展覧会遠征 新見編

 

 さて私はこの夏の四国遠征で高知の龍河洞を訪問して以来、洞窟に対して興味を持つようになってしまったようである。いずれは秋芳洞を訪問したいとは思っているのだが、とにかく前回の龍河洞が洞窟初体験で、諸々の経験不足が露呈してしまったところである。特に撮影機材関係の不備は著しく、これではまだまだ秋芳洞遠征はおぼつかないところがある。そこで今回は近場の洞窟でとりあえず洞窟経験値を上げたいと考えた。

 洞窟用装備としては、前回の龍河洞でカメラの内蔵ストロボでは使い物にならないこと、50ミリレンズではあまりに画角が狭すぎることなどの問題点が露呈している。そこでその後、まずは外付けストロボの新規購入を行った。サードパーティーの安物であるが、これは先に城内撮影などでも活躍している。さらにレンズだが、広角系の明るいレンズを探したのだが、予算に合うものはなし(やはり明るいレンズは高い)。広角系のズームレンズは軒並み明るさが不十分。と言うわけで予算その他を検討した結果、以前使用していた標準レンズ(18−55mm F3.5−5.6)を修理するという妥協案に至ることになった(結局、光学系のシステムがまるまる死んでいたらしく、修理と言っても中身が完全に新品に入れ替わったに等しいことになった)。これらの間に合わせ機材で果たしてどの程度通用するかは、カメラマニアではない私には想像つかない。そこで実地テストを行おうと思ったわけである。

 選定した洞窟は岡山北部の満奇洞と井倉洞。共に比較的有名な鍾乳洞である・・・とは言うものの、私の遠征はそもそもは展覧会訪問である。洞窟がメインになるという本末転倒なことはあってはならない。と言うわけでこの地域の美術館である新見美術館の久々の訪問をメインに据えての計画となる。また交通手段としては久々に車を使用した。これは訪問先が山奥になるので公共交通機関が全くあてにできないのがまず一つ。さらにアメリカ発金融大崩壊で守銭奴ファンド共がダメージを負って、ガソリン価格がようやくまともな価格になってきたことが二つ目である。

 まずは中国自動車道をETC通勤割引をフルに使いながら北房まで突っ走る。高速走行は久しぶりなので、どうも速度感覚がまだ戻っていないし、車の方の調子も本調子でないのが感じられるので、無理をせずに抑え目の走行を行う。北房で高速を降りると山道走行になる。道は所々かなり狭いところがあったりするが、そんなに悪い道でもない。たださすがに急な登りは1300CCのカローラ2ではかなり苦しく、アクセルを床まで踏んでも加速しない。またかなり急カーブも多く、久しぶりの山道走行の私にはかなり手荒なリハビリになってしまった。

 ようやく到着した満奇洞は山の中の洞窟。洞窟前の駐車場で車を停めると、装備を調えて洞窟に挑戦である。当然のように口ずさむのは「行け行け川口浩」である。

 

 満奇洞は内部のルートはあまり長くはないのだが、龍河洞に比べると洞窟内が広々としていて変化に富んでいる。一番奥の部分には地底湖があり、そこに橋が架けられていたりなど適度に人間の手が加わっているという印象である。

 

 

 

 満奇洞の見学を終えると次は井倉洞を訪問することにする。井倉洞はさらに山道を車で進んだところにある。なお井倉洞だけなら、一応近くに伯備線の井倉駅があるので、列車で訪問できないわけでもない。ただ明らかに車の方がアクセスは良い。

 山道を降りてくると井倉洞の案内看板を見かけるようになる。さて井倉洞を車で訪問する際に気を付けないといけないのが、井倉洞トラップとも言われる駐車場の罠である。井倉洞に向かって、岡山方面から国道を北上してくると、井倉洞駐車場と書かれた大きな看板やゲートなどが目に入るが、ここで右折してはいけないのである。ここで右折すると民間経営の有料駐車場に誘導され、結構な料金が取られるという仕掛け。正解はここを通り過ぎてさらに北上したところにあるゲートを入ること。するとそこには町営の無料駐車場がある。ちなみに民間駐車場は井倉洞の最寄りの駐車場なので、井倉洞までとにかく歩きたくなくてお金には余裕があるという人ならこちらを利用しても良いかもしれないが、無料駐車場からでも5分もかからない。当然ながら私は無料駐車場の方に車を入れる。

 無料駐車場の近くにはなぜかSLが置いてあったりするが、そこを通過すると川沿いに出る。ここの風景は圧巻。対岸に断崖絶壁の岩肌が連なっており、井倉洞の近くには滝もある。入洞料を払うと橋で対岸に渡り、そこから入洞である。

 

 

