展覧会遠征 姫路編5

 

 かつて菓子博で「高い入場料を払って数時間待った挙げ句に、入場したら菓子の箱を見せられただけ」と大顰蹙を買った姫路市(しかし主催者発表では菓子博は大成功らしい)が、今回は満を持してB級グルメの祭典「B1グランプリ」を開催するとのこと。果たして汚名返上なるか。私はそれを確認するために姫路に出向いた・・・というのは嘘で、実のところは姫路市美術館で開催中の松岡映丘展を見学しようと日程を調整し、ついでに姫路城天守の見学もしようと予約を入れた時点でB1グランプリのことを知って「失敗した」と叫んだのが事実である。

 しかし予約を入れちまった以上仕方ない。どうせ姫路城周辺は激混み必至なので、今回はJRを利用して姫路市美術館に向かう。JR姫路駅で下車すると、早くも看板や案内などが出ていてしかもいつにもなく人出が多い。この時点で嫌な予感ムンムンである。

 

 姫路駅から姫路城前まで10分ほど歩く。この時点でB1を当て込んだ出店なども出ておりお祭りムード。完全に覆いをかぶった姫路城の手前では交通規制がされて車道が封鎖されている。右手を見るとどうやらそこがB1の会場だが、予想以上の人混み。印象としては激混みの屋台村。どうやらまずは1000円で100円チケット10枚を買わないといけないらしいが、そのチケット売り場が長蛇の列で多分数十分待ち。しかも各屋台がこれまたものすごい行列。有名どころはさらに別の会場でやっているらしいが、案内を見ると「富士宮やきそば120分待ち」とか書いてある。それを見た途端に気持ちがスッと引くのを感じる。思わず「アホか」という言葉が出てしまう。何が悲しくて焼きそばを食うのに2時間も待たないといけないんだ。

左 ゲートのところから人で一杯  中央 内部はひたすら大行列  右 待ち時間を見て馬鹿らしくなる

 もう完全にあほらしくなったのでさっさと美術館に向かう。それにしてもB1グランプリもそろそろ転機にかかっていると思う。元々はマイナーイベントだったのに、それが今やメジャーイベントになってしまったせいで、システム自体が人出に対応できなくなってきている。もう根本的にシステムを見直さないと、今後は混乱しか呼ばないんじゃなかろうか。

 

 なお「高い入場料を払って長時間待って箱だけ見せられた菓子博」に比べると、入場料がなくて一応は長時間待ったら何とか食べるものがある(?)だけ今回のイベントの方がマシなようには思われるが、果たしてこれで汚名返上なるやら。どちらにしろ今回も結果は「主催者発表では大成功」になるんだろう。なお後になって「チケットは買ったのに行列がひどすぎて結局使えなかった」という苦情が殺到するのが予期されることから、駅前飲食店でチケットでも食べられるように用意していたようだ。姫路市も少しは学習したか。

 美術館の一角は激混みの会場とは完全に別天地。相変わらずあまり人出はないようだ。

 


「生誕130年 松岡映丘展」姫路市美術館で5/29まで

 

 兵庫県の出身で柳田国男の弟である日本画家・松岡映丘の作品を集めた展覧会。

 最初は橋本雅邦の元で狩野派の技法を、後に住吉派の山名貫義に入門し大和絵の道に進んだとのこと。初期の作品は歴史がなどが中心で、保守的でやや硬質な印象の作品が多い。

 やがて時代が大正、昭和と進むにつれて彼の画風にも変化が現れる。より自由さと伸びやかさとが加わってくるのである。大正期などは時代の反映か、彼の画風にもいわゆるモダンさが現れてきており、特に初代水谷八重子を描いた作品などはその傾向が端的である。実に爽やかで気持ちの良いモダンな日本画になっている。

 晩年の映丘は官展を中心に活躍しながら、大和絵の改革に挑んでいたという。ただその道半ばに56才で亡くなったとのこと。これも惜しまれる死である。


 美術館の見学を終えると次は姫路城の見学にする。現在姫路城天守閣は平成の保存工事中で覆いをかぶっている。前回の昭和の大修理から年月が経ち、外壁などに傷みが目立つようになったことから3年がかりで漆喰の塗り直しや瓦の入れ替えなどをするとのこと。ただ姫路の観光のシンボルであるだけに工事期間中も外から天守を見学するための施設を建造している。それが「天空の白鷺」という施設。エレベータで登って、間近で工事中の天守閣を見学できる趣向である。

