。露天風呂は今の季節はまだ良いが、もっと冬になるとかなり寒そう。とにかく今日は相当に体にダメージがあるのでそれを良質の湯で癒やしておくことにする。

 

 入浴を終えて部屋に戻って少し休憩すると、すぐに夕食。夕食は本館のレストランまで行く必要がある。この移動が不便なのがこの宿の難点か。

 

 夕食はオーソドックな会席料理。なかなか美味いが、文句を言うならもう少しご当地色が欲しい。山の中でマグロの刺身というのは「?」。川魚やキノコ、山菜などを出す方が正解では。まあそういう料理は結構客の好みも出てしまうが。ただ鍋物などはまさに猪鍋でも良いように思う。

 夕食を終えると原稿の入力・・・をしようと思ったが、体の極度の疲労のせいでとにかく頭がまるで回らない。頭から日本語の文章が出てこない。これはダメだと諦めて再び入浴することにする。

 

 何だかんだで結局今日は1万8千歩越え。山道を含んでのこの歩数なので、これは相当体にダメージが来ている。実際、夜になって風呂上がりにマッタリしていたら、両足は段々とだるくなるし、体はどんよりと重いしで、明日がかなり不安になってくる。

 

 とにかく疲れが激しいのでテレビを見ていても意識が遠のきかける。この日はかなり早く就寝する。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は6時半に起床すると朝風呂。部屋の外はかなり寒いが、その中を浴場まで歩く。浴場は昨日と男女が入れ替わっていて、こちらはかなり開放感のある露天風呂付き。ただ今朝の天候では露天風呂は寒い。

 

 朝から体を温めるとレストランで朝食。例によってのオーソドックスな和食なのだが、やはりこれが一番うまい。

  

 昨日の無理のせいで下半身にはかなりの怠さがある。それと風邪気味だったのがやはり若干悪くなっている。咳が少々出るし、のどが枯れて声がおかしくなっている。今日はあまり無理は出来なそうである。

 

 今日は名張を10時前に出る近鉄の特急で京都まで移動することになる。そのためにはそれまでにレンタカーを返却する必要があるので9時前にはホテルをチェックアウトする。名張までは30分もかからないのだが、そこでガソリンスタンドが見つからない。しかもこの車に搭載ししてあるカーナビはなぜかトヨタのディーラーなどという意味のない物は検索できるのに、ガソリンスタンドの検索機能がない。結局は名張市街をウロウロしてガソリンスタンドを見つけるのに時間がかかり、車を返却したのは10時前。駅までキャリーを引きずりながら走る羽目になり、ガタガタの体に完全にとどめを刺してしまう。

 

 大和八木で乗り換えて京都に到着した時には昼前。とりあえず昼食をとっておくことにしたい。「グリル東洋亭」ハンバーグのランチセットを。相変わらずトマトが謎のうまさで、またこの百年プリンがうまい。やはり私は洋食屋の洋食というのが一番合う。

 昼食後は駅周辺をロッカーを探してうろつくが、見事なほどにどこも一杯。結局はキャリーを引きずったままホールに向かうことになる。辺りを見渡しても、私と同様のロッカー難民がウロウロしている。京都のこのコインロッカー問題は何とかならないものか。まあ今の京都は、コインロッカーに限らず町自体がキャパを越えてしまっていてとんでもないことになっている。どこかで何らかの根本対策を打たないとひどいことになってしまう。


京都市交響楽団 第618回定期演奏会

 

[指揮]下野竜也(常任首席客演指揮者)

[Pf]アンナ・フェドロヴァ

 

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」op.73

ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ

 

 フェドロヴァのピアノは、とにかくガツンガツン弾くタイプで、かなり雑な印象受ける演奏。確かにこの曲はやや硬めの演奏で良いのだが、彼女の演奏はその限度を超えていて、もう少ししなやかさが欲しい。アンコールの「子犬のワルツ」でもラストを異様にガツンガツンと終わらせていたところを見ると、これが彼女の芸風か。

 メインはいかにも珍曲マニア下野らしいアメリカ現代音楽。このハルモニーレーレは下野の指揮を見ていても熱演であることは分かるし、京都市響の演奏も難曲を見事に弾きこなしている。しかし残念ながら曲自体が私には全く面白くない。下野によると「ベートーベンも当時の現代音楽であり、この曲も100年経てばクラシックの定番になるかも」とのことだが、私にはそうは思えない。


 これで本遠征のすべてスケジュールが終了。帰宅と相成った。ライブが中心の遠征に山城を絡めたのだが、それがスケジュール的に無理がありすぎたようで、体力的にかなりダメージがあって、帰宅後に風邪をこじらせて難儀する羽目になってしまった。そろそろかなり低下してきている自分の体力を考慮した計画に変更するべきなのだが、どうも相変わらず旅先ではバーサーク状態になってしまう習性は変わっていないようだ。

 

 ちなみにセントラル愛知交響楽団のコンサートは2回目だが、かなりスワロフスキーの手駒として機能しているという印象を受けた。来年はスワロフスキーの指揮で「わが祖国」をするとのこと。聴いてみたい気もするのだが、問題はその時期にわざわざ名古屋に出向くべき理由があるかである。

 

 

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