展覧会遠征 苫小牧・札幌編

 

 どうも最近は急に出張が増えているが、今回も急に札幌に出張することと相成った。仕事は月曜日の午後なので、通常なら月曜の早朝に出発してその日の内に帰って来るという札幌日帰り出張になるところ。しかし正直なところそんなしんどい出張は御免であるし、札幌まで出て行った挙げ句にとんぼ返りというのはあまりに悲しすぎる。そこで宿泊費が自腹になるのは覚悟の上で土曜日に北海道に旅立つこととした。

 

 搭乗したのはスカイマークの土曜の昼便。ところでエアバス社へのキャンセル料支払いで倒産の危機さえ囁かれたスカイマークだが、エアバス社がキャンセル機体の転売の目処が立ち、何とかキャンセル料をディスカウントしてもらうことで話が付いたらしい。ただこれでひとまず直ちに倒産の危機は脱したというものの、それでも年間収益の3割以上が一気に吹っ飛ぶことになり、スカイマークはかなり資金繰りに苦労している模様。その反映か来月辺りから大幅な運賃の値上げが予定されており、特に札幌便などは数倍に価格が上がる見込み(JALやANAと大差なくなる)。これでは結果として経営が悪化するだけではと懸念するところである。それにしてもこの会社は、分不相応な巨大機を突然に大量発注したり、経営陣が何を考えているのか分からない。どうも経営トップの行き当たりばったりで思いつきの方針に対して、誰も諫めることが出来る者がいないのではないかというような気がする。これは組織としてはかなりまずい状況である(ダイエーの末期と同じで瀕死と言ってもよい)。

 

 機内は昼便と言うこともあってか、搭乗率は60〜70%というところ。乗客としてはこのぐらいの方が楽でいいが、スカイマークとしてはこれだとしんどいだろう。神戸空港からは2時間弱の空旅。暇なのでこの原稿を打っている。

 

 やがて新千歳空港が近づいて高度が下がってくると、気流が乱れているのかやたらに揺れる。大分飛行機に慣れたが、やはりまだこういうのはあまり気持ち良くはない。

 新千歳空港バス停

 新千歳空港には予定より10分早く到着したとか。追い風補正でもあったのだろうか。降り立った北海道は、関西よりは明らかに寒いが、予想していたほどでもない。ここからはバスで苫小牧に向かう。仕事は札幌だから本来は札幌に宿泊するつもりだったのだが、土曜日のせいか札幌のホテルは予約で一杯で高いホテルしか残っていない状態。そこで今日は札幌での宿泊を諦めて苫小牧に宿泊することにした次第。いざ移動してみると、新千歳空港からは札幌よりも苫小牧の方が距離的に近いようだ。路線バスで40分程度で苫小牧に到着する。なお確保したホテルはドーミーイン苫小牧

 ホテルにチェックインするとしばし休憩。ちょうどNHKで「山賊の娘ローニャ」を放送していたからそれを鑑賞。先週長崎訪問時にNHKでやたらに宣伝していたが、ちょうど放送時間帯に夕食を摂る店を探して長崎の繁華街をうろついていたので全然見てなかったのでちょうど良い。しかし肝心の作品はと言うと、3DCGで作成したというキャラクターの作画が背景から浮いていてどうにも落ち着かない。どうもキャラクターが出来の悪いポリゴンにしか見えず、髪の毛が決まった形で硬直しているなんてのが不自然極まりない。またまだまだ序盤ということを差し引いて考えても、どうにもストーリーが面白くなく今一つ見所がないという印象。NHKの派手な宣伝に反して、大スベリの予感がする。本作は宮崎吾朗氏の監督作品だと言うが、宮崎駿作品のスタイルだけを真似している感じで肝心の魂が入っていない。やはり才能は世襲しないということか。

 

 5時になったところで夕食のために外出する。夕闇迫ってきた苫小牧の町は、到着時とは違って肌寒くなっていた。さて今回、夕食に食べるものは決めている。苫小牧と言えばホッキ貝。苫小牧ではご当地グルメとしてホッキ炙り飯を売り込み中とのこと。ホテルの近くでホッキを食べられる店ということで「四季の味熊谷」に入店。HPに掲載している炙り飯は今年度から予約制になったとのことだが、ホッキの炙りメニューはあるとのことなのでそれを頂く。