 井倉洞は龍河洞と似たタイプの洞窟。非常に狭い通路が延々と続いていくパターンである。また内部はかなり観光整備されており、途中でへたばった人向けの脱出通路まで掘ってある。なお龍河洞もかなり階段の上り下りが多かったが、ここはさらに登りが急である。内部では延々と階段を上り続けることになり、だんだん息が上がってき、洞窟内は涼しいにもかかわらず身体が汗ばんでくる。奇岩の連続は、頂上の音の滝でクライマックスになり、後は直線的なコースを延々と降りてくるだけになる(多分出口ルートとして人工的に掘ったのだと思う)。ここをかなり延々と降りたにもかかわらず、最終的な出口は入り口よりもかなり高い位置にあるということから、内部を相当登らされていたということが分かる次第。道理でやけにきつかったはずである。もっとも私の方も「一周するのに40分かかる」と言われて入洞したのに、20分ほどで出てきているのだから、歩くペースが速すぎたのもあるのだろうが。

  

  

 

 満奇洞と井倉洞は比較的近い位置にあるが、その性格はかなり異なっている。井倉洞はまさに洞窟というイメージ通りのルートだが、満奇洞の方は内部空間がかなり広いので洞窟をもぐっているという印象とは異なる。観光地として見所の多い方は満奇洞の方だろう。井倉洞の場合、いかにも狭いところにもぐるというイメージなので、閉所恐怖症の人にはより過酷なタイプの洞窟である。途中でエスケープ通路があるのは、上り階段で体調を崩した一用だけでなく、閉所恐怖症発作を起こした人のためでもあるような気がする。実際、前世がハムスターであった私でも、さすがにこの洞窟は圧迫感が強く感じられ、出口に到着した途端にホッとしたのが本音。

 洞窟巡りを終えたところで今回の本題の方に入る。車で新見まで移動、目的地は過去に通い慣れたる美術館。


「近代美人画の巨匠 伊東深水展」新見美術館で11/24まで

 

 言わずとしれた美人画の巨匠の展覧会である。初期作品から晩年の作品まで本画21点が展示されているが、さらに大量の下絵が展示されているのが本展の特徴。本画と下絵が並べて展示されているところもあり、彼の思考の後を下絵で辿ることができる。

 さて時代を追って見てみると、彼の変遷を理解することができる。最初は鏑木清方に師事したとのことで、初期の作品は清方の影響が濃厚に現れた端正なものである。しかしその後、ピカソの作品の影響なども受けた作品なども登場し、ややシャープな輪郭の硬質な画風に転じ、さらにこの頃からモデルも古典的な日本女性ではなく、いわゆるモダンガール的な女性が増えてきて現代調になってくる。ただその後、再び初期の調子に戻りかけたような作品も登場し、結果としては彼独自の世界に到達している

 正直なところ、伊東深水の作品は私のあまり好みのタイプではなく、どちらかというと彼の師であった鏑木清方の清楚で品のある作品の方が私は好きなのだが、それでもこの展覧会はなかなかに楽しめた。本展は新見市政3周年記念特別展とのことで全館を上げてのかなり気合いの入った企画であり(同館は決して大きな美術館ではないが)、それだけの内容はあったようである。


 さてもうお昼である。新見にやって来たところで私には実は食べたいと思っていたメニューがある。そこで新見駅前の「味の庄伯備」に向かう。注文したのは少し贅沢に「ぼたん鍋」の上(3500円)である。実はこのぼたん鍋には因縁がある。去年にぼたん鍋を食べようと思ってわざわざ新見までやって来たのに、その時にはなぜかこの店が閉まっていて食べられなかったということがあったのである(結局この時は、急遽日生まで移動してカキオコを食べることになった)。1年ぶりの宿題解決というわけである。

 しばらく待った後にコンロと鍋が運ばれてきて、さらにしばらく後に材料一式が到着する。ここのぼたん鍋はタレの代わりに薬味入りの玉子をつけて食べる模様。まずは野菜から煮込み、野菜が煮えた頃にイノシシを入れる。

 

 脂分が比較的少ないイノシシの肉は思ったよりもあっさりしている。また味噌の鍋と言うことで、どうしても先週の名古屋での味噌煮込みうどんのような味をイメージしていたのだが、ここのぼたん鍋は味噌がそれほど強くなく、イノシシの臭み消し程度にしか主張をしていない。さらに玉子を付けて食べるせいか、味噌の鍋と言うよりもすき焼きに近いような印象になる。なおここのぼたん鍋には並・上・特上と3ランクがあるのだが、多分それによって肉の品質が変わるのだろうと推測される。一般にイノシシ肉は脂が多いところが好まれる(それだけ脂が少ないと言うことで、実際に赤身はかなり固い)。

 

 野菜をいくらか片づけて肉を食べ終わったところで、店員の勧めに従ってうどん玉を追加注文する。これが店員の推薦の言葉に違わず実に美味。まさしく日本人に生まれて良かったと思う瞬間である。またこの時に気づいたのは、野菜類はクタクタになるまで煮込んでから食べた方が美味しいということ。どうも私は序盤に慌てて食べ過ぎていたと反省する。最初はやや淡泊に過ぎる味付けかと思っていたのだが、十二分に煮込むとこれでちょうど良い味付けになるのである。後になるほど美味しくなってくるという鍋であった。

