展覧会遠征 京都編2

 

 旅費節約のアイテムとして導入したスルッと関西3日切符であるが、いよいよその使用期限が近づいてきた。そこでこの週末はこの切符を使うための遠征が計画された。目的地は京都。現在京都で開催中の展覧会の鑑賞とオプショナルツアーである。

 まずは京都への移動は阪神と阪急を乗り継いでのものとなる。しかしさすがに目的地が京都となると遠い。大阪の時でさえやたらに無駄に時間がかかるのに、京都になるとその無駄時間が累乗でかかってくる印象である。モタモタしているうちに目的地の烏丸御池に到着したのは昼前になってしまっていた。

 こうなると美術館よりも昼食が最優先となる。どこか適当な店はと探したところ、「亀甲屋」なる店が目に留まった。どうやら日曜日には昼食のコースがあるようである。京料理という言葉に惹かれたので、ここで昼食をとることにする。

 昼食のコースは2通り。2000円の御所と1500円の平安である。内容は月ごとに変わる模様。なおこの両者はどうやら品数は同じであるが、メインの内容が異なるようである。私は御所の方を注文する。

 最初は小松菜と独活(ウド)と油揚げをあえたもの。私は小松菜はクセの強い菜だと思っていたのだが、そのような嫌みが感じられず、独活もサクサクと心地よい。

 次は生麩と豆腐の揚げ出汁。これがまた絶品。豆腐の風味がすばらしい上に、生麩の弾力が非常に心地よい。

 三品目は汲み湯葉と順菜。湯葉の豆の風味が素晴らしいが、初めて食べた順菜も独特の食感で面白い。

 四品目が長茄子・鴨ロース・小芋の冷やし鉢。これが淡泊にもかかわらず、一品一品が良い味を出している。

 メインは揚げ物。エビは玄米をまぶして揚げてあるのだが、これが天ぷらのような物足りなさはなく、かといってフライのように下品ではないという絶妙さ。また添えられていた白味噌の味噌汁がこれまた絶品。概して白味噌と言えば今一つ味に物足りなさを感じさせられることが多いのだが、この味噌汁の場合は出汁を効かせた味わいがあるので、非常に風味豊かである。

 

 デザートは抹茶かんの小倉かけ。もう何も言うことがない。これように添えられている京番茶がこれまた非常に香ばしい。

 久々に昼食を堪能してしまった。特に先週の東京遠征では例によって悲惨な食事に散々出くわしていたので、まさに命の洗濯である。やっぱり食事って重要だと再認識することしきり。また私は「優れた洋食は量以上の満腹感がある」とよく言っているが、それは日本の会席料理などでも同じである。やはり優れた料理はボリューム以上の満足感を与えることで、量は少な目でも空腹感を感じさせることはないのである。しかも今回の昼食に関して言えば、明らかにメニューは健康志向のものとなっている。こういう食生活をしていたら、私もメタボとは無縁の生活を送れたであろう。やはりメタボ解消の鍵は和食にありである。

 腹が膨れたところでようやく落ち着いたので、まずは最初の予定をこなすことにする。


「イタリア美術とナポレオン」京都文化博物館で5/24まで

 

 コルシカ島のフェッシュ美術館は、ナポレオンの叔父であったジョゼフ・フェッシュ枢機卿のコレクションを元にして設立された美術館である。彼はかなりのコレクターとして知られ、一時はルーヴルをも凌ぐコレクションを誇ったという。彼の死後、そのコレクションの大部分は散逸したが、それでもかなりのコレクションが美術館に収蔵されたという。本展はそのコレクションからの展示である。

 展示品の大半はルネサンスからバロックにかけての絵画類である。本展の目玉といえるボッティチェリの「聖母子と天使」以外は知名度的には劣る作品が多いが、いずれも当時を代表する作品であり、バロック絵画の発展を理解するのには格好の材料である。カルバッジョの影響を受けたと思われる作品をあげるまでもなく、バロック絵画におけるポイントは光の表現にあったということがよく分かる。ボッティチェリの「聖母子と天使」に至ってはまさにその表現が秀逸で、柔らかな光に被われた画面は実に心地よい。

 展示の終盤はナポレオン一族の肖像画などが中心となるが、ただこれについてはナポレオンマニア以外にはやや蛇足の感がなきにしもあらずである。

 


 美術館の見学を終えると早速次の目的地へと移動。地下鉄と京阪を乗り継いでの移動となる。

 


「妙心寺」京都国立博物館で5/10まで

 

 京都の妙心寺は臨済宗の大本山寺院である。その妙心寺に伝わる宝物などを展示した展覧会。

 展示の前半は妙心寺の開祖や代々の住持の肖像、またゆかりの文書の類であるが、やはり僧侶の顔や文書を見てもそれは私の興味の範疇外であり、退屈であるということを否定できない。