  

 出されたホッキは炙りと刺身の二種。大きな立派なホッキである。炙りはやや甘みが出て、刺身はコリコリとした食感で頂く。これはさすがに美味。なお炙り飯が予約制になったのは、HPに掲載していた炙り飯用のホッキはもっと小さいものを使うのだそうな。今日出されたのはこの店が日頃使っているもっと大きくて上質なホッキらしい。

 またホッキ以外の野菜メニューも自家栽培の野菜らしい。素材に対するかなりのこだわりが見られる店である。当然のように野菜メニューもうまい。

 

 私は貝類の中ではホッキが一番好きなのではというぐらいのホッキ好き。この日はなかなかにホッキを堪能したのである。これで北海道に来た目的は達成・・・じゃなかった、今回はそもそも仕事で来てたんだ。

 

 夕食を堪能してホテルに戻ると大浴場で入浴。これあってのドーミーイン。泉質は海のそばのナトリウム塩化物泉ということで、身も蓋もない言い方をすれば、地下で温められた海水である。しかしこれが実に体に染みる。やはり手足を伸ばして入浴できる風呂はよい。さらにドーミーの良いところは大抵はフルーツ牛乳を置いてあるところ。「富士には月見草がよく似合う、風呂にはフルーツ牛乳がよく似合う」というのは日本人マインドである。そこをよく心得ている。

 

 風呂から上がってマッタリすると、夜食にドーミー名物夜鳴きそばを頂いてから就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は6時に起床。まずは朝風呂を浴びるとバイキング朝食を頂いて、8時に駅まで送迎してもらう。

 

 苫小牧の朝の空気はひんやりとしている。このまま札幌に向かってもよいが、どうせだからイベントに参加するつもりである。今日は苫小牧漁港で「ホッキ祭り」があるという情報を得ている。ホッキ好きとしてはこれに参加しない手はないというものである。苫小牧駅のロッカー(一番小さいサイズのロッカーでも400円というのは北海道価格か?)にキャリーを置くと、漁港行きのバスに乗り込む。

  

苫小牧では何やら萌えイベントも開催される模様

 漁港には多くの車が押し掛けて駐車場待ちの行列ができている。かなりの遠くからまでやってきている模様だ。札幌ナンバーに室蘭ナンバー、さらには帯広ナンバーまで多彩。この調子だと駐車場に入るまでにかなり待たされそう。バスで来た俺様最強である。

左 漁協近くの道の駅  中央 ホッキ祭会場はこちら  右 周辺道路はこの状態

 会場ではホッキ飯やらホッキカレーやらホッキのバター焼き、ホッキラーメンにホッキカレードーナツ(ホッキはカレーによく合う)などなどの様々な屋台が並んでいてホッキ三昧。私もつい先ほど朝食をガッツリ食べたのも忘れてホッキに舌鼓。勢いテンションが上がる。今テレビカメラを向けられたら、何かの映画のCMみたいにカメラ目線で「ホッキ最高!」って絶叫しそうだ。

左 会場には屋台がずらり  中央・右 各種ホッキ料理が目白押し

左 屋台巡りをする人も  中央 うまそうである  右 ホッキのバター焼き

左 ホッキ寿司  中央 ホッキのカレードーナツ  右 ホッキラーメン

 9時からはステージの方で市長だの漁協代表だのの挨拶が始まるが、参加者はそんなものは完全にそっちのけでホッキ料理を食ったり、特価販売されているホッキを購入するために行列に並んだりなどの大混乱。そのうちに中学生(小学生?)のブラスバンド演奏が始まるが、なぜか曲目が島倉千代子の「人生いろいろ」。思わずカラオケで歌いそうになる。

みんな食べるの必死で壇上の偉い方々は完全に無視されてます

 十二分にホッキを堪能した。これで苫小牧くんだりまでやってきた甲斐があったというものである。それにしても偶然にもこんなイベントに出くわすとは運が良かった。

 

