展覧会遠征 名古屋編7

 

 この週末は名古屋に出向くことに。目的はドイツカンマーフィルのコンサート。このオケに特別に興味があると言うわけではないが、息子ヤルヴィことパーヴォが振っているということで興味を持った次第。パーヴォは私が注目している指揮者の一人でもある。本来なら関西公演に行けばよいのだが、どうしたわけか今回の全国ツアーからは関西は見事にはずされており、一番近くが名古屋だったという次第。何か関西を嫌う理由でもあるのか?

 

 土曜の昼頃に新幹線で名古屋に向かうことにする。時間つぶしにネットのニュースを見ていたら、ロックイベントでのジミー・ペイジの件で訴訟騒ぎになっているようだ。私はロックには全く興味がないので、ジミー・ペイジなどと言われてもよく分からない。記事によると要はジミー・ペイジなる人物は三大ギタリストと言われるぐらいロックの世界では有名な人物とのこと。そして最近開催されたロックフェスティバルに出演したのだが、プレゼンテイターとして2分ほどステージに出てきただけで全く演奏せずに帰ってしまったのだとか。興業元は明らかにペイジが演奏すると思わせるような宣伝をして30万円もの券を売っていたらしいから客が激怒、返金しろと大騒ぎになっているとのこと。しかもこれに対して興業元は「ペイジは演奏しなかったが、他にいろいろな人の演奏があったから返金はしない」という主旨の返答を出して火に油、とうとう訴訟騒ぎになってしまったとか。

 

 ペイジと興業元の契約がどうなっていたかが公開されていないのでよく分からないのだが、どうも最初から演奏はしないことで契約していたのに、興業元が「ギターまで用意してそういう雰囲気を作っておけば、空気を読んで一曲ぐらいは何かやってくれるだろう」と甘い見通しで宣伝していたような気がする。しかしこれで返金一切なしというなら民事案件で済まず、詐欺事件として立件されるべき内容に思える。実際にこれで通るのなら応用範囲が広すぎる。私の分かりやすい世界で言い換えれば「ベルリンフィル来日」と銘打ってチケットを売っておいて、当日になるとベルリンフィルのコンマスが現れて挨拶だけして去り、演奏はベリルンシンフォニカーなんてのもありになる。「ベルリンフィルの演奏ではなかったが演奏はあったし、逆にアンコール二曲もあったんだから良かったでしょ。」と言って終わりということ。今回騙された弁護士の人が怒って訴訟を起こしたようだが、これは司法当局も動くべき案件だろう。さすがにニュースとかでも取り上げられたせいで、興業元も後で「返金に応じる」とか言い出したようだが、誤魔化す意図があったのは明瞭。また遠くからわざわざ出かけた人も多く、チケット代だけ返還すれば良いというものでもないだろう。最初から演奏が契約になかったということが明らかにでもなれば、少なくとも道義的責任は免れないし(どころか刑事事件になる気がするが)、今後のこの会社については何も信用できないということにもなる。

 

 新幹線に乗ると名古屋まではそう時間がかからない。昔は青春18切符で名古屋日帰りなんてこともしたが、今はとてもそんな気力も体力もない。人間こうやって堕落していくんだろう。

 

 名古屋に到着すると遅めの昼食を摂ることにしたい。もう昼食時を大幅にはずしているので、これだと混雑することもなかろうと名鉄百貨店のレストラン街を覗くが、ウナギ屋は80分待ちの大行列。それどころか隣の山本屋総本家にさえ行列が。一体名古屋に何が起こってるんだ? ここで待つ気もしないので高島屋のレストラン街を訪れるが、ここも軒並み大行列。結局はこっちの山本屋総本家で待たされる羽目に。

 

 20分ほど待たされてから入店。「親子味噌煮込みうどんの一半」を注文する。相変わらずのガチガチのうどんに渋めの赤味噌。本日のガッツリ名古屋飯第一弾。

  

 遅めの昼食を終えるとホテルの送迎バスで宿泊ホテルに向かう。今日の宿泊ホテルは最近の名古屋での定宿になっている「名古屋ビーズホテル」。チェックインすると着替えて二階のジムで少し汗を流す。これがあるのがこのホテルの最大の特徴。最近は運動不足がひどかったので、30分ほどランニングマシンで軽くエクササイズ。運動して汗をかくと同フロアの大浴場で入浴。これは快適。

 

