展覧会遠征 京奈編

 

 この週末は初めて奈良フィルの演奏会を聴きに行くことにした。奈良フィルは奈良のプロオケで一応は日本オーケストラ連盟の準会員でもある。それにも関わらずその存在は一般にはあまり知られておらず、関西のオケを語る時でも「関西6プロオケ(京都市響、大フィル、関フィル、センチュリー、大響、PAC)」と言われてその存在自体が無視されることが多いというマイナーオケでもある。以前から一度聴いておきたいと思っていたのだが、この度名曲コンサートが行われるとのことなので奈良を訪問することにした次第。

 

 土曜の午前中に青春18切符を握りしめてJRに飛び乗る。今日の目的地は奈良だが、奈良に行く前に京都に立ち寄る。目的は細見美術館で開催中の若冲展。そもそもは先週もしくは先々週の京都訪問の折に訪ねるつもりだったのだが、共に時間切れで行けず。そうこうしているうちに会期末が迫ってきたので、今回訪問することにした次第。

 

 山科で地下鉄に乗り換えると東山へ。それにしても今日の京都はいつにも増しての灼熱地獄。表を歩いているだけでひたすら体力を削られる状態。ようやく細見美術館が見えてきたところで、入館前に隣の「だる満」に昼食を摂るのに入店する。店内が一杯で二階席に通されるが、二階席はごく普通の部屋を急遽客席にした印象があるところ。ここはおばんさいバイキングなんかがある店らしいが、私は「揚げ餅冷やしそば(950円)」を注文する。

 そばは細めのしっかりした腰のあるそば。揚げ餅もかなりしっかりした味が付いている。味的には申し分ないが、やはり量が「京都盛」。

 軽めの昼食を終えると隣の美術館に入館する。最近の若冲人気を反映してか、結構大勢の入場客がいる。

 


「伊藤若冲−京に生きた画家−」細見美術館で9/4まで

 若冲の水墨作品を中心に展示。いきなり若冲が得意とする鶏の絵がオンパレードで登場する。彩色画のような派手さはないが、若冲の力強い筆致は相変わらずである。墨の単色での表現であるにもかかわらず非常に多彩な描き方をしており、この辺りは若冲の技倆に圧倒される。

 その一方で、自由のに伸び伸びと描いたような楽しい作品も展示されている。丸っこい人物画いかにも楽しげな作品など。

 全般的な地味めな作品が多いのだが、それでも若冲の実力を遺憾なく堪能することが出来る。まさに鬼才。


 それにしても暑い。ひたすら体力を削られる感覚だ。これで京都での用事は終えたので、地下鉄で京都駅に戻ると奈良に移動することにする。みやこ路快速の発車時刻まで時間があるので、その間に駅ナカでミックスジュースのLサイズを一気に飲み干してクーリング&ミネラル補給。この暑さだと適宜水分を補給しないと体が持たないのだが、水を飲み過ぎたら飲み過ぎたで胃腸が対応できずに腹がゆるくなるから困ったものだ。胃腸を介さずに直接点滴で水分補給したい気持ち(笑)。

 

 みやこ路快速で奈良までは40分ちょっと。それにしてもこちらも尋常でない暑さ。たまらないので早速お茶にする。いつものごとく「天極堂」に入ると「極パフェ」を注文。一息つく。

  

 暑さとガス欠が一息ついたところでバスに飛び乗る。ホールに向かう前に一カ所美術館に立ち寄る。


「富本憲吉 憧れのうぶすな」奈良県立美術館で9/25まで

  

 富本憲吉の作品をその初期のものから展示。初期の作品は比較的地味なものであるが、中期頃から独特の彩色作品が増えてきて、それが最も彼らしい煌びやかな世界を展開する。

 展示作品数が少なく、館の半分のみを使用しての展示というのがいささか寂しいところである。中期以降の煌びやかな作品をもっと見たいところ。


 美術館を出たのは3時半前。コンサートの開演は5時からで開場が4時から。ホールはすぐそこなのだが中途半端な時間が空いてしまった。どうするか一瞬悩んだが、やはり昼食が軽すぎたこともあり、かなり早めだが近鉄奈良まで一旦戻って夕食を摂ることにする。奈良の商店街をプラプラしながら目についた店は「和食屋八寶」。まだランチメニューがあるみたいなので「寿司と三輪素麺のセット」を注文する。