 腹が一杯になったところで会場を後にし、徒歩で10分ほどの苫小牧市美術博物館を訪れる。これは文化公園なる苫小牧の文教地区にある美術館兼市民ギャラリー兼考古博物館兼歴史博物館兼民俗史料館のような施設である。

 


「こどもとおとなの美術展 木と石にあそぼう」 苫小牧市美術博物館で11/3まで

  

 木や石を素材にした立体作品を集めた展覧会。作品自体は具象から抽象まで様々であるが、タイトルにこどもが入っていることから想像できるように、あまりに極端に尖った作品もない。

 印象に残るのは池田祐太の一連の動物彫刻。妙に愛嬌があってこどもでも十二分に楽しめる作品である(と言うか、むしろ子供向き)。そんな中に突然に舟越桂の作品が混ざっていたりして驚かされた。


 通りすがりに入場したような美術館なので正直なところあまり期待していなかったのだが、予想を超えて結構面白かった。なお中庭展示に千代明の立体作品が展示されていたのだが、これがどこからどうみても使徒。しかもご丁寧にコアまである(笑)。妙なところで笑ってしまった。

 

 なお博物館の方は苫小牧の歴史を石器自体から近代まで、さらには最近の苫小牧の特産までを紹介と言うことで考古博物館及び自然博物館、さらに歴史博物館を経て民俗史料館までの範囲を幅広く網羅している内容。これはこれで結構面白い。

 

 美術博物館の見学を終えると駅まで移動なのだが、残念ながらバスの本数がほとんどなくて話にならない。かといってこの手の地方都市には流しのタクシーなんてない。呼び出すのも面倒だし、そもそも電話番号を知らないしということで、結局はプラプラと駅まで30分ほど歩くことに。まあホッキを食い過ぎた腹ごなしにはちょうど良いか。これで先ほど吸収されたホッキのタンパク質が私の足の筋肉に転化するという仕掛けである。

 

 時間を調べると後30分ほどでスーパー北斗が到着する模様。しかし生憎と指定席は満席。スーパー北斗は常に馬鹿混みなのは今までイヤと言うほど身に染みているので自由席は避けたかったのだがこうなると仕方ない。案の定、苫小牧に到着したスーパー北斗の自由席は馬鹿混みで次の南千歳まで立っていくことに。これだと札幌まで高速バスで移動する方が賢明だったか?

 

 南千歳で大量の降車があり、ようやく座ることが出来る。後は札幌駅までスーパー北斗はひたすら北海道の広野を走り、まもなく札幌に到着する。

 

 札幌での宿泊ホテルはドーミーイン札幌。狸小路という繁華街の真ん中にあるホテルである。最寄り駅は一応は大通ということだが、実際はすすきのとの中間ぐらい。札幌に来るのは久しぶりだが、以前に記憶にある町並みから全く変化していない。札幌は私的には決して好きな町とはいえないのだが、もう既に馴染みのような気はする。

 とりあえずホテルにキャリーなどの荷物を預けて身軽になると地下鉄の駅に戻る。さて今日の予定だが、札幌で今まで訪問したことのない場所を訪問することにする。それはモエレ沼公園。イサムノグチが設計した公園である。

 大通駅の構内を横切って東豊線のホームに移動すると、ここから環状通東駅まで。この駅からモエレ沼公園行きのバスが出ている。このバスが結構時間がかかる上に、モエレ沼公園東口停留所から公園入口まで結構距離がある。

 正面に見えるのがモエレ山

 公園に到着すると一番最初に目につくのがモエレ山。高さ50メートルほどの人工の山でこの公園のシンボルにもなっている。ここにはとりあえず後で登ることにして、反対側にあるガラスのピラミッドに入場する。

 ガラスのピラミッド

 ガラス張りで吹き抜けなどのある洒落た建物である。屋上には展望台もある。なお内部にはイサムノグチのギャラリーもある。イベント会場などとしても使用されることがあるらしい。