 汗を流してサッパリしたところでそろそろ夕食か。何を食べるか悩むところだが、オーソドックスにひつまぶしにすることにする。となるとやはり浄心の「しら河」に行くことにしたい。

 

 浄心へは伏見から地下鉄で三駅。例によって「ジョ、ジョ、ジョ、ジョーシン」と浄心のテーマソングを口ずさみながら軽やかに移動・・・と言いたいところなのだが、情けないことに先ほどのホテルでのエクササイズのせいで早くも足が終わってしまっている。地下鉄の上り下りがキツイ。

 

 「しら河」には6時過ぎに到着したが、既に待ち客が多数。しばし店内で待たされることに。相変わらず人気店だ。10分程度待ってからようやく入店。「うまき」「上ひつまぶし」を注文。本日の名古屋飯第二弾である。

 一杯目はストレート、二杯目は薬味付き、三杯目はうな茶。さて四杯目だがいつもはうな茶にするところだが、今日はガッツリとうなぎを食いたいという気持ちなので、今回は四杯目は薬味付きで頂く。それにしてもうなぎとわさびの取り合わせのなんと絶妙なことか。

 夕食を終えるとホテルに戻って再び大浴場で入浴。体を温めた後はマッサージチェアでほぐす。適度な運動にうまい飯、そして風呂、体が癒されるのを感じる。

 

 夜も更けてくると疲れが出てくるので、この日はかなり早めに就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 どうも最近はいわゆる睡眠力が落ちているようだ。枕が変わると寝られないと言うほど神経質な人間でもないのだが・・・。この日も中途覚醒が2回ほどあり、翌朝の起床は8時前。無料の朝食サービスがあるのでそちらに出向く。ここの朝食は焼きたてパンとスープ。シンプルだが、とりあえず腹を膨らませるぐらいにはなる。

 

 今日は豊田市までドイツカンマーのコンサートに出向く予定。開演は15時なので時間に余裕はある。チェックアウト一杯まで部屋でマッタリと過ごす。

 

 ホテルの終バスで名古屋駅まで送ってもらうと、とりあえずキャリーはコインロッカーへ・・・と思ったのだが、名古屋駅は大混雑でコインロッカーは一杯。あちこちにロッカー難民があふれている。京都といい、名古屋といい、最近は一体どうなってるんだ。

 

 ようやく地下鉄の出口近くにロッカーを見つけるとキャリーを放り込む。ここから東山線と鶴舞線を乗り継いで豊田市駅まで移動。距離的には最短ルートのはずなのだが、各駅停車なのでやたらに時間がかかる。豊田市とはかくも遠いところなのか? いや、多分トヨタ様の本心は、電車なんか使わずに車で行けということなのだろう。

 

 1時間ほどをかけて豊田市駅に到着。今日のコンサートがある豊田市コンサートホールは駅前にあるようだ。開演の3時までに昼食と用事を済ませておきたい。まずは昼食。松坂屋の9階のレストラン街を一回り。昨日はコッテリと名古屋飯だったので、今日はあっさり目にしたい。和食の店「釜の座」があったので、そこでランチメニューを注文する。

 結構のんびりした店のようだ。関西では通用しないようなタイミングで料理が出てくる。三段重で出てきた料理は見た目も美しいし、一品一品がなかなかに美味く上々。

 

 昼食を終えると豊田市美術館に立ち寄る。ここの美術館は駅から距離は無茶苦茶遠いわけではないが、美術館が高台にあって延々と坂を登らないといけないという嫌がらせのような立地。これもトヨタ様の「自動車を使え」という本音がありありである。私は昨日のエクササイズの影響が右足首の痛みという形で残ってしまっているので、諦めてタクシーで移動することにする。

 


「蜘蛛の糸」 豊田市美術館で12/25まで

  

 蜘蛛や蜘蛛の巣をモチーフにしたり、それに触発された作品を展示。現代アートから工芸、絵画など内容は多彩。

 いきなり呆れるのは塩田千春の部屋一面の糸の中にドレスを封じ込めた作品。芸術的感慨があるかはともかくとして、この手の込みようには圧倒された。ただそれ以外の作品については、表現がリアルになればリアルになるほど気持ち悪いという感想の方が先行してしまうので難儀である。

 モチーフがモチーフだけに、案の定、芥川龍之介「蜘蛛の糸」を題材にした作品も多数。特に鴨居玲が執拗に何度もこのテーマの作品を描いているのが印象に残る。


 展覧会の鑑賞を終えると帰りは歩いて移動する。しかし右足首の前の筋が痛む状態なので、意外に足に負担がある。若干ヨロヨロしながら駅まで戻ってくる。ホールは駅から陸橋で接続してあるビルの10階にある。大きな窓が足下までガラス張りという高所恐怖症の天敵のようなビルである。どうも最近はこういう設計が多い。嫌がらせか?