  

 奈良で寿司というのも邪道な気がするが、それでも奈良でこのような新鮮な寿司が頂けるのは冷蔵輸送技術の進化の賜物か。もう少し斜里に酢が利いていたら私の好み。素麺は実はあまり素麺が好きでない私でも美味しく頂ける優れもの。

 ランチセットを頂いてボンヤリしていたら「吟醸焼」なるメニューが目につく。どうやら吟醸酒の酒粕に食材を漬け込んでから焼いたものらしい。妙に心惹かれたので「ポークモモの吟醸焼」を追加注文する。

 うまい。何とも言えない味わいがある。味醂干しをさらに深い味わいにしたような印象だ。酒粕に漬け込んだだけでこのような味わいが出るとは偉大なものである。

 満足して店を後にするとホールに向かうのだが、その時に少し異常に気がつく。何やら足下がフラフラしている。どうやら少し酔ったようだ。私はそもそも極端にアルコールに弱い体質なのだが、まさに先ほどの酒粕にやられるとはとんだ計算違いである。車で来てなくて良かった。

 

 雲を踏みしめているようなややふらつき気味の状態であるが無事にホールにたどり着く。私がチケットを入手した時にはまだ空席が多数あった印象だったのだが、入場してみると一階席はほぼ満席に近い様子だ。


なら燈花会 奈良フィルハーモニー管弦楽団 プロムナードコンサート 2016

 

指揮 : 矢澤 定明

ヴァイオリン : 川井 郁子(スペシャル・ゲスト/ご案内役)

 

第1部 :

四季より「夏」/ヴィヴァルディ

レッド・ヴァイオリン/ロドリーゴ/川井郁子編曲

追憶の海/川井郁子 チャールダーシュ/モンティ ほか

 

第2部 :

交響曲第4番「イタリア」/メンデルスゾーン

交響詩「ローマの松」/レスピーギ

 

 川井郁子のヴァイオリンがメインとなる第1部と、オケの演奏の第2部の構成。川井郁子氏についてはよく知らないのだが、作曲家志向の強いヴァイオリニストなのか、彼女自身による作曲・編曲作品が中心。クラシックとポピュラーを織り交ぜた親しみやすいプログラム構成である。なお彼女のヴァイオリン演奏であるが、ノリは良いのだが音色がやや弱めのところがあるように感じられ、ホールの音響特性の悪さもあってなかなか音が前に飛びだしてこない印象。

 第2部はオケの曲だが、残念ながら奈良フィルは弦のアンサンブルにいささか難があることが覗える。そのために立ち上がり部の斉奏に問題があり、やや精彩に欠く演奏になってしまうきらいがある。特にイタリアではパシッと決めるべきところで決めきられないぬるさのようなものが感じられた。2曲目のローマの松は複雑な曲だけにところどころハラハラする部分があったが、こちらの方がむしろ演奏はしっくりきていた。なおバンダを加えてのラストはほとんどブラスバンドになってしまっていた感じもするが、お祭り企画としてはありだし正解だろう。


 地方の多目的ホールだから仕方ないのだろうが、それにしても音が飛ばないホールだ。ソリストの演奏もかなり遠くから聞こえてくる印象だし、館内でわき起こった満場の拍手も非常に弱々しい聞こえ方になる。この音響の貧しさを吹き飛ばそうと思うとかなりのパワーが必要なのだが、残念ながら奈良フィルにはそれだけの力はない。これはかなりのハンデになってしまうのでは。

 

 コンサートを終えて表に出た時にはやや薄暗くなっていた。今日は奈良では燈花祭なるイベントが開催されており、あちこちで蝋燭の火によるライトアップがなされている模様。東大寺に方向に向かってかなり人波が流れていくのでそれに乗っかって見学に行く。

 なるほど確かに綺麗で風情もあるのだが、とにかく人が多いのが困ったもの。浮雲園地の会場まで見学に行ったものの、それ以上は帰りの時間も気になるし、帰り客の大混雑に巻き込まれるのも御免なので早々に引き返すことにする。所詮、私のような無粋な人間はこのような風情とは無縁のようである。

 

 この日は何だかんだで意外と歩いたし、灼熱地獄での体へのダメージも大きく、帰宅するなり完全ダウンの状況と相成ってしまったのである。

 

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