 さて腹も一杯になったところで、後は美術館につきものの温泉へ繰り出すこととする。ここのところは鉄道中心の遠征が多かったせいでなかなか温泉に行っていなかったのだが、今回は車なのでその自由度がある。これは車での遠征の醍醐味である。まずは新見入り口から中国自動車道に乗る。往路ではかなり違和感のあった私の運転だが、先ほどの山道走行でリハビリができたのか、今度は運転がしっくりと来る。高速を快調に走行してほどなく院庄出口に到着する。なお現在は石油価格高騰への応急対応措置として、大都市近郊エリア以外で休日昼間割引が導入されており、1日2回まで100キロ以内の走行で料金が5割引になる。明らかに選挙を意識した政府の人気取り政策なのだが、今回はそれに便乗したわけである。

 院庄で降りると後は国道179号線を北上する。例によってこのような対面二車線の道路につきものの道交法原理主義者の渋滞テロリストに何度が出くわしたが、私の前の車がそのたびにぶち切れて追い越しをかけるので、私もそれに便乗してついていったところ、順調に目的地へと到着した。

 私が今回の目的地にしたのは奥津温泉である。その中で日帰り施設である「花美人の里」を訪問する。

 施設はレストランなども入った大型施設になっており(一部はテナント募集中)、駐車場にはかなりの車が停車していた。巨大な建物は木をふんだんに使った落ち着いた作り。浴場は1階と2階にあり、男湯は1階だった。風呂は内風呂が泡風呂と低温風呂になっており、低温風呂が「美人の湯」と称している。またサウナと露天風呂もある。湯は肌当たりも比較的柔らかく入浴しやすい湯で、また湯の花なんかも浮いているんだが、無色無味無臭(若干塩素臭がする)で印象は非常に弱く、いわゆるいかにもの温泉とは違ってさら湯に近いような感覚がある。施設は綺麗で良いのだが、いわゆる温泉マニアにとっては少々物足りないかも。

 洞窟探検と鍋で流した汗を温泉でさっぱりと洗い流すと、風呂上がりのコーヒー牛乳を一本(当然であるが瓶入りである)。土産物を買い求めることにする。土産物売り場をウロウロしていると「妖精の森ガラス美術館」なる施設のポスターが目に入る。場所を確認するとここからさらに少しだけ北上したところの模様。時計を見るとまだ間に合いそうである。ここで急遽次の予定に追加する。こういう急な予定変更に対応できるのも自動車での遠征のメリットである。

 国道179号線を再び北上。間もなく到着する。


妖精の森ガラス美術館

 天然鉱物であるウランは、昔から特にヨーロッパではガラスの着色料として利用されてきた。ウランを含んだガラスはウランガラスと言われ、紫外線を当てると緑っぽく光るために、紫外線を含む太陽光線下では独特の光沢を発することになる。このウランガラスを使用した作品を展示している。またガレの作品もある。展示場では紫外線を当てて実際に光る様を見られるようになっている。なおウランガラスは結構汎用で使われたとのことなので、展示品の中にかき氷の器なんてものまである。

 二階の方では企画展として藤田喬平ガラスアート展が開催中。彼の作品は色鮮やかな金箔などを使用した作品が多く、陶芸の富本憲吉の作品などを連想するところがある。目に鮮やかで見ていて楽しい。


 この施設は隣にガラス工房が隣接していて、その様子を観察することができる。また館内ではこの工房で製作した作品の販売も行われている。いわゆるガラス系の美術館ではよくあるパターンである(鳴門の「ガレの森美術館」もこのタイプだった)。それにしてもウランガラスというのは、さすがに人形峠最寄りの地である(ここから少し北上するとすぐに人形峠)。なおウランと言っても自然放射線よりも低いレベルの放射線しか出していないので安全性は問題ないとのこと。

 この国道179号線をさらに北上すると、有名な温泉地である三朝温泉を過ぎてさらに倉吉までたどり着くことができるが、さすがに今日はそこまで行く時間はないので帰路につくことにする。ただここに来る時に上斎原温泉という表示を見かけ、それが非常に気になったので調査しておくことにする。するとどうやら国民宿舎と「クアガーデンこのか」なる日帰り入浴施設が存在する模様。そこでついでにこの日帰り温泉施設に立ち寄ることにする。

 施設は内風呂に露天風呂というシンプルな構成。泉質はアルカリ単純泉ということで、若干のヌルヌル感があるがそう強くはない。また残念ながら若干の塩素臭あり。ただ湯の質としてはさきほどの花美人の湯よりもこちらの方が良い。露天風呂がそう大きくないにも関わらすゆったり落ち着いた雰囲気があり、客があまりいないこともあってくつろげる。あちらの入浴料が900円でこちらが600円であるから、こちらの方が値打ちがあるように私には感じられた。

 温泉をはしごした後は、今度は瓶入り森永マミーを一気飲みし、今度こそ家路につくことにする。なお帰宅には通勤割引を最大限活用したことは言うまでもない。

 

 戻る