 面白くなるのは後半部の寺院ゆかりの宝物などの展示の方。特に障壁画のたぐいは狩野元信や長谷川等伯の力作などがありかなり楽しめる。

 


 それにしても暑い。まだ5月とは思えないような暑さである。そのためか非常に消耗が激しい。一息入れようと博物館近くの茶店「七條甘春堂」で休憩することにする。

 茶房というだけあって、抹茶などの本格メニューもあるようだが、今はとにかく暑くてたまらないので抹茶パフェ(840円)を注文する。純和風の店舗で和風の器に入ったパフェに違和感を感じないでもないが、味は本格的な上に意外とボリュームもあり、満足度は高い。小豆の味などはさすがに和菓子屋なのであろう。

 さて一息ついたところで、ここから先はオプショナルツアーである。やはり関西一円私鉄乗り放題のチケットを持っているからには、今まで乗ったことのない路線を乗っておこうというのは自然な考えである。そこでこのまま京阪で終点の出町柳まで行き、そこから叡山電鉄に乗車することにする。目的地は鞍馬寺。鞍馬と言えば義経に剣の稽古をつけた天狗が住んでいたと言われる秘境である。一度訪ねておいて損はなかろう。

 

 京阪で終点の出町柳まで移動すると、そこから地上へ。叡山電鉄の出町柳駅は目の前にある。叡電こと叡山電鉄はそもそもは京福電鉄の子会社であったのだが、現在は京阪の配下に入っている。この変遷は京福電鉄が辿った変遷と絡んでいる。京福電鉄も元々はその名の通り、京都と福井を接続するという壮大な構想の下に設立したのだが、紆余曲折を経て、現在は福井市内の路線はえちぜん鉄道が引き継ぎ、叡山電鉄は京阪の配下となり、現在残存しているのは嵐電と呼ばれる嵐山線・北野線のみとなってしまっている。また京福本体自体が現在は京阪の資本下である。

 

 出町柳駅を入ると、狭いホームに小振りな印象の二両編成車両が停車している。乗車率は60%程度で結構高い。路線は宝ヶ池辺りまでは京都の住宅地のイメージだが、そこで叡山本線と分かれると急に郊外のイメージとなり、市原を過ぎた単線区間は完全に山の中である。市原までは沿線住民の利用もかなり多い。途中で鞍馬からの対向車とすれ違う。鞍馬から帰ってくる展望車両デオ900系(愛称きらら)は満員の状況。もう既に4時前になっていることから、向こうから帰ってくる乗客の方が多いようである。

 すれ違った展望列車は帰り客で満員

 終点の鞍馬に到着すると乗客の入れ替えになるが、既に改札の前に行列ができているのに唖然。それを横目にみながら鞍馬寺に向かう。

 鞍馬駅に到着

 鞍馬寺の山門で入山料を払うと、参拝時間は4時半までなので、ケーブルで上がった方が良いと言われる。現在の時刻は4時前。なるほど、先ほど駅で行列を作っていたのは山から降りてきた参拝客だったのかと納得。とにかく時間がないようなのでまずはケーブルの駅まで急ぐ。

 鞍馬寺の山門

 日本のケーブルカーは、山上の寺院の参拝用に敷設される例が結構多いが、ここはまさにその一例。小型のケーブルカーが鞍馬寺自身によって運営されている。実質的な運賃は片道100円であるが、これは「運賃」という形を取らず、鞍馬寺維持のための協力金という形を取り、それに対する謝礼としてケーブルカーが使用できるというシステムになっている。やけに回りくどい表現にはなにやら大人の事情が垣間見えるような気がする。

 

ケーブルカーの外観と内部

 ケーブルカーは片道2、3分程度の短いもの。しかしこれを使わなかったら、徒歩で30分ぐらいはかかるという。山上の駅で下車すると、そこから本殿まで徒歩。しかしこれが歩いてみると意外に距離があり、本殿に到着した頃にはヘロヘロである。

 本殿にようやく到着

 本殿からは下界を見下ろすことができる。なおこの奥にさらに社殿があり、そこをさらに進んで山越えすると貴船神社に到達することもできるとのことだが、今日は時間がないし、体調も万全とはほど遠い(GWの関東遠征で足腰がヘロヘロである)のでそれはやめておく。

 本殿での参拝をすませると、再びケーブルカーで下山、京阪電車と阪神を乗り継いでの長い帰宅の途についたのであった。前回の奈良遠征に比べて、京都遠征ではひときわ遠さを実感せざるを得なかった。やはり京都方面で私鉄を利用するのは時間の無駄であると結論せざるを得なかったのが事実である。

 

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