     

 とりあえず私は今日の午後1時からの回の予約を入れている。まだ若干早いがちょうど昼飯時で観光客が少ないのか問題なく入れるし、また予約なしの客も受け入れている模様。

左 一階ホール  中央 工事状況を見ながらエレベーターで8階へ  右 8階ホール

 エレベータは片面がガラス張りになっており、石垣から天守までを見学しつつ上まで登ることになる。登った先は8階で、ここでは姫路市内を見下ろしたり、天守の最上部を見学したりなどが出来る。確かにこうして間近に見ると傷みがあるのがよく分かる。

 屋根は既に端の方から瓦がはがされている模様。上層階は壁の下地からやり直し、下層階は壁の表面の漆喰を塗り直すらしい。

 

 天空の白鷺から降りてくると、今度は天守の内部の見学。といっても工事の関係で3階までしか上がれないとか。また通路などが工事で狭くなっているために入出が交互通行になっているらしくて表でしばし待たされる。

左 内部は薄暗い  中央 こちらが西大柱  右 これは東大柱

 天守内部は元々薄暗いものだが、今は覆いをかぶっているせいでさらに薄暗くなっている。相変わらず見事な二本の通し柱などを見学してから天守を出る。

 天守を出るとグルリと城内見学。確かに見れば見るほど良くできている城郭で、その縄張りなどは計算され尽くしている。例えば門を破られても正しいルートは死角にあり、敵は巧みに誤ったルートに誘導されるようになっている。

左 右の門から入った敵には左の門は死角  中央 狭い門内の上から攻撃できる  右 狭い通路は矢玉にさらされる

 本丸の方の見学を終えると西の丸に向かう。実は以前に姫路城を訪れた時にこちらは見学していなかった部分。西の丸の百間廊下が後悔されているので入場。西の丸にはかつて千姫が住んでいたとかで、化粧櫓と呼ばれていた櫓も残っている。内部には侍女とカルタで遊ぶ千姫の像が。

左 カの櫓  中央 このワの櫓から廊下が続く  右 渡り廊下内部

左 渡り廊下の一部はやけに新しい  中央 外の光景  右 化粧櫓には千姫が

 そう言えば千姫はあの江の娘なのだが、果たしてあのお馬鹿な日8ドラマではどういう扱いになるのだが・・・。秀頼との婚礼について、江が「戦略結婚など納得できません」とか言いそう。それとも千姫「あれが秀頼様・・・ポッ」秀忠「千を秀頼様に嫁がせるなど人質に出すようなものではないか!」江「いえ、私は千の気持ちを大切にしたいのです・・・。」なんて甘甘大馬鹿展開だろうか? なんにせよ、あの低レベルの脚本だとろくな話にはならないだろう(大阪夏の陣も30秒で終わるんだろうか?)。

 

菱の門を抜けた敵の正面には左のいの門が見えるが、天守への最短ルートは実は右側

 西の丸の見学を終えるとこれで姫路城周回は終了、退出することにする。さすがに世界遺産だけあって見所は満載。腐っても鯛ではないが、覆いをかぶっても姫路城だったというところ。

 

 これで本日の予定は終了。後は山陽百貨店で昼食を摂ると地下でバウムクーヘンを買い込んで帰途につくことにした・・・のだが、なんとJR神戸線が飛びこみテロ(一般的には人身事故というらしい)で大混乱。いつまで待っても列車の来ないホームは人で溢れてとんでもない事態になったのだった。それにしてもこれだけ大勢の人間に迷惑をかけた馬鹿は地獄行き確定である。

 

 閻魔「お前は死ぬまでにこれと言った悪事は成していない。だからお前には天国に行く資格がある・・・だが、最後に大勢にとんでもない迷惑をかけた。よって地獄行きを命じる!」

 なんてお裁きの光景が思わず目に浮かんでしまうところである。とにかく早計なことはしないことである。

 

 あなたが死んだら、あなたを愛した人は一生悲しむことになる。

 あなたが死んでも、あなたが恨んだ人は罪悪感を感じるどころか「馬鹿が勝手に死んでくれた」と喜んでいる。

 あなたが死ぬよりも、あなたが生きる方が、世の中にあなたの存在を認識させることが出来る。

 今は死ぬしかないように思えても、一年もすれば「なんでそんな馬鹿なことを考えたんだろう」と思えるようになる。

 

 

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