展覧会遠征 神戸編14

 

 この週末は神戸方面の美術館巡りである。昼前に車で繰り出すことにする。

 


「川村悦子展−ありふれた季節」西宮市立大谷記念美術館で7/31まで

 植物などのアップの作品が多いが、独特の質感を持った表現をする画家である。よく見るとかなり色数なども使っており、細かく描いていることも分かる。独特の叙情に魅力を感じさせられる。


 西宮を後にすると神戸に移動。それにしても今日も暑い。だから車にしたのだが、表に車を停めておくとあっという間に灼熱地獄になってしまうからたちが悪い。


「藤田嗣治展−東と西を結ぶ絵画−」兵庫県立美術館で9/22まで

 藤田の作品を初期から晩年に至るまで概観。初期のいかにも黒田調の絵画などは非常に面白い。

 パリに移ってから彼は独自の画風を確立するのだが、それがいわゆる一般的に知られている藤田の典型的な絵画。本展ではそのような作品だけでなく、その後に日本に帰還してからの戦争絵画なども展示してある。藤田は戦争絵画も結構描いているのだが、これが後に「戦争に協力した」と中傷される原因となり、また藤田が日本を捨ててパリに渡ってしまう理由ともなっている。

 晩年は子供の絵などが増えるのだが、以前に比べて藤田自身がかなり内省的になっていることが感じられる。時代に翻弄されて傷ついた結果なのだろう。何やら自らの心の平穏を求めるような痛々しさがあり、結果として先に「ランス美術館展」で見た礼拝堂の壁画につながっていく。

 藤田という画家の内面的な変遷をも感じさせるような展覧会であった。


 展覧会終了後は、美術館のレストランでランチを頂く。例によって味は悪くないのだがCPがいささか悪い。まあ今回はその点には目をつぶることにしている。

 昼食を終えると三ノ宮に移動、今日の最後の目的地である。


「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 私の国貞」神戸市立博物館で8/28まで

  

 ボストン美術館と言えば、非常にレベルの高い日本絵画コレクションで知られるが、浮世絵作品も多数収蔵されており、コレクターによって蒐集されたこれらの作品は非常に状態が良いことでも知られている。そのような浮世絵コレクションから、江戸時代の人気絵師である歌川国芳と歌川国貞の作品を展示。

 国芳と言えば大胆で奇想に満ちた作品で知られているが、本展でも稲妻ギラギラ、怪物がウロウロ、そこで主人公が力強いポーズと言った類いの、今日のマンガの原型とも感じられるような作品が多数展示されていて面白い。その一方でネコ好きで知られる彼が、ネコを題材にしたおふざけのような作品もいろいろあって、これらはなかなかに和ませる。

 一方の国貞は個人的に歌舞伎界のスター達との交流があったとのことで、今日のブロマイドと言えるような役者絵を多数描いているが、これはとにかく華やかである。当時の庶民達の送る喝采まで見えてくるような気がする。


 なかなかに見応えのある展覧会。時間の関係で早足で駆け抜けるような形になったことが非常に残念。また会場内がかなりの混雑だったので、その点でも鑑賞にはなかなか厳しい条件であった。

 

 これで今日の予定は終了、家路につくことにしたのである。

 

 

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