 豊田市コンサートホール

 ホールはほぼ満席。どうやらチケットは事前に完売したとのこと。豊田市の人間はクラシック好きが多いのか、それとも景気が良いのか。確かに関西だと完売にはならないような気がする。

 なかなかに立派なホールである


ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団

 

指揮/パーヴォ・ヤルヴィ

ヴァイオリン/樫本大進

 

シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 二長調 op.61

シューマン/交響曲第3番 変ホ長調「ライン」 op.97

 

 室内オケということで私は事前には緻密なアンサンブルを予想していたのだが、このオケの演奏を聴くと面食らう。緻密さよりは元気さを感じさせるやや荒削りのオケである。パワーは室内オケと思わせないぐらいのものがあり、特に金管などは容赦なくバリバリと鳴らしてくる。そのせいで全体のバランスとしてはやや管楽器優位に感じられる。

 樫本大進のヴァイオリンはさすがのテクニックというところか。ただやや繊細さのある大進の演奏と、元気さが信条のようなバックのオケとの若干の温度差はあり。

 シューマンはパーヴォが場内の拍手が鳴り止むか止まないかというタイミングで唐突に演奏を始めたのにも驚いたが、とにかくバリバリと鳴らしまくる。細かいアンサンブルは気にしていない節がある。ラストに至ってはパーヴォが煽りまくり、その煽りにオケがギリギリの状態でついて行っている。崩壊寸前のスリリングな演奏というところ。

 パーヴォは絶好調という印象だったが、もっともそれが現れたのはアンコールのハンガリー舞曲か。パーヴォのタコ踊りが炸裂していたが、テンポなども振りまくり。それにオケがしっかりついてこれるのは、ツーカーの関係が確立しているという証拠か。


 N響では見せないようなパーヴォのノリノリぶりが印象に残った。井上、広上に続く見事なタコ踊りNo.3となっていた。

 

 コンサートを終えると名古屋にとんぼ返り。明日は朝から大阪で仕事があるので、今日は大阪宿泊である。当初予定では名古屋で夕食を摂って大阪に移動するつもりだったのだが、昨日ガッツリと名古屋飯を食いまくったせいで、もう名古屋で食事する気が起こらなかった(それにどうせまた大混雑だろうし)。そこでエクスプレス予約を早めてさっさと大阪まで移動してしまうことにする。

 

 大阪までは新幹線で1時間弱。大阪駅まで移動するとホテルに向かう道すがらで見つけた「卵と私」「昔ながらのオムライス」を夕食に頂く。この店はメレンゲを焼いたスフレオムライスの方が売りらしいのだが、20分はかかると言われた上に、スフレはあまり好きでない気がしたのでこちらを頂いた。まあ可もなく不可もなくの普通のオムライスである。

 夕食を終えたところで今晩のホテルに向かう。今日のホテルは法華クラブ大阪。私がよく使うホテルチェーンの一つ。今まで何回か利用している。今日は日曜日だし、会社の福利厚生割引が使えたことから選んだホテル。

 

 ホテルにチェックインすると大浴場でマッタリ。生き返る気分。入浴を終えるとテレビは特に見るべき番組もないので、持参したブルーレイプレイヤーで世界遺産などを見ながら過ごす。

 

 明日は大阪で仕事である。備えて早めに就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は法華クラブの大阪飯バイキングを朝から腹にたたき込むと、頭をビジネス戦闘モードに切り換える。

 法華クラブの大阪飯バイキング

 今日の仕事は経営陣も含めてのプレゼンという大仕事だったのだが、それも無難に終えることが出来たのである。本遠征が決まった後に急遽入った仕事だっただけに、バタバタとした展開になってしまって体力的には結構キツかった。

 

 パーヴォの演奏を聴きたいということでわざわざ名古屋まで繰り出したのだが、おかげでパーヴォがどういう演奏を目指しているのかの一端を感じることができ、最近のパーヴォ&N響の演奏の方向性に何となく納得がいった次第。パーヴォはN響に新しい風を吹かせる可能性があると感じていたのだが、パーヴォも段々と多忙になってきて、来年度からはN響との関わりもかなり減るとの噂。それが一番気がかりだったりする。

 

 

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