左・中央 ピラミッド内部  右 最上階の展望台に出る

展望台からの風景

 ガラスのピラミッドの見学を終えるとモエレ山に登ることにする。直登も可能なぐらいの傾斜なのだが、上に行くほど傾斜がきつくなることと、既に足がかなり死にかかっていることから無理はやめて途中から通路で登ることにする。

モエレ山を登る

左 山頂に到着  中央 山頂の三角点プレート  右 この周辺の三角点

 山上からはかなりの見晴らしである。この周辺は高い山が全くないので相当遠くまで見晴らすことが出来る。遠くに見えるのは札幌ドームである。

    札幌ドームが見えている

 この公園は競技場などもある総合運動公園になっており、子供の遊び場としては最適であろう。何にしろ土地がいくらでも余っている北海道だからこそ作れた馬鹿馬鹿しいほどに規模の大きな公園である。自然地形を利用しつつも、各所に潜んでいる幾何学的構造にイサムノグチらしさが現れている。

 

 2時間程度で公園を一回り。まだまだ他にも施設があるようだが、そろそろ夕方になりかかっているし、何より結構疲れた。明日から仕事なので疲れ切ってしまってもまずい。そろそろモエラ沼公園を後にすると、バスで地下鉄麻生駅まで移動、ここから地下鉄でホテルに戻る。それにしても疲れた。苫小牧で散々歩いた上に公園内を一周したので、今日一日で2万歩を越えている。今日一日で両足にかなりホッキ筋がついたのではなかろうか。とりあえず風呂で汗を流してゆっくりしたい。

 

 ドーミーイン札幌の大浴場には人工炭酸泉や露天風呂などがついている。炭酸泉は温度はやや低いにも関わらず、入浴しているとポカポカしてくるというもので北国向き。タップリと入浴して疲れた体をほぐす。なお残念ながらここのホテルはフルーツ牛乳を置いていないようだ。

 

 入浴して一息ついてから夕食に繰り出すことにする。海産物系はホッキ貝を散々食べたので、後は北海道で食べるものと言えばジンギスカンしか思いつかない。と言うわけで、以前にも訪れたことのある「ひげのうし」を訪ねる。ここはお一人客用の盛り合わせがあるのがうれしいところ。これにプレミアムラムを加えて頂く。羊は臭いとよく言われるのだが、なぜか北海道で食うと意外とクセを感じないのである。この辺りは不思議。

 通常ならジンギスカンだけでなくてご飯ものも注文するところだが、あえてそうしなかったのは理由あり。実は苫小牧のホッキ祭りでホッキ飯を買い込んであるのである。私もどこまでホッキ中毒なんだが。しかしこれがうまいのである。

  

 こうしてこの日はジンギスカンとホッキに明け暮れるのである。さすがに食い過ぎたのでドーミーイン名物夜鳴きそばはパスして、明日の仕事に備えて早めに就寝する

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時に起床。まずは朝食である。北海道のドーミーは全国最強との評もある豪華な朝食バイキングが有名。豊富な小鉢メニューにデザート類。さらに最強と言われる所以のいくら食べ放題。朝から海鮮丼を頂けるという仕掛けである。

ドーミーイン札幌の最強朝食バイキング

 朝食を摂ると大浴場で朝風呂。小原庄助氏の心境がよく分かる瞬間だ。私は朝酒はしないが、朝寝と朝湯は大好きだ。もっともつぶすだけの身上もない。

 

 今日の仕事は午後からだからチェックアウト時間のギリギリの11時まで粘ってからタクシーで駅まで送迎してもらう。さあこれから仕事だ・・・。

 

 結局は出張ついでに苫小牧でホッキ三昧に明け暮れることになってしまった。やはり北海道は食い物がうまい。ただ最近は出張のたびに自腹で前泊することが多いので、もろに出張貧乏になって財政状況が火の車である。私も自由に使える政治活動費が欲しいところだ。「日本が今後観光立国を目指していくにあたり、潜在的観光ポテンシャルが非常に高いと思われる北海道の現状を視察に参りました」とか言って、報告書をキチンと提出しておけば大臣をクビになることもなかろう。地方再生の担当大臣としてお声がかかれば、私はいつでもそれに答える用意がある(笑)。

  

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