展覧会遠征 瀬戸内編

 

 さて今週だが、実は来週に大型遠征を控えているので軽めの遠征にしておきたい。そこで姫路で開催中の「レーピン展」に加えて、岡山地区の初訪問の美術館を絡めての比較的近場の遠征にすることにした。

 


「レーピン展」姫路市立美術館で3/30まで

 

 19世紀の激動のロシアで美術界の巨匠として知られるイリヤ・レーピンの展覧会・・・とのことなのだが、実際にはロシアと違って日本での知名度は決して高いとは言えない画家で、実際日本初の大規模回顧展であるらしい。

 レーピンが活躍した時代はまさにロシア革命前夜というべき時期であり、その世相は彼の作品にも反映している。彼の初期の作品は港湾労働者を描いた重苦しい作品が多く、まさにプロレタリアアートという趣である。

 しかしその彼も渡欧によって作風が変化する。急に明るい色彩の煌びやかな絵画が登場し、印象派の影響を受けたことが顕著に分かる。当時の日本の画家も同じように、渡欧した僻地の芸術家が受ける定番の洗礼を彼も見事に受けたようである。

 その後の彼の作品は、手法的にはやや古典的な感を受けるものであるが、人物画などにおいて人物の内面を描こうとするような鋭さを発揮している。歴史画や同時代人の肖像画などが出展されているが、肖像画を描いてから10日後に亡くなったというムソルグスキーの肖像画などは、明らかに死相が現れていることまで描ききっている。

 展示品には多くのスケッチなどもあるが、とにかくデッサン力が半端ではなかったことが伺える。それが彼の絵画の大きな魅力になっている。


 姫路市立美術館の見学を終えると、そのまま車を西に走らせる。次の目的地は瀬戸内市立美術館。瀬戸内市という地名自体が私には馴染みがないが、邑久町、牛窓町、長船町が平成の大合併で合併して誕生した市であるらしく、実際に美術館があるのはかつて牛窓町のようだ。この地名なら私にも馴染みがある。平成の大合併は自治体を再編して行政の効率化を促すということだったが、副作用として例えば安土などの歴史ある地名が消滅するということがあり、また新市名にして南アルプス市のような恥ずかしい名前が登場して、その点では惨憺たるものであった。それにいくら市町村を合併して大型化しても、人材がそれに応じて充実しないと意味がないし、何よりも自治体に国の権限を委譲しないと何の意味もないのだが、権限が直接に利権につながっている中央官僚の抵抗が大きく、そちらの方がサッパリであるのだから何をしたかったのやら。

 

 私はこの美術館のことは最近までとんと知らなかったのだが、先日調べ物をしていた時に情報に行き当たった。美術館訪問を営みとしている者としては、これは一度は訪問しておく必要があろうと考えた次第である。

 

 山陽道を降りるとしばし山間の国道を走ることになる。それにしても遠いというのが正直な印象。牛窓は観光に力を入れている印象なのであるが、その割には意外とスポットが少ないというのが難点。美術館は市役所の支所の建物に入居している。

牛窓の古い町並みと近くの山からの風景


「山本基展 たゆたう庭−塩のインスタレーション−」瀬戸内市立美術館で4/7まで

 塩を使って絵を描く手法での芸術。メインの展示作品は塩で描いた渦巻き模様の作品。塩で渦潮を描くというのは単なる駄洒落か?

 芸術として感動するかどうかはともかく、圧巻であるのは事実である。以前から言っているように私は現代アートとは遊園地のアトラクションのようなものと解釈しているので、その意味ではよくできた現代アートなんだろうか。


 実は当初の予定では城郭訪問を一カ所絡めるつもりだったのだが、家を出たのが既に午後だったのと、牛窓が思っていたよりも遠かったことでその時間がなくなってしまった。結局は帰りにブルーハイウェイの道の駅でかなり遅めの昼食を摂り、デザートとして塩ソフトを食べただけで帰ってきたのであった。なお塩ソフトだが、別に辛いというわけではなく、かなり輪郭の整った引き締まった味のバニラソフトという印象だった。私がネーミングするとしたら「男前バニラ」とでも言うところか。

    

昼食の穴子丼と塩ソフト

 

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